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*176・俺と試練の夜①(リシェ視点)
しおりを挟むなんだこれは。
俺はわけがわからなかった。いったい俺は夢でも見ているのだろうか。
恥ずかしそうに体を強張らせて、真っ赤に染まった顔で、だけど何かを必死に言い募るサフィルを、俺はどうすればいいのだろう。
触るか、だって?
そんなもの、そんなもの……触るに決まっている!
「サ、サフィルっ……!」
「は、はいっ……!」
勢い良く名前を呼んで、だけどそこで一度躊躇した。
だが、次いでふら、と彷徨った指を、サフィルは咎めない。
「さ、ささささ、さ、さわ、って、も……?」
「ぁっ、ぅ……は、はぃぃ……っ」
サフィルが一瞬目を見開いて、だがすぐに恥ずかしそうに目を伏せる。
ああ、なんて幼気な!
気持ちが逸った。
股間はもう、昂り切って張り詰めて痛いほど。身に着けたままのボトムスを、下着ごと押し上げている。
早く解放してくれと告げてでもいるかのような股間に急かされるよう、自然、体が前のめりになった。
「サ、サフィルっ……!」
食らい尽くしてしまいたい。
凶暴な衝動が体を渦巻く。
初めて会った日の夜に。たった一度だけ味わった快感を思い出してしまった。
あの気持ちよさを、今夜再び。
「あっ……!」
伸ばした手が、ぐいとサフィルの足を掴んで、そのままぼすん、サフィルのことを押し倒してしまった。
続けて指を、サフィルの慎ましやかな窄まりに突き入れる。
「うっ……リシェ、さまっ……」
すると途端サフィルの体がびきっと固まって、一瞬で俺から血の気が引いていった。
あ……俺は、何を……。
今の動作はきっと乱暴だった。
これでは初日と一緒だ。
「す、すまないっ……!」
「待ってっ!」
ずる、指を引き抜いて話そうとした腕は、しかしパシッ、掴んできたサフィルの手によって妨げられる。
「サフィル……?」
呆然とサフィルの名を呼んだ。サフィルはこちらを見ていない。
羞恥ゆえだろう、真っ赤に染まった顔で、強張った体で、だが、離そうとした俺の動きを、遮ったのはサフィルの方で。
「ま、待ってください、あの……いいの、です、そのまま……ただ、優しく………触れて、頂ければ……」
消え入りそうな微かな声が、だのにぐわんと俺の脳を揺さぶり、俺はわけのわからない感動に体を揺らすことしかできなかった。
ああ、なんてことだ。
なんてことだろう。
こんなことが実際に起こってもいいのか。やっぱり俺は夢を見ているんじゃないだろうか。
「あ、ああ、す、すまない、優しく、だな、優しく……」
俺はサフィルからの誘いに逆らわず、上擦った声で同意して、そろり、震え切った指をサフィルの窄まりへと伸ばし直した。
先程のように、いきなり突き入れたりはしない。
さっきの今で、同じ過ちなど犯せるものか。
ばくばくと、自分の鼓動しか聞こえないのではないかというぐらい、心臓の音が煩かった。
股間が痛い。
俺は今、サフィルに触れている。
「ぅっ……」
小さくサフィルから漏れた声は羞恥ゆえか、それとも。
わからない、わからないけれども、サフィルの体は強張ったまま、当然窄まりは固く閉ざされたままだった。
だけど同時に、ほんの僅か赤みが増しているように見えるのは先ほど俺が強引に指を突き入れてしまったからだろうか。
痛ましい、そう思った。
そう思って、だから俺は。
「サフィル……」
努めて優しく声をかけ、そして。自然と、体を屈めて、指で触れているそこに、顔を近づけていたのだった。
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