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41.始めての納品

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「私たちも食べましょ」
ナターシャさんがみんなを促す

「食べていい?」
既に座っていたリアムが尋ねる
「いいわよ」
ナターシャさんの許可が下りるなり食べ始めた

「ランディの反応はどうだったんだ?」
「驚いてた」
「そうね。色んな意味で驚いてた?」
「サラサ姉ちゃん…」
バルドが顔をしかめた

「まぁ驚くのも無理はないだろ。こんなに早く売りに出せるようになるとは思わなかったもんな」
「そうだな。体調も落ち着いてるみたいだしこの調子で頑張れ」
「うん」
バルドは満足げに頷く

「バルドが作ったものが売りに出されるのよね?何か信じられない…」
「そうだな。大したもんだ」
リルとトータさんも満足気だ

ご機嫌なみんなの前ではご馳走がとんでもないスピードで減っていく
満足した子供たちは先に遊びタイムに入っている
私とナターシャさんはテーブルの上を少しずつ片付ける

「そういえばリル肌きれいになったんじゃない?」
「え…?」
ナターシャさんの言葉にリル自身が驚いている

「最近やっと俺の金で生活することを受け入れるようになったんだよ」
トータさんが言う

「そうなの?」
「なんだ、前は違ったのか?」
「違ったから無理してたんでしょう?」
「そうよねぇ。トータの稼ぎがあれば2人を養うくらい平気なはずだし…」
皆に言われてリルは居心地が悪そうだ

「やっと甘えられるようになったってことね?いいことだわ」
ナターシャさんがとどめを刺した

「ナターシャ、それくらいで勘弁してやってくれ」
フォローに入ったトータさんは大きなため息を吐く

「あら…」
真っ赤になってうつむくリルにナターシャさんは苦笑する

「ま、何にしてもいいことじゃないか」
カルムさんがそう言ってレイとトータさんをリビングの方に促した
今から本格的な酒盛りを始めるのだろう

「リルも先向こうで飲んでていいわよ」
「ありがと」
リルは頷いてトータさんの隣に座る

「だいぶ自然体になってきたかな?」
「そうね。背伸びして無理してたから…いい傾向だわ」
ナターシャさんと2人、リルを見て話しているとバルドがやってきた

「プリンもういい?」
「確認してみて?」
「うん」
バルドは嬉しそうに冷蔵庫を開ける
緑色の紐の付いた容器を取り出し傾けてみる

「固まってる?」
「うん。もう充分ね。他のも出してくれる?」
「分かった」
大きなトレイごと取り出すとテーブルの上に置いた

「さぁ、デザートにしましょう」
ナターシャさんが言うとマリクとリアムが駆け寄ってくる

「2人とも向こうでおりこうさんしてないと食べれないわよ?」
「「!」」
2人は顔を見合わせて慌ててリビングに戻っていった

「可愛いわー」
思わず口にする

「本当に素直よね」
ナターシャさんは笑いながらトレイを持ち上げてリビングに運ぶ

「さぁ、バルド」
「うん」
バルドを促すと緑の紐の付いた容器を手に取りリルとトータさんに渡した

「姉ちゃんとトータさんに渡したくてサラサ姉ちゃんに教えてもらった」
「え?」
リルが私の方を見たので頷いた

「納品して、もらったお金で材料買って作った」
バルドはリルを見て言った

「初めての報酬を…私のために?」
「うん。姉ちゃんに何かしたかったから」
バルドがそう言った途端リルが泣き出した

「ありがとうバルド…本当にうれしい…」
ナターシャさんがほらねとでもいうように笑う

「ほら、バルドも自分で作ったプリン食べてみたら?」
「うん!」
「こっちはマリクとリアムが作ったプリンね」
ナターシャさんがカルムさんとレイの前に置く

マリクたちはすでに自分のものを取っている
最後に残っていた2つをナターシャさんと分けてみんなで食べ始めた

「シアも食べるの?」
突然膝につかまり立ちしたシアの口元に運ぶと嬉しそうに食べている

「おいしい?」
尋ねると答える代わりに口を開ける
どうやら気に入ったようだ

「バルドうまかった」
トータさんが誰よりも早く食べ終えた
「お前もっと味わえよ…」
カルムさんがあきれたように言う

「うまいからすぐ終わっただけだぞ?」
当然のようにトータさんは言う

「バルド本当においしかった」
リルが満面の笑みで言った
それを見てバルドが同じように満面の笑みを見せる

バルドの願いがかなったことに私もナターシャさんもほほ笑んでしまう

「ママ、また作る―」
「そうね。またみんなで作りましょう」
「もっと量多くてもいいぞ」
「カルム、そういう時は沢山作ってってお願いするべきじゃないの?」
ナターシャさんがあきれたように言う

「まぁそう言うなって。バルド明日からまた頑張るんだろ?」
「うん」
「無理だけはしないようにな」
「分かってる。絶対無理はしないよ」
はっきり言い切るバルドにみんながほっとしていた
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