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9.遊び心(三目並べ)
2
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いつものように依頼ボードを眺める
「どうした?」
動きのない私に首をかしげながらレイが声をかけてくる
「何でもないよ」
そう言いながら依頼用紙を1枚手に取った
「変わったの選ぶな?」
「そう?」
「ああ。雑用もう必要ないだろ?」
「まぁ…ね」
ランクアップに必要な件数はすでにクリアしている
「何か気になっちゃって」
そう返すとレイは改めて依頼用紙をのぞき込む
内容は孤児院の家具の修繕だ
「ま、無理はするなよ?何かあったら…」
「大丈夫。心配しないで?」
真っすぐ目を見て言うと諦めたようにため息をついた
「わかった。じゃぁ行ってくる」
「行ってらっしゃい。気を付けてね」
「ああ」
レイを見送ってから受付で処理をしてもらい孤児院に向かった
「こんにちはー」
入り口で声をかけるものの何の反応もない
でも奥の方で少し騒がしい感じがした
「すみませーん」
もう一度声をかけた
やはり何の反応もなく奥のざわつきだけが聞こえてくる
「…おじゃましまーす」
とりあえず気になり入ってみることにした
「…やく……て…」
「……も…ない………」
少し切羽詰まったような大人の声と共に子供の泣き声がする
奥に進むにつれてそれが少しずつ大きくなる
「…く……医者…!」
「!」
医者という言葉に私は足を速めた
「失礼します」
扉を開けて中の様子を伺うと大人が2人血を流して倒れていた
その周りで子供たちが泣いている
「何があったんです?」
私は慌てて倒れている大人に駆け寄った
「盗賊…が…」
襲われたのだろうか
よく見ると子供たちも何人かは血を流している
「治療します」
「え…?」
その女性が戸惑っているのをそのままにハイヒールをかける
切られた傷と殴られた痕はこれで大丈夫なはずだ
もう一人の側によると腕の様子がおかしい
肩が外れてるのか…
「痛みますよ?」
「は?…うぁっ…!!」
『ゴキッ』と鈍い音が響いた
「肩が外れていたのではめました。もう肩の痛みは無いはずですけど…」
「…本当だ…あんた一体?」
「話はあとで。先に治療を済ませますね」
他にも切られた部分に魔法をかけていく
「お二人はもう大丈夫ですか?」
「あ、あぁ…おかげで助かりました」
「良かった。じゃぁ怪我してる子たちをこっちに連れてきてもらえますか?手当てします」
「それは助かるがあんたは大丈夫なのか?俺達だけでもかなりの魔力を使ってもらった」
2人は申し訳なさそうにこっちを見た
「大丈夫ですよ」
微笑んで返すとそばにいた子の前にしゃがむ
「お膝痛いね…」
「ん…」
「すぐ治してあげるからね」
キョトンとしたその子に笑いかけてからヒールをかける
「もう大丈夫よ」
「…ありがとうお姉ちゃん」
自分の膝から傷も痛みもなくなったことに満面の笑みが返ってくる
「どういたしまして。私はサラサ。あなたのお名前は?」
「ミリー」
「可愛い名前ね。ミリーにお願いがあるの」
「なぁに?」
「ミリーと同じように怪我してるお友達を私のそばまで連れてきてくれる?」
「お姉ちゃんが治してくれるの?」
「ええ」
「わかった。連れてくる」
ミリーは頷いて走っていった
私は3人が連れてきてくれる怪我人に順番に手当てをしていく
「この子で最後だよ」
ミリーが言った
「ありがとうミリー」
ミリーの頭をなでると少し恥ずかしそうにしていた
「本当になんとお礼を言えばいいのか…」
最後の子を治療し終えると最初に治療した女性がそう言ってきた
「私はここの指導員のジェシ―です」
「俺はハンスだ。本当に助かった」
2人は頭を下げてくる
「気にしないでください。みんなが無事で良かった」
「でも…」
「それより盗賊とおっしゃってましたけど…?」
質問を始めた時ドタドタと何人かが入ってくるのが分かった
「まさか…?」
部屋の中に緊張が走る
「お前ら大丈夫か?」
勢いよくドアが開いたとたん飛んできたのはそんな言葉だった
「せんせー!」
子供たちが飛びついていく
入ってきたのは20代半ばぐらいの男性2人だった
どちらも満身創痍でそこに立っているのが不思議なくらいだ
「お姉ちゃん、せんせー達も治して?」
ミリーが彼の手を握りしめて泣きながらこっちを見ていた
「…あんたは確か…?」
もう一人の男性が私の顔に覚えがあるようだ
「話はあとで。先に治療しますね」
そう言いながら同様に魔法をかけていく
流石に疲れたかも…
何とか治療を済ませたとたんその場にへたり込んでしまった
「大丈夫か?ちょっと休んだ方がいい」
とっさに支えられ、そのまま抱き上げられる
「ダレル、私の部屋へ」
「わかった」
「…すみません」
居たたまれなくなってしまいそれしか言えなかった
「私たちのせいでかなり魔力を使わせてしまったもの。少し休んだ方がいいわ」
ジェシーさんはそう言って先に歩いていく
「ミリー、みんなとお昼ご飯の準備をしていてくれるか?」
「わかった!」
ハンスさんがミリーにそう言ってお願いしてからもう一人の男性と一緒についてくる
