上 下
188 / 242

*185・俺と試練の夜⑤(リシェ視点)

しおりを挟む

 れたい。
 それはいっそ衝動だった。
 だって俺は知っているのだ。そうするとどれだけ気持ちいいかっていうことを。
 ふるふると震えるサフィルはきっと一生懸命なのだろう。
 羞恥からか緊張ゆえか、全身を真っ赤に染めて、必死に、おそらくは不快感に堪えている。
 痛みは、多分ないとは思うけれども、こんな場所、俺自身が誰かに、今俺がしているように触れられたことなどないからわからない。
 時折びくっと震えながら、いつしか俺の手指から目を逸らせないでいるサフィルの目尻にはもはやすっかり涙が溜まっていて、それはいつ流れ落ちてもおかしくないような状況で。
 こんなサフィルの様子は、いっそ憐れを誘うほど幼気いたいけだとも思うのに、俺はただ興奮するばかりだった。
 勃ちあがりきった股間が痛い。
 まるで全身の熱が其処に集中しているのかのようだ。
 れたい。
 早く、早く、この熱を開放してしまいたい。
 今、俺の指が触れているこの狭くぬかるんだ場所に、股間の熱を突っ込んで、腰を振って、そうしたらどれほど気持ちいいことだろう!
 俺はもうそれを知っている、あの夜の快感を。
 でも。同時に我に返った時に見た、血に染まったサフィルのことも思い出されて、幸か不幸か、それが俺の衝動を抑えてでもいるかのようだった。
 怖いのだ。
 だからこそ俺はこうして、サフィルの腹の中を、指で触り続けている。
 すでに俺の指は三本、サフィルの窄まりへと沈めていた。
 香油を使用したのが功を奏したのだろう、その場所は初めとは比べ物にならないぐらいに柔らかく、ぬるぬるしていて。だけどぎゅっと痛いぐらい、俺の指を締め付けてくることだけは変わらない。
 この見るからに狭い中を、俺の腰のものでかき回す。
 想像するだけで気が急いた。
 息が上がって、妄想することしか、考えられなくなっていく。
 ぐちゅ、ぐちゅ、香油を足しながら、サフィルの可憐な窄まりをかき回す。
 俺にもある器官と同じだとは全く思えない、愛しいばかりに美しいサフィルの股間。
 サフィルの両手はずっと、サフィル自身を抑えたまま、時折ぎゅっと握り込んでいるように見えるのは、サフィルも興奮しているからなのだろうか。
 そうならいいとぼんやり思う。
 指を押して、引いて、何度も何度も繰り返す。時折ぐりゅんと指を回したり、少しだけ曲げたりして見ると、その度ビクン、ビクンとサフィルは震えた。

「ん、ん、んんっ……!」

 鼻にかかったような微かな声がサフィルから漏れている。
 サフィルが今感じているのは快感ではないのだろう、かと言って、嫌悪や恐怖でなければいい。
 くらくらと、れたい、ともすればそんな衝動だけで埋め尽くされそうな思考の片隅で、それでも何とかそんなことだけを願っていた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

悪役令息はもう待たない

月岡夜宵
BL
突然の婚約破棄を言い渡されたエル。そこから彼の扱いは変化し――? ※かつて別名で公開していた作品になります。旧題「婚約破棄から始まるラブストーリー」

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

王太子が護衛に組み敷かれるのは日常

ミクリ21 (新)
BL
王太子が護衛に抱かれる話。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...