10 / 80
3.嫁が来る(side:スターリング一家)
2
しおりを挟む
「…とりあえずお部屋は客間でいいわよね?」
「それはその女しだいだろ?」
「まぁ…ね。でもこれまでと違って婚姻だし離縁は認めないとされた以上は…」
オードリーは困惑の表情だ
「多くは望まん。最低限の礼儀さえ持ち合わせていれば御の字だろう」
バックスの言葉に3人そろってため息をついていると門番が呼びに来た
「もう?」
「早すぎだろ?」
「転移の魔術でも使ったか…テオはエイドリアンを呼んできてくれ」
「了解」
テオを見送りバックスとオードリーはアリシャナを出迎えに外に出た
「初めまして。アリシャナと申します」
美しい姿勢で微笑みながらの挨拶だった
「ああ、キミが…」
「あなたも大変だったわね。さぁ中へ」
2人は驚きながら中に促した
「アリシャナさんは今回の事をどこまでご存知かな?私含め誰も舞踏会に出なかったのでな、帝王からの婚姻が成立したという伝令の事しかわからないんだが…」
少し話をした後、2人の息子が部屋の前まで来たのに気づきバックスは話を切り出した
その問いに返ってきたのは驚くほど淡々とした説明と謝罪だった
しかも入ってきたエイドリアンを見て、悲鳴をあげるどころか目を反らすことすらしなかった
さらに呪いではなく祝福だと告げその説明を淡々と済ませる
テオの感情的な言葉も真正面から受け止めてしまう
アンジェラと本当に同じ血が流れているのかと思わずにいられなかった
「あなたが本当に呪われていて世間の言う恐ろしい対象だとしたら…ご家族からこんなに愛されているとは思いません」
アリシャナのその言葉に、一緒に暮らしていた家族でさえ久々にエイドリアンの表情が崩れるのを目にしていた
これまでエイドリアンを守る気持ちまで偽善だと、演技じゃないのかと責められ続けてきた
エイドリアンを苦しめるだけでは足りないらしく、我々の気持ちまで捻じ曲げてエイドリアンを攻撃する道具にする者も少なくはなかった
もどかしさと悔しさに悲鳴をあげる心のやり場を見つけられないまま過ごしてきた長い年月が、初めて報われた気がするほどアリシャナの言葉に救われていた
「部屋に連れていく」
そう言ってアリシャナを抱き上げ出て行ったエイドリアンの背中を初めて穏やかな気持ちで見送った
心を閉ざし、我々家族とさえ距離を置くエイドリアンが初めて、自分から誰かに触れたのだ
「アリシャナはエイドリアンを救ってくれるかもしれません」
「エイドリアンだけじゃなく我々もだ」
「ええ。そうね…」
涙を流すオードリーをバックスは抱きしめた
「それはその女しだいだろ?」
「まぁ…ね。でもこれまでと違って婚姻だし離縁は認めないとされた以上は…」
オードリーは困惑の表情だ
「多くは望まん。最低限の礼儀さえ持ち合わせていれば御の字だろう」
バックスの言葉に3人そろってため息をついていると門番が呼びに来た
「もう?」
「早すぎだろ?」
「転移の魔術でも使ったか…テオはエイドリアンを呼んできてくれ」
「了解」
テオを見送りバックスとオードリーはアリシャナを出迎えに外に出た
「初めまして。アリシャナと申します」
美しい姿勢で微笑みながらの挨拶だった
「ああ、キミが…」
「あなたも大変だったわね。さぁ中へ」
2人は驚きながら中に促した
「アリシャナさんは今回の事をどこまでご存知かな?私含め誰も舞踏会に出なかったのでな、帝王からの婚姻が成立したという伝令の事しかわからないんだが…」
少し話をした後、2人の息子が部屋の前まで来たのに気づきバックスは話を切り出した
その問いに返ってきたのは驚くほど淡々とした説明と謝罪だった
しかも入ってきたエイドリアンを見て、悲鳴をあげるどころか目を反らすことすらしなかった
さらに呪いではなく祝福だと告げその説明を淡々と済ませる
テオの感情的な言葉も真正面から受け止めてしまう
アンジェラと本当に同じ血が流れているのかと思わずにいられなかった
「あなたが本当に呪われていて世間の言う恐ろしい対象だとしたら…ご家族からこんなに愛されているとは思いません」
アリシャナのその言葉に、一緒に暮らしていた家族でさえ久々にエイドリアンの表情が崩れるのを目にしていた
これまでエイドリアンを守る気持ちまで偽善だと、演技じゃないのかと責められ続けてきた
エイドリアンを苦しめるだけでは足りないらしく、我々の気持ちまで捻じ曲げてエイドリアンを攻撃する道具にする者も少なくはなかった
もどかしさと悔しさに悲鳴をあげる心のやり場を見つけられないまま過ごしてきた長い年月が、初めて報われた気がするほどアリシャナの言葉に救われていた
「部屋に連れていく」
そう言ってアリシャナを抱き上げ出て行ったエイドリアンの背中を初めて穏やかな気持ちで見送った
心を閉ざし、我々家族とさえ距離を置くエイドリアンが初めて、自分から誰かに触れたのだ
「アリシャナはエイドリアンを救ってくれるかもしれません」
「エイドリアンだけじゃなく我々もだ」
「ええ。そうね…」
涙を流すオードリーをバックスは抱きしめた
11
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
攻略対象の王子様は放置されました
白生荼汰
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
悪役令嬢に仕立て上げたいのならば、悪役令嬢になってあげましょう。ただし。
三谷朱花
恋愛
私、クリスティアーヌは、ゼビア王国の皇太子の婚約者だ。だけど、学院の卒業を祝うべきパーティーで、婚約者であるファビアンに悪事を突き付けられることになった。その横にはおびえた様子でファビアンに縋り付き私を見る男爵令嬢ノエリアがいる。うつむきわなわな震える私は、顔を二人に向けた。悪役令嬢になるために。
時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。
屋月 トム伽
恋愛
ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。(リディアとオズワルド以外はなかった事になっているのでifとしてます。)
私は、リディア・ウォード侯爵令嬢19歳だ。
婚約者のレオンハルト・グラディオ様はこの国の第2王子だ。
レオン様の誕生日パーティーで、私はエスコートなしで行くと、婚約者のレオン様はアリシア男爵令嬢と仲睦まじい姿を見せつけられた。
一人壁の花になっていると、レオン様の兄のアレク様のご友人オズワルド様と知り合う。
話が弾み、つい地がでそうになるが…。
そして、パーティーの控室で私は襲われ、倒れてしまった。
朦朧とする意識の中、最後に見えたのはオズワルド様が私の名前を叫びながら控室に飛び込んでくる姿だった…。
そして、目が覚めると、オズワルド様と半年前に時間が戻っていた。
レオン様との婚約を避ける為に、オズワルド様と婚約することになり、二人の日常が始まる。
ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。
第14回恋愛小説大賞にて奨励賞受賞
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)
とある侯爵令息の婚約と結婚
ふじよし
恋愛
ノーリッシュ侯爵の令息ダニエルはリグリー伯爵の令嬢アイリスと婚約していた。けれど彼は婚約から半年、アイリスの義妹カレンと婚約することに。社交界では格好の噂になっている。
今回のノーリッシュ侯爵とリグリー伯爵の縁を結ぶための結婚だった。政略としては婚約者が姉妹で入れ替わることに問題はないだろうけれど……
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる