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「悠稀お兄ちゃんいい匂いがする」
男の子が突然言った
「本当だ甘い香り」
小さい子たちは嬉しそうに言い合った
そしてその香りが充満してきた頃扉が開いた
「さぁみんなおやつにしましょう。小学生組は食べたらおうちに帰ってお手伝いしなきゃね」
紫穂がお皿いっぱいのクッキーを持って入って来た
「紫穂ちゃんのクッキーだ!」
「やった♪」
皆が勉強道具を脇によけてテーブルを囲んだ
「ほら、そこの3人も」
寛臣と悠稀、由香に向かって言う
「人の集中力はそんなに持たないでしょう?疲れた脳に甘いものを与えましょう」
その笑顔に思わず引き込まれそうになる
「さぁ瑞穂ちゃんジュースを取りにきて」
「はーい」
瑞穂は紫穂と出て行ったかと思うとすぐにペットボトルのジュースを持ってきた
部屋に用意されていたグラスに注いで別の子が回す
いきわたったのを確認すると皆が一斉に食べだした
「3人はこっちの方がいいでしょう?」
少ししてから紫穂がコーヒーを持って入って来た
「サンキュ」
「紫穂ちゃんはすごいなぁ」
「何が?」
「何でも出来ちゃうんだもん」
由香が言う
「何でもじゃないわよ」
「そんなことない。料理だってお菓子作りだって出来るし洋裁もでしょう?女らしいこと何でも出来るじゃない。私なんて全然…」
「由香ちゃんはするきっかけがなかっただけ。練習すればいくらでも出来るようになるわよ?」
「そうかなあ…」
「信じないの?この町一番の努力家の由香ちゃんが言う言葉じゃないと思うけど」
「紫穂ちゃん…」
「ふふ…好きな男の子にクッキー焼くならいつでもおいで。教えてあげるから」
「!」
由香の顔が真っ赤になった
「由香姉ちゃんトマトみたい」
「こら!」
小学生組に言われて由香はその子達を捕まえる
「そんなこと言う子にはコチョコチョの刑だ!」
笑いながら逃げまどう子供たちを寛臣はただ驚きながら見ていた
「由香ちゃんが手を出すと思った?」
「…ああ」
寛臣は一瞬驚いた表情を見せてから頷いた
「あの子たちが悪気があって言ったわけじゃないって由香ちゃんはちゃんと分かってる。あれは一種の照れ隠しみたいなものなの」
「照れ隠しね…」
「私達もやられたし自分より年下の子には同じようにしてたの。そしてみんな分かるの。自分が言ったことやしたことが相手にとって決して喜ばしいことではなかったんだって。不思議なんだけど殴ったり汚い言葉を浴びせるよりも効果あるんだよ」
「そういうものか?」
そんな親しい付き合いをした事の無い寛臣にはよくわからないようだった
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