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5.内緒話
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「よかったの?」
「何が?」
「私なんか迎えに来て・・・」
「お前がそばにいたいつったんだろ?」
「それはそうだけど・・・」
紗羅は言葉を濁す
「どうせ暇だしお前朝泣きそうな顔してたからな」
「それだけで・・・?」
「もっと理由が必要か?」
「そうじゃなくて・・・それだけで迎えに来てくれるなんて思いもしなかったから」
紗羅の声が震える
叶はそんな紗羅を横目に微笑んでいた
「俺飯食ってねぇからどっか寄っていいか?」
「あ、うん」
紗羅が頷くのを見て叶はビルの路地裏へ入っていく
「こんな所に何かあったっけ?」
「あ~普通のヤツは知んねぇかもな」
突き当たりの手前の道を左に曲がってからすぐに車を止めた
「到着」
叶はエンジンを切って車を降りる
紗羅もその後に続く
「こっち」
叶はそう言ってビルの地下へ続く階段を降りていく
「ちわ」
「あぁいらっしゃい・・・珍しいなお前が女連れなんて」
「まぁな。これからちょくちょく来ると思うから紹介しとくよ。制服でわかるだろうけど銀桜の紗羅。紗羅この人は俺の先輩で孝明さん」
「は、始めまして」
紗羅は深々と頭を下げる
「そんなかしこまらなくていいよ。紗羅ちゃんこいつと付き合ってんの?」
「え?あ・・・」
紗羅は困ったように叶を見る
「孝明さん俺の性格知ってるだろ?」
叶はそう言ってカウンターの一番奥の席に座った
その言葉に紗羅は少し寂しそうな顔をした
叶はそれに気付いたもののあえて何も言わなかった
「こんなヤツ止めといた方
がいいぞ?女心なんかわかっちゃいねぇんだから」
孝明がからかうように言う
「でも優しい空気持ってます」
紗羅のその言葉に驚いたのは孝明だけではない
「・・・だってさ叶。優しいなんて言われたの初めてだろ?」
「うっせぇよ。それより飯食わして。昨日の昼から食ってねんだって」
「相変わらずふざけた食生活だな?そのうちぶっ倒れるぞ?」
孝明はあきれたように言う
「大丈夫だって。そこまでヤワじゃねぇし。・・・っと、ちょっと出てくる。紗羅座ってろよ。コーヒーくらい飲むだろ?」
「あ、うん」
「てことでよろしく」
叶はそう言って店を出て行った
「ったく気が利くんだか利かないんだか・・・」
孝明は苦笑する
「あんな風に言ってるけどあいつが俺の前で女の話したり連れてきたりするのは初めてなんだよ」
「そう・・・なんですか?」
「あぁ。あのルックスだしモテルだろうけどな。興味無いの一点張り」
「信じられない」
「だろ?紗羅ちゃんは大分あいつにはまってるみたいだけど?」
「私前から知ってたんです。叶のこと」
「へぇ?」
孝明は興味を示す
「1年の時から友達とサッカーの試合見に行ってたんです」
「なるほどね」
「すごく楽しそうにプレーする叶にすぐに惹きつけられて・・・だから昨日偶然会った時は信じられなくて思わず声かけちゃったんです」
紗羅は照れくさそうに言う
「このこと叶には言わないで下さいね?恥ずかしいから」
「了解。でもあいつはその辺のヤツと同じ感覚でいたら辛いぞ?」
「え?」
「一緒にいたらわかってくると思うけど人を寄せ付けないところがあるからな」
「・・・」
「心当たりがあるみたいだな?」
「あ・・・」
紗羅は頷く
「あいつが心許してんのは俺とサッカー部の数人ぐらいだしなぁ。もっとも俺らの前でもちょっと許してるってだけだろうけど」
「・・・」
「だから紗羅ちゃんには悪いけどあんまりお勧めはできない。あいつもその自覚があるからああいう言い方したんだろうし・・・」
孝明はため息混じりに言う
「ただ・・・」
「え?」
「あいつがここに連れてきたってのがひっかかってな。ひょっとして・・・って思う部分もあるんだなこれが」
「孝明さん・・・」
「ま、相談くらいならいくらでも乗るからさ」
「ありがとうございます」
紗羅は微笑んで言う
「一応これ店の名刺な。いつでも電話しといで」
