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5.別れ
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外を見ると雨が降り出していた
「こりゃ中止か…?」
ぼそっとつぶやくように海莉が言った
夕立のごとく急に降り出した雨はひどくなる一方だった
ギャラリーも逃げるように帰っていく
「…お願いがあるの」
試合が中止になるだろうことを確信すると瑞穂は口を開いた
「何?」
「…別れよ?」
瑞穂は震える声で、それでも真直ぐ海莉をみて言った
「お前何言って…」
「前から考えてたの。本当は今日の試合が終わってから言うつもりだった」
「何で…だよ?」
「…気になる人がいるの。だからもうこれ以上は…」
瑞穂は視線をそらして言った
「何言って…ウソだろ?」
「ウソじゃない」
「…」
海莉は明らかに動揺していた
「海莉にはイッパイ幸せもらったのにこんな形で傷つける事しか出来なくて…ごめんね」
瑞穂は泣きそうな顔で笑うと車を降りて帰って行った
瑞穂が降りてきても暫く降りてこない海莉に忍は何があったのか問い正そうとした
「…ふられた」
「は?」
忍は耳を疑った
「他に気になる人がいるってさ」
海莉は苦笑して言う
「ウソだろ?」
「…俺だってそう思いたいさ!でも前から別れること考えてたって、今日試合が終わったらそう言うつもりだったって言われりゃ俺には何も出来ねぇだろ!?」
海莉は自分の中の怒りをどこにぶつけたらいいのかわからなくなっていた
その時徹が海莉の荷物を車まで持ってきて延期の詳細を教えてくれた
「悪いけど海莉借りるぞ」
「あ、はい」
徹は驚きながらも頷く
忍はそのまま車を出した
「どこ行くんだよ?」
少し走った時海莉が口を開いた
「…わかんねぇの?」
忍は信じられないという顔をした
「わかんねえから聞いてんだよ!」
普段何があっても冷静な海莉が怒鳴った
「…瑞穂が離れようとした理由が何となくわかるな」
「…え?」
海莉が顔を上げたとき忍は急ブレーキをかけて車から飛び出した
「忍?!」
突然の事に海莉は忍の姿を目で追うしか出来なかった
その先にはベンチでぐったりしている瑞穂がいた
「…あ…」
このときになって初めて瑞穂の心臓の事が頭をよぎった
「俺…」
震える海莉の目の前で忍は瑞穂の肩に上着をかけて抱き上げると車まで連れてきた
後部座席に寝かせると積んであった毛布をかける
「頑張れ瑞穂。すぐ病院連れて行ってやるから…」
忍は優しく言うとかなりのスピードで病院へ駆け込んだ
集中治療室で瑞穂が治療を受けている間に忍は海莉を軽蔑したように見据えていた
「…俺…」
海莉は震えていた
「忍、俺どうしたら…」
「…」
忍は何も言わなかった
「瑞穂に甘えてた。あいつは弱音吐かないしいつも何もかも受け止めてくれるから…」
海莉は辛そうに言う
「最近部活が楽しくてサッカーのことばっか頭にあって…あいつの言葉聞こうともしてなかった。あいつに何かあったらサッカーどころじゃないのに…」
「…あいつはそれを不満に思ったりしない。むしろ喜ぶよ」
忍の言葉を海莉は理解出来ずにいた
「あいつは『海莉には鳳凰でサッカーを思いっきりして欲しい』って口癖のようにいってるようなヤツだ。離れるって決めたのは多分…」
「多分なんだよ?」
「それは自分で瑞穂に聞くんだな。俺の言うべきことじゃない」
忍はきっぱり言った
「忍?」
「…あいつに甘えてるのは俺も一緒だ。俺の足の事を自分のせいだって責める瑞穂に甘えてる。サッカー出来なくなった辛さを認められなくてな」
忍はそう言って苦笑した
「こりゃ中止か…?」
ぼそっとつぶやくように海莉が言った
夕立のごとく急に降り出した雨はひどくなる一方だった
ギャラリーも逃げるように帰っていく
「…お願いがあるの」
試合が中止になるだろうことを確信すると瑞穂は口を開いた
「何?」
「…別れよ?」
瑞穂は震える声で、それでも真直ぐ海莉をみて言った
「お前何言って…」
「前から考えてたの。本当は今日の試合が終わってから言うつもりだった」
「何で…だよ?」
「…気になる人がいるの。だからもうこれ以上は…」
瑞穂は視線をそらして言った
「何言って…ウソだろ?」
「ウソじゃない」
「…」
海莉は明らかに動揺していた
「海莉にはイッパイ幸せもらったのにこんな形で傷つける事しか出来なくて…ごめんね」
瑞穂は泣きそうな顔で笑うと車を降りて帰って行った
瑞穂が降りてきても暫く降りてこない海莉に忍は何があったのか問い正そうとした
「…ふられた」
「は?」
忍は耳を疑った
「他に気になる人がいるってさ」
海莉は苦笑して言う
「ウソだろ?」
「…俺だってそう思いたいさ!でも前から別れること考えてたって、今日試合が終わったらそう言うつもりだったって言われりゃ俺には何も出来ねぇだろ!?」
海莉は自分の中の怒りをどこにぶつけたらいいのかわからなくなっていた
その時徹が海莉の荷物を車まで持ってきて延期の詳細を教えてくれた
「悪いけど海莉借りるぞ」
「あ、はい」
徹は驚きながらも頷く
忍はそのまま車を出した
「どこ行くんだよ?」
少し走った時海莉が口を開いた
「…わかんねぇの?」
忍は信じられないという顔をした
「わかんねえから聞いてんだよ!」
普段何があっても冷静な海莉が怒鳴った
「…瑞穂が離れようとした理由が何となくわかるな」
「…え?」
海莉が顔を上げたとき忍は急ブレーキをかけて車から飛び出した
「忍?!」
突然の事に海莉は忍の姿を目で追うしか出来なかった
その先にはベンチでぐったりしている瑞穂がいた
「…あ…」
このときになって初めて瑞穂の心臓の事が頭をよぎった
「俺…」
震える海莉の目の前で忍は瑞穂の肩に上着をかけて抱き上げると車まで連れてきた
後部座席に寝かせると積んであった毛布をかける
「頑張れ瑞穂。すぐ病院連れて行ってやるから…」
忍は優しく言うとかなりのスピードで病院へ駆け込んだ
集中治療室で瑞穂が治療を受けている間に忍は海莉を軽蔑したように見据えていた
「…俺…」
海莉は震えていた
「忍、俺どうしたら…」
「…」
忍は何も言わなかった
「瑞穂に甘えてた。あいつは弱音吐かないしいつも何もかも受け止めてくれるから…」
海莉は辛そうに言う
「最近部活が楽しくてサッカーのことばっか頭にあって…あいつの言葉聞こうともしてなかった。あいつに何かあったらサッカーどころじゃないのに…」
「…あいつはそれを不満に思ったりしない。むしろ喜ぶよ」
忍の言葉を海莉は理解出来ずにいた
「あいつは『海莉には鳳凰でサッカーを思いっきりして欲しい』って口癖のようにいってるようなヤツだ。離れるって決めたのは多分…」
「多分なんだよ?」
「それは自分で瑞穂に聞くんだな。俺の言うべきことじゃない」
忍はきっぱり言った
「忍?」
「…あいつに甘えてるのは俺も一緒だ。俺の足の事を自分のせいだって責める瑞穂に甘えてる。サッカー出来なくなった辛さを認められなくてな」
忍はそう言って苦笑した
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