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第二章・ペーリュ視点

2-52・目覚めに向けて②

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 王宮に数多くある応接室の一つに、リーファを抱えたまま足を踏み入れると、そこにいたのはあの日見た魔術師塔に所属している者たちと、私の実弟であり、ある意味では当事者の一人とも言えるラーヴィだった。

「兄上! リーファは……」

 私達の姿を見た途端、言いながら、ガタンと席を立って、こちらへと歩み寄ってくる。

「この通り。よく眠っている」

 心配そうに私の腕の中のリーファをのぞき込んで、しかしただ健やかに眠っているだけの様子にほっと息を吐いた。
 私もラーヴィの視線を厭うことはせず、素直にリーファの様子を見せる。
 ラーヴィはリーファに触れようとはしなかった。
 気になるだろう。きっと、さっきの曽祖父のように触れたいだろう。だけどそうしないのは、ラーヴィがしっかりと自分を弁えているからなのだと思う。
 今回の件で、きっとラーヴィは痛感したのだ。
 自らの想いが決してリーファに届くことはないのだと。
 ラーヴィはリーファを苦しめたいわけではないのだから。それは勿論、私も同じだ。
 リーファには常に、心安らかにいて欲しい。幸福に微笑んでいて欲しい。
 出来れば、それは私の側で。
 私が願うのはそれだけなのだから。ラーヴィは私の実弟で、だからこそきっと同じ気持ちであることがわかる。
 実際にリーファを見つめるラーヴィの瞳は、リーファへの思慕を宿して切なげに揺れていた。

「本当に、よく、眠っていますね……苦しそうでもない。よかった」

 私は頷いて、曽祖父が示すまま、平身低頭な様子の魔術師塔の者たちの向かい側の席へと、リーファを抱えたまま腰掛ける。
 ラーヴィは私の隣に。
 曽祖父は座らず、私たち全員の様子を見守ることにしたらしかった。
 魔術師塔の者たちが、私たちがそれぞれ落ち着いた様子を確認して、おもむろに懐から一つの魔道具を取り出し、そっとテーブルの上に置いた。

「これが……」

 口を開いた私に、代表らしき一人が静かに応える。

「はい。特定の存在の認識を入れ替える効果のある魔道具です。対象者・・・が魔力を流せば作動します」

 その言葉に、私はぴくりと片眉を上げた。

対象者・・・が?」

 自身でも驚くほど低い声が出た。だが、対峙した魔術師塔の者は臆さず、慎重に首肯する。

「ええ。対象者である、リーファ陛下御本人が、です。そのように調整するのが、一番早く確実だと判断しました。今は出来るだけ早くリーファ陛下にお戻りになって頂かなければと」

 それはつまりリーファを、もう一度、混乱したままの状態で起こし、自分自身で向き合ってもらわなければならないということに他ならなかった。
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