「はい」
紗羅は名刺を受け取ってカバンにしまった
「何が?」
「私なんか迎えに来て・・・」
「お前がそばにいたいつったんだろ?」
「それはそうだけど・・・」
紗羅は言葉を濁す
「どうせ暇だしお前朝泣きそうな顔してたからな」
「それだけで・・・?」
「もっと理由が必要か?」
「そうじゃなくて・・・それだけで迎えに来てくれるなんて思いもしなかったから」
紗羅の声が震える
叶はそんな紗羅を横目に微笑んでいた
「俺飯食ってねぇからどっか寄っていいか?」
「あ、うん」
紗羅が頷くのを見て叶はビルの路地裏へ入っていく
「こんな所に何かあったっけ?」
「あ~普通のヤツは知んねぇかもな」
突き当たりの手前の道を左に曲がってからすぐに車を止めた
「到着」
叶はエンジンを切って車を降りる
紗羅もその後に続く
「こっち」
叶はそう言ってビルの地下へ続く階段を降りていく
「ちわ」
「あぁいらっしゃい・・・珍しいなお前が女連れなんて」
「まぁな。これからちょくちょく来ると思うから紹介しとくよ。制服でわかるだろうけど銀桜の紗羅。紗羅この人は俺の先輩で孝明さん」
「は、始めまして」
紗羅は深々と頭を下げる
「そんなかしこまらなくていいよ。紗羅ちゃんこいつと付き合ってんの?」
「え?あ・・・」
紗羅は困ったように叶を見る
「孝明さん俺の性格知ってるだろ?」
叶はそう言ってカウンターの一番奥の席に座った
その言葉に紗羅は少し寂しそうな顔をした
叶はそれに気付いたもののあえて何も言わなかった
「こんなヤツ止めといた方
がいいぞ?女心なんかわかっちゃいねぇんだから」
孝明がからかうように言う
「でも優しい空気持ってます」
紗羅のその言葉に驚いたのは孝明だけではない
「・・・だってさ叶。優しいなんて言われたの初めてだろ?」
「うっせぇよ。それより飯食わして。昨日の昼から食ってねんだって」
「相変わらずふざけた食生活だな?そのうちぶっ倒れるぞ?」
孝明はあきれたように言う
「大丈夫だって。そこまでヤワじゃねぇし。・・・っと、ちょっと出てくる。紗羅座ってろよ。コーヒーくらい飲むだろ?」
「あ、うん」
「てことでよろしく」
叶はそう言って店を出て行った
「ったく気が利くんだか利かないんだか・・・」
孝明は苦笑する
「あんな風に言ってるけどあいつが俺の前で女の話したり連れてきたりするのは初めてなんだよ」
「そう・・・なんですか?」
「あぁ。あのルックスだしモテルだろうけどな。興味無いの一点張り」
「信じられない」
「だろ?紗羅ちゃんは大分あいつにはまってるみたいだけど?」
「私前から知ってたんです。叶のこと」
「へぇ?」
孝明は興味を示す
「1年の時から友達とサッカーの試合見に行ってたんです」
「なるほどね」
「すごく楽しそうにプレーする叶にすぐに惹きつけられて・・・だから昨日偶然会った時は信じられなくて思わず声かけちゃったんです」
紗羅は照れくさそうに言う
「このこと叶には言わないで下さいね?恥ずかしいから」
「了解。でもあいつはその辺のヤツと同じ感覚でいたら辛いぞ?」
「え?」
「一緒にいたらわかってくると思うけど人を寄せ付けないところがあるからな」
「・・・」
「心当たりがあるみたいだな?」
「あ・・・」
紗羅は頷く
「あいつが心許してんのは俺とサッカー部の数人ぐらいだしなぁ。もっとも俺らの前でもちょっと許してるってだけだろうけど」
「・・・」
「だから紗羅ちゃんには悪いけどあんまりお勧めはできない。あいつもその自覚があるからああいう言い方したんだろうし・・・」
孝明はため息混じりに言う
「ただ・・・」
「え?」
「あいつがここに連れてきたってのがひっかかってな。ひょっとして・・・って思う部分もあるんだなこれが」
「孝明さん・・・」
「ま、相談くらいならいくらでも乗るからさ」
「ありがとうございます」
紗羅は微笑んで言う
「一応これ店の名刺な。いつでも電話しといで」
「はい」
紗羅は名刺を受け取ってカバンにしまった
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