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47.新たな提案

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「帰ったぞー」
カルムさんのそんな声がしたのはちょうどおやつタイムを終えた頃だった

「パパおかえりー」
マリクとリアムが飛び出して行く
ヘンリーはメリッサさんの腕の中
シアは何故かバルドにもたれかかって眠っていた

「随分懐かれたなバルド?」
レイが2人を見るなり吹き出した

「ちょっと重い…」
そう言いながらもシアを気遣ってかほとんど身動きすらしない

「バルド、ちょっとくらい動いても大丈夫よ?
「分かってるけど…」
言いながらシアの気持ちよさげな顔を見る
うん
その顔見るとこのまま寝かせてあげたいって思うわね

「きゃぅ…」
それをみごとに邪魔する者がいた

「カーロー?」
自らの尾でシアの体中を撫でまわすカーロにシアがくすぐったそうにしながら目を覚ました

「カーオ」
シアは愚図ることもなくカーロの尾を追いかけだした
これも既に見慣れた光景となっていてみんなは笑いながら見ているだけだった

「メリッサ、変わるよ」
アランさんがメリッサさんからヘンリーを抱き受ける

「ありがと。ずっと抱いてると流石に重くて」
メリッサさんは苦笑しながらそう言った
確かに慣れるまでは結構きついのよねと、シアを産んだ頃を懐かしく思った

「この家に住むっての聞いた?」
「ああ。俺はいいと思う。実際今も住んでるみたいなもんだし」
アランさんはあっさり言う

「うん。私もありがたいなって。アランがいいなら私はこの誘いに乗りたいかな。親たちがあの状態で何かあっても頼りたくないし…ナターシャさんやサラサちゃんは信頼できるし」
「確かにあいつらには無理だな」
「正直お世話になるばっかりで申し訳ない気はするんだけど、私が仕事に戻ったとしても休みの日に子供達見ることでナターシャさん達も助かるって言ってくれてるんだよね」
「そうそう。たまに弾丸と一緒に依頼受けることもできそうだしねー」
「それはいいな」
カルムさんが嬉しそうに乗ってきた

「私も遠出して薬草採りに行けるかなーって、ね」
「その時は絶対一緒に行くからな?」
「分かってるよ?」
すかさず言うレイに笑って返す」

「一応費用の面も増築とか改装の時にこっちが出すってことで話はしてるんだ」
「そう言うことならちょっと気が楽かも」
メリッサさんは苦笑する

「じゃぁ決まりでいいか?」
「ええ」
2人がそう結論付けるのを私たちはただ見守っていた

「そう言うことで、よろしく!」
「ようこそわが家へって感じ?」
ナターシャさんがはしゃいでいる

「ママ何?」
「えっとね、アランとメリッサ、ヘンリーの3人がこれからずっとこの家に住むことになったの」
「「!」」
マリクとリアムが顔を見合わせた

「ヘンリーずっと一緒?」
「いつでも遊べる?」
「ずっと一緒だし、いつでも遊べるわよ」
「やった!」
2人ははしゃぎながら部屋の中を走り回っていた

「じゃぁとりあえず俺らの上の部屋使えよ。間取り変えるなら好きにすりゃいいし」
「いや、家具を入れるだけで十分だ。それ以上のことはヘンリーが落ち着いてから考える」
「あ、これまでメリッサさんたちが使ってた部屋、ベビールームにしちゃおっか」
「ベビールーム?」
それもないのか?

「え…と、おむつ交換とか授乳なんかをする為の部屋みたいな感じかな」
「それは助かるわ。毎度3階まで上がるのは大変だし、サラサちゃんももうすぐ生まれるもんね」
「おむつ交換用のベッドの側におむつをストックする棚を置いて…あとはゆったり座れるソファーかな?」
女3人でやたらと盛り上がる

「おーい」
「サラサー?」
「え?」
呼ばれたことに気付き顔を上げると男性陣が呆れたように私たちを見ていた

「盛り上がるのはいいけど俺らを置いてけぼりはないんじゃないか?」
アランさんがちょっと寂しそうな表情を見せた

「あはは…ごめん?」
「疑問形かよ」
「まぁいいけど…とりあえずアラン達の家具が来たらそこの部屋はそのベビールームにするってことだな?」
カルムさんが確認!という感じで話をまとめた
私達は一度顔を見合わせてから頷いた

「了解。ソファーはとりあえず買ってくるからな」
「え?」
「お前作る気だろうけどそれは生まれてからだ」
「あ、うん。わかった」
勢いのまま作ってしまうところだった

「あーカーロ僕も!」
突然のリアムの声に皆が子供たちの方を見る
そこではカーロの背に乗るシアがいた

「流石に尾が9本もあると便利だな?」
『便利とか言わないで』
カーロがレイを恨めしそうに見ている

『シアがよじ登ってきたから必死で支えてるんだよ?』
本当に面倒見のいい神獣です事

「ありがとうカーロ。あとでサンドイッチあげるからね」
『約束だよ?』
頷くとカーロは満足げに鳴いた

子供達は順にカーロの背に乗せてもらうという新しい遊びがいたく気に入ったようですっかり夢中だ

「あとはトータ達よね」
「え?」
驚いたのはバルドだ

「どういうこと?」
「トータ達にもここに住まないかって言ってるのよ」
「本当?」
期待に満ちた目がそこにある
聞き分けの良いふりを頑張っているのは気付いていたけどこれほどだったかとちょっと申し訳なくなる

トータさんとリルがここに住むと決めてくれればいいけど…
そう思わずにはいられなかった
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