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第二章・ペーリュ視点

2-14・視察

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 視察先で起こったことを、私は決して忘れないだろう。
 わけのわからない妄言を吐いてリーファを貶めた公女は元より、連れ去りさえした宰相位に就いていた男。
 腸が煮えくり返るかと思った。
 何よりも尊い私のリーファを害そうとするだなんて。
 なんてことだろう。
 私のこの怒りはどう納めればいい。
 公女と宰相と。特に許すまじきは宰相の方だ。
 視察で発覚した書類の改竄も、その宰相が犯人だったというのだから救えない。
 何よりもリーファを害された。それはすなわち、ナウラティスそのものにまで、牙を向いたということだ。
 向けられた牙は収めさせなければならない。国を侮られてそのままになどしては置けない。
 ならばどのように処理をすればいいのか。一瞬、考えた私はしかし結局、全てはリーファの望む通りとすることにした。
 リーファは情け深い。
 リーファを連れ去った、実行犯とも言える被害者をどうにかして助けようとまでしていた。
 そう、リーファの連れ去りは、脅されて正常な思考が出来なくなっていたものが成功させていたのだ。
 おそらく、他の者だと難しかっただろう。
 結界に弾かれない者だから信用する。
 そう判断したリーファの考えも、何らおかしなものではない。
 特に目の前で、実行犯が害される様子を見せられたリーファが、害されていた者に対して非常に同情的になるのも、あるいはそれは必然とさえ言えたことだろう。
 なにせリーファは連れ去られた先から、件の者と共に転移魔法によって私のところに戻ってきたのである。
 放ってはおけなかった。
 リーファらしい清廉さだ。
 その時、私と共にいた例の公女に対してでさえ、同情的な様子を見せたのである。
 宰相への対処も含めて。私が厳しい判断を下せなかったのも仕方のない話だったことだろう。
 リーファの口にはしない望みを組むことは、私には造作もないことだった。
 おそらく、リーファは彼らに厳しい罰を与えることなどよしとしない。
 しかし、リーファは王族であり、王族を害されて流石に何もなしというわけにはいかず、さりとて明確な罰も与えられず、私は瞬時に判断して、視察先での代表とも言える大公に、対処を任せることにした。
 大公そのものには特に瑕疵がなく、実直な人物であることがわかっていたからだった。
 くわえて短時間ではあれどリーファと接していて、リーファの為人もある程度察することが出来ているだろうと判断してのこと。
 後日届いた報告はきっちりとこちらの意図を汲んだものだったのでどうも間違うことはなかったようだと、どこか、安堵の息を吐いたのだった。
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