9 / 61
本編
6.学園生活のはじまり②
しおりを挟む
「ったく…」
大きなため息をつきながら中庭に目をやって、そんな自分に後悔した
そこには姉を腕にぶら下げるヨハンがいた
幸せそうに笑う姉を哀れに思う
だからと言って全てを教えてあげようという気にもならないけど
「やっぱり2人はお似合いよね」
いつの間にか背後に3人の女生徒がいた
リボンの色を見れば姉と同じ色だった
つまり、姉の取り巻きというあたりかしら?
「あなた、シャロンの妹でしょう?」
「それが何か?」
「あのお似合いの2人を見て心が痛まないのかしら?」
「おっしゃっている意味が分かりませんが」
あえてそう返してみる
「…本気で言ってるなら救いようがないわね」
「本当に。愛し合っている2人を苦しめるのがそんなに楽しいのかしら?自分は全く相手にもされてないのに」
「どの口が言うのか疑問ですね。それに苦しんでるようには見えませんが」
そう言いながら中庭の2人を見る
はたから見れば仲睦まじいカップルだ
もっともその振る舞いは下品にしか見えないが
「それに、私が彼を引き留めているわけではありませんので」
「何ですって?」
「私は別にいつ婚約を破棄していただいても構わないということです。すべてはヨハン様次第」
「そんな負け惜しみ…」
明らかにためらっているのが分かった
自分たちの持っている情報とずれが生じているのだろう
「姉に何を言われたかは存じませんけど、少し考えればお判りでしょう?インディペイト家を相手に我が家が何かを強要する等出来ないことくらい」
つまり続行も解消も我が家の意思は汲み取られないということだ
それくらい子供でも分かるだろうにと逆に哀れになる
「姉を隠れ蓑にして自分の望みを伝えるのはどうかと思いますよ?」
「な…んの事かしら?」
「そうよ。何が言いたいのかしら?」
「失礼なこと言わないでちょうだい」
彼女たちは少し引きつった顔で笑顔を作ろうとしていた
「あなた方3人とも、入学早々ヨハン様に迫って抱いていただいた方ですものね。皆様揃って1度だけのようですし姉に負けた立場ということでしょうけど」
私はヨハンを監視させている
この先、何があっても自分の身を守るために相手の情報は不可欠だからだ
ヨハンが関係を持った女性は情事の事も含めて、詳細に全てが報告されているし、証拠も全て手の内に抑えてある
その報告の中にこの3人は入っていた
幸か不幸か大抵のものは一度目にすれば忘れない記憶力のおかげでこの場はすぐに片付きそうだ
「は?」
「ちょっと待って、あんた達まさか…」
「あんたこそ…!」
思った通り、お互いに隠していたのか醜くもめ始めた3人を放置し私はその場所を後にした
この後、3人と姉との関係がどうなろうと私の知ったことじゃないのだから
「入学早々ここまでとはね…」
寮の自室に入るなりベッドに突っ伏した
好奇の目に晒され、陰口を言われ、絡まれる
これがこれからの日常になるのかと考えると何もかもがイヤになってくる
「レオン…」
本来ならレオンもいたはずの学園
でもレオンはヨハンの嫌がらせで隣国に留学させられた
彼の企みを考えればその方が都合がいいものの、この場に彼がいないことは私にとってかなりのダメージだった
大きなため息をつきながら中庭に目をやって、そんな自分に後悔した
そこには姉を腕にぶら下げるヨハンがいた
幸せそうに笑う姉を哀れに思う
だからと言って全てを教えてあげようという気にもならないけど
「やっぱり2人はお似合いよね」
いつの間にか背後に3人の女生徒がいた
リボンの色を見れば姉と同じ色だった
つまり、姉の取り巻きというあたりかしら?
