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35.薬草

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朝食を済ませるなり子供たちはいつものように庭に出ようとしていた

「バルドお兄ちゃん薬草見つける?」
「行こー。レイお兄ちゃん、シアも」
「いいぞ。じゃぁみんなで外行くか?」
レイが立ちあがると子供たちが庭に飛び出していく

「バルドはちょっと待って」
一緒に飛び出していったバルドを一旦呼び止める

「この庭でよく見つけることができる薬草の一覧よ。特徴を昨日の薬草辞典で確認してから探してみて」
「うん。わかった」
バルドは頷いて辞典を取ってきた

***
オレガノ、カモミール、コリアンダー、ジャスミン、セージ、タイム、
バジル、パセリ、ミント、ラベンダー、レモングラス
***

「結構とれるんだな?」
レイがバルドの手元を覗き込む

「ちょっとずつ増やしてるのよ」
「は?」
久々のレイの驚いた声だった

「ちょっ…トータこっち見ててくれ」
「ん?ああ、りょーかいー」
トータさんが出てくると私はレイに寝室に引っ張ってこられた

「増やしたって…?」
ソファに座りこちらをじっと見る

「この世界の薬草はね、向こうではハーブとか漢方って呼ばれたものがほとんどなの」
「ハーブ?漢方?」
「いろんな効能を持った植物になるのかな。で、私はハーブに関しては結構勉強してたわけ」
「…で?」
レイは少し警戒を見せながら先を促す

「ハーブはね種から自分で育てることも出来るし増やすことも出来る。こぼれ種で勝手に増えることもあるかな」
簡単に説明する

「依頼の途中で見つけたり、多めに採取したハーブを庭に植え替えたり増やしたりしてたの」
「…」
レイがうなだれる

「種まくときは同じ種類をまとめるつもりだったんだけどね…あの子たちが好き放題投げちゃったからちょっと楽しいことになってるかな?勝手に増殖するのも多いから、この先いくらでも生えて来るかも」
「…庭に数種類の薬草が生えてたって聞いたときからおかしいとは思ってたんだ」
「料理やお茶にも使えるから私としてはそっち目的なんだけどね」
苦笑しながら言うとさらにあきれられた

「大概の事には驚かなくなったと思ってたけど甘かった」
「そんなに?」
思わず笑う

「考えてもみろよ。Fランクの冒険者が草原や森ん中歩き回って探してるのが庭にあるんだぞ?」
「まぁ…ねぇ。でもレイの好きなモヒートはミントだしバジリコスパゲティはバジル使ってるし…」
「まじか…あれって薬草だったのか?」
「ハーブの利用法はいっぱいあるの。食事や飲み物はもちろん雑貨にもなるし化粧水とか石鹸なんかにもなるし」
私は思いつくまま利用法を上げていく

「…で、何たくらんでる?増やすってことは何か考えてんだろ?」
事後ではなく事前に教えろという感じだろうか?
多少の凄み

「えっと…ハーブを使った石鹸とか雑貨を売り出すのはどうかなって。需要が増えるし低ランクの冒険者も少しは楽になるかなーって」
「確かに前からそういう話はしてたけど…」
「でしょう?だから庭で育ててちょっと作ってみようと思ってたのよね。想定外だったのが子供たちが薬草採取に夢中になっちゃったことかな?」
そのせいで材料が集まらないのだ

「…その辺は後で話すか。なんか疲れた」
「そんなに?」
完全にソファにもたれかかって天井を仰ぐレイの背後から頬に触れる

「ほんと、退屈しねーな」
レイの伸びてきた手に引き寄せられ口づけられる

「退屈な方がいい?」
「いや。このままでいいよ。振り回されるのも悪くない」
「ふふっそんなに振り回してる?」
「かなりな。とりあえず今は戻るか」
レイはそう言って立ち上がる
庭を見ると薬草採りを終えて砂場遊びに代わっていた

「サラサ、これがマリクでこっちがリアム」
カルムさんが薬草を渡してくる

「めずらしい10本いってない」
「砂遊びに目がいったみたい」
ナターシャさんが言う
マリクとリアム、シアが砂場で遊んでいる

「バルドはどう?」
「あ、サラサ姉ちゃん…これ料理にも使える?」
バルドはバジルの束を見せて言う
「使えるわよ。食べてみる?」
「うん」
「じゃぁ今日のお昼はバジルを使って作ろうね。でもバルドが摘んだのは取っておきましょう」
「でも…」
「大丈夫。ストックがたくさんあるからそれを使うわ」
バルドから他の薬草も受け取りインベントリにしまった
子供たちが集めたものは子供たちのものにする
それが大人が決めたルールでもあるのだ

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