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幕間

x2-4・兄の葛藤④

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 アーディの子供は、なんと言えばいいのか、アーディが悪いのか何なのか、次の皇帝となることを、早々に明確に嫌がった。
 アーディが伴侶にと望んだのは異世界から転移してきた、魔力をほとんど持たない男で、今もアーディが望むままに隣に居続けてくれている。
 もっとも、彼は彼で自由気ままに冒険の旅を続けているだけなのだが。別に構わなかった。彼がどこか一所ひとところに定住しないというのなら、アーディはついていくだけなのだから。
 ただ、アーディは彼の隣にあれればそれでよかった。
 ならばいっそ子供など望まない方がよかったのかもしれない。だけど。
 アーディの生んだ子供は、ヴィーフェで3人目。上の二人とヴィーフェは何十歳と年が離れている。一人目の息子とで94歳、二人目の娘とで88歳の年の差だ。
 偏に、アーディの伴侶に魔力がほとんどないが故に。
 おかげで上二人に関しては、育てる為に、伴侶の足りなさすぎる魔力ではどうにもならず、母の魔力を足してもらわねばならない有様だった。
 だからこそアーディは二人を、王宮ではなく可能な限り自らの手だけで育てたのだけれども。
 当時からアーディは皇帝業の傍ら、伴侶の旅にも同行していた。当然、子供たちもそれに伴わせた。それが良くなかったのかもしれない。子供たちは二人とも、縛られることを嫌い、冒険者となってしまったのである。
 当然、長男が選んだ伴侶も同じような冒険者で、皇帝位など継いでくれるはずもなく、必然的にアーディは引き続き後継が出来るまで皇帝を続けることになった。
 早く譲り渡したかったのに。
 その上、長男の所に生まれた子供は、今度は極端な引きこもりだったのだ。
 旅だとかの方をこそ嫌い、一所に落ち着いてくれていたのはいいのだけれど、むしろ部屋からさえ出ないような有り様で。
 当然、そんな人間に王族としての仕事など任せられるはずもなく。
 幸いだったのはそんな孫を見染めたのが、貴族らしい少女だったことだろうか。
 ちなみにその少女はアーディの義兄の娘、つまり姪だ。ただし、元々義兄とすらほとんど血は繋がっていないに等しかったので、そういった意味では血族とは言えなかったのだが、それでも立場としては姪である。
 大変に情熱的な姪で、孫の所へと押しかけてそのまま居座って孫を落とした。
 そんな孫と姪の間に生まれたのがペーリュである。
 ペーリュは王宮で育った。
 なにせ片親が部屋からさえ出ないような引きこもりだ。他でなど育ちようがない。
 もう片方の親が、貴族らしい貴族女性であったこともあり、やがて皇帝位を継ぐことさえ、幼い頃からすんなりと受け入れてくれていた。
 実際にペーリュは優秀で、優秀過ぎるほどで。いつも穏やかで冷静。激昂することもなければ、子供らしい無邪気さを表すこともない。むしろ感情を揺らしている所を見たことがないほどだった。
 何故か非常に父に似た、つまりアーディにも似ているのだけれど、美しいと形容していい容姿も相俟って、まるで人形のよう。
 多分ペーリュのことは、母も憂慮していたはずだ。
 唯一、明確な感情の動きがわかるのは母を前にした時だけ。それだって、それほど大げさなものなどではなく。
 そんなペーリュがリーファを一目見た途端、初めて自分の意思を明確に口に出したのである。
 すなわち、その赤ん坊を自らの伴侶とすると。
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