「あなた、シャロンの妹でしょう?」
「それが何か?」
「あのお似合いの2人を見て心が痛まないのかしら?」
「おっしゃっている意味が分かりませんが」
あえてそう返してみる
「…本気で言ってるなら救いようがないわね」
「本当に。愛し合っている2人を苦しめるのがそんなに楽しいのかしら?自分は全く相手にもされてないのに」
「どの口が言うのか疑問ですね。それに苦しんでるようには見えませんが」
そう言いながら中庭の2人を見る
はたから見れば仲睦まじいカップルだ
もっともその振る舞いは下品にしか見えないが
「それに、私が彼を引き留めているわけではありませんので」
「何ですって?」
「私は別にいつ婚約を破棄していただいても構わないということです。すべてはヨハン様次第」
「そんな負け惜しみ…」
明らかにためらっているのが分かった
自分たちの持っている情報とずれが生じているのだろう
「姉に何を言われたかは存じませんけど、少し考えればお判りでしょう?インディペイト家を相手に我が家が何かを強要する等出来ないことくらい」
つまり続行も解消も我が家の意思は汲み取られないということだ
それくらい子供でも分かるだろうにと逆に哀れになる
「姉を隠れ蓑にして自分の望みを伝えるのはどうかと思いますよ?」
「な…んの事かしら?」
「そうよ。何が言いたいのかしら?」
「失礼なこと言わないでちょうだい」
彼女たちは少し引きつった顔で笑顔を作ろうとしていた
「あなた方3人とも、入学早々ヨハン様に迫って抱いていただいた方ですものね。皆様揃って1度だけのようですし姉に負けた立場ということでしょうけど」
私はヨハンを監視させている
この先、何があっても自分の身を守るために相手の情報は不可欠だからだ
ヨハンが関係を持った女性は情事の事も含めて、詳細に全てが報告されているし、証拠も全て手の内に抑えてある
その報告の中にこの3人は入っていた
幸か不幸か大抵のものは一度目にすれば忘れない記憶力のおかげでこの場はすぐに片付きそうだ
「は?」
「ちょっと待って、あんた達まさか…」
「あんたこそ…!」
思った通り、お互いに隠していたのか醜くもめ始めた3人を放置し私はその場所を後にした
この後、3人と姉との関係がどうなろうと私の知ったことじゃないのだから
「入学早々ここまでとはね…」
寮の自室に入るなりベッドに突っ伏した
好奇の目に晒され、陰口を言われ、絡まれる
これがこれからの日常になるのかと考えると何もかもがイヤになってくる
「レオン…」
本来ならレオンもいたはずの学園
でもレオンはヨハンの嫌がらせで隣国に留学させられた
彼の企みを考えればその方が都合がいいものの、この場に彼がいないことは私にとってかなりのダメージだった
0
お気に入りに追加
183
あなたにおすすめの小説
《完結》転生令嬢の甘い?異世界スローライフ ~神の遣いのもふもふを添えて~
芽生 (メイ)
ファンタジー
ガタガタと揺れる馬車の中、天海ハルは目を覚ます。
案ずるメイドに頭の中の記憶を頼りに会話を続けるハルだが
思うのはただ一つ
「これが異世界転生ならば詰んでいるのでは?」
そう、ハルが転生したエレノア・コールマンは既に断罪後だったのだ。
エレノアが向かう先は正道院、膨大な魔力があるにもかかわらず
攻撃魔法は封じられたエレノアが使えるのは生活魔法のみ。
そんなエレノアだが、正道院に来てあることに気付く。
自給自足で野菜やハーブ、畑を耕し、限られた人々と接する
これは異世界におけるスローライフが出来る?
希望を抱き始めたエレノアに突然現れたのはふわふわもふもふの狐。
だが、メイドが言うにはこれは神の使い、聖女の証?
もふもふと共に過ごすエレノアのお菓子作りと異世界スローライフ!
※場所が正道院で女性中心のお話です
※小説家になろう! カクヨムにも掲載中
前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています
矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜
――『偽聖女を処刑しろっ!』
民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。
何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。
人々の歓声に包まれながら私は処刑された。
そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。
――持たなければ、失うこともない。
だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。
『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』
基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。
※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
見合い相手は魔術師団長
有沢真尋
ファンタジー
王宮を守護する騎士団と魔術師団は、とある理由でここ数年いがみ合いを続けていた。
このままでは内戦になる、と危ぶんだ国王から「どうにかしろ」という命令が下り、騎士団長と魔術師団長の話し合いによって「政略結婚」という案が浮上。
指名されたのは女性初の副騎士団長となったシェーラ。男性との交際経験もなく「無理」の一点張りであったが、断りきれずに待ち合わせ場所に向かうことに……。
※表紙はかんたん表紙メーカーさま
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる