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14・お話

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 って、違う!
 だから、違うってばぁ、私!
 陛下の良すぎる顔に見惚れて、いつも通り・・・・・流されてしまった。
 先程あれほど決意したのに。これではダメだと思ったばかりだったのに。
 それもこれも皆、陛下がかっこよすぎてかつ私に甘すぎるせいだ!
 否、私が陛下のことを好きすぎるからだろうか?
 我に返ると、今のこの体勢こそ、本当に居た堪れないものでしかなかった。
 陛下の体温は気持ちいいし、抱きしめられているのも嬉しい。だけど。
 今は真昼間で、執務室には他にも侍従や文官が幾人かおり、アリムエ執政官も、私達を呆れた顔で見て、溜め息を吐いていた。
 ああ、だからこれ! この状況! これがよくないと!
 情けなさと居た堪れなさで、涙が滲む。
 こんなことで泣くなんて。
 私は何処まで情けない人間なのか。もうじき王妃になる人間の様子だとは到底思えない。

「……? フィア? どうかしたの?」

 流石にいつもと様子が違っているだろう私に陛下はすぐに気付いて、少しだけ体を離して、身を屈め、私の顔をのぞき込んできた。
 触れそうなほど至近距離に迫る陛下の麗しい顔に、私はまた、ドキドキしてしまう。
 本当にほんの少しだけなのに、先程よりも離れた体温が寂しい。
 でも、しっかりしなくては、こんなのやっぱりいいと思えない、せめて時と場合を選んでくれてと、当たり前のことぐらいは陛下に言いたい。
 否、違う、伝えたいのはそんなことではなくて。
 ぎゅっと、陛下の服を縋るように握りしめてしまう。
 すぐに気付いたのだろう陛下の視線が、私の指先にちらと落ちて、だけどすぐに私の顔へと戻ってくる。
 交わる視線から伝わってきた。陛下がどれだけ私を心配してくれているのが。
 私はきゅっと唇を引き結んで、出来るだけ気持ちを落ち着けた。
 だって陛下からの愛情に溺れるばかりだと、何も変わらないままなのが明らかだからだ。
 今だってきっとこのまま、いつも通りの私なら、程なくして肌に触れられていただろう。流石にその前に人払いぐらいはしてくれるとは思うけれど。……――主にアリムエ様が。
 アリムエ様に人払いされている状況というのも、本当に重ね重ね居た堪れないばかりなのである。
 陛下はきっと気にもなさってらっしゃらないけれど。

「あの……陛下、お話が、あります」

 真っ赤な顔で途切れがちに、ようやくそれだけを口に乗せる。
 陛下は一度、目を見開いて驚いて、ぱちぱちと数度瞬きしてから、ふわと柔らかな笑みを浮かべて頷いて下さった。

「うん、わかったよ。じゃあ、とりあえずそこに掛けようか」

 そう言って陛下は私を離しきらず、エスコートする以上の密着具合で支えながら数歩移動し、ソファに先に腰掛け、膝の上に私を乗せた。
 いや、だから、何故、膝の上?!
 距離が近さが変わらない。結局陛下が私のことを、片時も離すつもりがないのだろうことがよくわかる行動だとしか、言えないような有り様だった。
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