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47・予想外の優秀さ④(ラセア視点)
しおりを挟むなにせ、フィーヴィが告げたのは、
「これまで、ラセア殿下に、僕以外の、その、お話がある、だとかそういうのを、考えたこともなかったので……それを知って、少しショックには思いました」
というもので、参加予定者の一覧を見た時に、私自身、気にせざるを得なかったことだった。
フィーヴィと私の間には歳の差がある。
勿論、たった五つだけ。決して大きなものではないのだが、それでも、フィーヴィとの婚約が調う前に、私にフィーヴィ以外の候補が出来るには充分な年の差で、フィーヴィが気にかけたのが、そんな中の一人なのは確かなことだった。
ティミーリス大公爵領にほど近い場所に領地を持つ、侯爵家のご令嬢。
年齢も私と一つしか変わらない彼女は、私がフィーヴィとの婚姻を望まなければ、おそらく、私の婚約者になっていただろう存在だった。
とは言え、そういった話が持ち上がったことがあるというだけで、婚約が成ったわけではない。
当然、彼女に対して私が思うことなど何もなく、かける心もなく、もし、フィーヴィに出会えていなかったとしても、彼女に、同じように惹かれることなどなかっただろうことだけは断言できた。
だが、それでも、一度そういう話が出た事実は変わらない。
だからこそ私は気になったのだし、それはフィーヴィも同じであったということなのだろう。
彼女が気になる。
それはおそらく間違いなく嫉妬と言える感情だろう。
フィーヴィが彼女に嫉妬した。
彼女の存在そのものが気になって、面白くないと思った。
そんなことをフィーヴィから聞いて、私は正直、喜びを感じていた。
何故なら彼女の存在が気になってしまうぐらいに、フィーヴィが私へと好意を寄せてくれていると私には思えたからだ。
だけど同時に、フィーヴィに憂いを与えてしまった事実が心苦しい。
過去はどうにもならないし、そもそも隠すようなことでもない。
彼女とのことは特に、私に何かが出来るようなことではなかった。
なにせ当時は私も子供だ。
自分の感情のままにフィーヴィを望んではいたが、それ以外に出来ることなどなく、それは彼女も同じであったことだろう。
フィーヴィにそれを伝えたのは彼女だとも聞いているが、そもそも隠すようなことでもなく、むしろ後ろ暗いことがないのなら、隠さない方がよく、彼女はどうやら私を慕ってくれていたとのことでもあるのだが、だからと言って彼女からフィーヴィに対して、悪意のようなものもなかったようだとも聞いていた。
それら全てをきっとフィーヴィもわかっていて、だからこそフィーヴィは戸惑っているのだろうとも思った。
私にもフィーヴィにも、それぞれに立場があり、歳の差がある。
こういったことは他にも出てくることだろう。
それこそ、私の相手にと言われていただけの存在だって、彼女一人だけというわけでもないのだから、どうにもならない話で。
それら全部を踏まえて、だからこそ彼は思い悩んでしまっているということなのだろう。
私に、そんな心の内を明かしてくれたのが嬉しい。
なのに私は彼に、結局どう言葉をかければいいのかわからなかったのだ。
慰めるのは、違うと思った。言い訳をするのも、やはり。
ならいったい彼に何を言えばいいのだろう。
どう、私の心を捧げれば。
わからない。
わからない自分が、情けなくて仕方がなかった。
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