ジェシーさんの部屋で休憩させてもらいながら私たちは話をすることになった
「どうした?」
動きのない私に首をかしげながらレイが声をかけてくる
「何でもないよ」
そう言いながら依頼用紙を1枚手に取った
「変わったの選ぶな?」
「そう?」
「ああ。雑用もう必要ないだろ?」
「まぁ…ね」
ランクアップに必要な件数はすでにクリアしている
「何か気になっちゃって」
そう返すとレイは改めて依頼用紙をのぞき込む
内容は孤児院の家具の修繕だ
「ま、無理はするなよ?何かあったら…」
「大丈夫。心配しないで?」
真っすぐ目を見て言うと諦めたようにため息をついた
「わかった。じゃぁ行ってくる」
「行ってらっしゃい。気を付けてね」
「ああ」
レイを見送ってから受付で処理をしてもらい孤児院に向かった
「こんにちはー」
入り口で声をかけるものの何の反応もない
でも奥の方で少し騒がしい感じがした
「すみませーん」
もう一度声をかけた
やはり何の反応もなく奥のざわつきだけが聞こえてくる
「…おじゃましまーす」
とりあえず気になり入ってみることにした
「…やく……て…」
「……も…ない………」
少し切羽詰まったような大人の声と共に子供の泣き声がする
奥に進むにつれてそれが少しずつ大きくなる
「…く……医者…!」
「!」
医者という言葉に私は足を速めた
「失礼します」
扉を開けて中の様子を伺うと大人が2人血を流して倒れていた
その周りで子供たちが泣いている
「何があったんです?」
私は慌てて倒れている大人に駆け寄った
「盗賊…が…」
襲われたのだろうか
よく見ると子供たちも何人かは血を流している
「治療します」
「え…?」
その女性が戸惑っているのをそのままにハイヒールをかける
切られた傷と殴られた痕はこれで大丈夫なはずだ
もう一人の側によると腕の様子がおかしい
肩が外れてるのか…
「痛みますよ?」
「は?…うぁっ…!!」
『ゴキッ』と鈍い音が響いた
「肩が外れていたのではめました。もう肩の痛みは無いはずですけど…」
「…本当だ…あんた一体?」
「話はあとで。先に治療を済ませますね」
他にも切られた部分に魔法をかけていく
「お二人はもう大丈夫ですか?」
「あ、あぁ…おかげで助かりました」
「良かった。じゃぁ怪我してる子たちをこっちに連れてきてもらえますか?手当てします」
「それは助かるがあんたは大丈夫なのか?俺達だけでもかなりの魔力を使ってもらった」
2人は申し訳なさそうにこっちを見た
「大丈夫ですよ」
微笑んで返すとそばにいた子の前にしゃがむ
「お膝痛いね…」
「ん…」
「すぐ治してあげるからね」
キョトンとしたその子に笑いかけてからヒールをかける
「もう大丈夫よ」
「…ありがとうお姉ちゃん」
自分の膝から傷も痛みもなくなったことに満面の笑みが返ってくる
「どういたしまして。私はサラサ。あなたのお名前は?」
「ミリー」
「可愛い名前ね。ミリーにお願いがあるの」
「なぁに?」
「ミリーと同じように怪我してるお友達を私のそばまで連れてきてくれる?」
「お姉ちゃんが治してくれるの?」
「ええ」
「わかった。連れてくる」
ミリーは頷いて走っていった
私は3人が連れてきてくれる怪我人に順番に手当てをしていく
「この子で最後だよ」
ミリーが言った
「ありがとうミリー」
ミリーの頭をなでると少し恥ずかしそうにしていた
「本当になんとお礼を言えばいいのか…」
最後の子を治療し終えると最初に治療した女性がそう言ってきた
「私はここの指導員のジェシ―です」
「俺はハンスだ。本当に助かった」
2人は頭を下げてくる
「気にしないでください。みんなが無事で良かった」
「でも…」
「それより盗賊とおっしゃってましたけど…?」
質問を始めた時ドタドタと何人かが入ってくるのが分かった
「まさか…?」
部屋の中に緊張が走る
「お前ら大丈夫か?」
勢いよくドアが開いたとたん飛んできたのはそんな言葉だった
「せんせー!」
子供たちが飛びついていく
入ってきたのは20代半ばぐらいの男性2人だった
どちらも満身創痍でそこに立っているのが不思議なくらいだ
「お姉ちゃん、せんせー達も治して?」
ミリーが彼の手を握りしめて泣きながらこっちを見ていた
「…あんたは確か…?」
もう一人の男性が私の顔に覚えがあるようだ
「話はあとで。先に治療しますね」
そう言いながら同様に魔法をかけていく
流石に疲れたかも…
何とか治療を済ませたとたんその場にへたり込んでしまった
「大丈夫か?ちょっと休んだ方がいい」
とっさに支えられ、そのまま抱き上げられる
「ダレル、私の部屋へ」
「わかった」
「…すみません」
居たたまれなくなってしまいそれしか言えなかった
「私たちのせいでかなり魔力を使わせてしまったもの。少し休んだ方がいいわ」
ジェシーさんはそう言って先に歩いていく
「ミリー、みんなとお昼ご飯の準備をしていてくれるか?」
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ハンスさんがミリーにそう言ってお願いしてからもう一人の男性と一緒についてくる
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