上 下
302 / 349
119.リアンの登録

2

しおりを挟む
「イテ…」
「こんな重大なこと忘れてんじゃねぇ!」
「重大って寿命伸びて龍化できるようになっただけじぇねぇか」
実際コーラルさんに伝えた時は驚きはしてたけどただニコニコ笑ってただけだし…
そう言った俺をレティが残念そうな目で見て来る
「…それはって言うレベルじゃないと思うよ?」
「そうか?」
「そうなんだよこの馬鹿が」
「悪かったって。とにかく俺の寿命は多分レティと同じくらいになってるんだ。で、リアンだけど、ある事情で神獣化したおかげで寿命が長い。その長い時間を一人で過ごすのが嫌になったらしい」
これ以上突っ込まれないうちにサラッと説明することにした

「…つまり?」
「同じく寿命の長い俺の契約獣になれば一人じゃなくなるからってこと」
「そんな理由で神獣が契約獣になるのか…」
「そんな理由って…母さんのが酷いじゃん」
「あーあっちは飯に釣られたんだったか…神獣が…」
何とも言えない顔で続けるギルマスがちょっとかわいそうになってきた
でも話をやめる気はない

「とにかく、そういうわけだから登録頼む。ついでにクロムも」
「そうだな。ここで済ませるのがよさそうだ。クロムはレティシアナもだな?」
ギルマスはそう言いながら魔道具を取り出した
ギルドカードにリアンとクロムが登録されると一仕事終えたとでもいう様に大きなため息を吐く
終わったのを察したリアンが縮小化して俺の膝の上で猫の様に丸くなった
羊って丸くなって寝るのか…?
そんな疑問を持ったものの深く考えないことにした

「で、ここからがもう一つの報告」
「…」
向けられる恨めしそうな目に苦笑しながらさらに続ける
「今回のシープキングの依頼の事でリアンと話してたら、角だけなら定期的に回収できそうなことが分かった」
「…は?」
首を傾げるギルマスに俺はリアンから聞いた話を伝えた
そしてこれから父さん達に相談してからコーラルさんにもそのことを伝えることもついでに話す
「…なるほどな。そういう事情があるもんなんだな」
「俺も驚いた」
「まぁ何にしても国に投げてくれた方が俺の精神的にも助かる。Aランクの素材が森に入るだけで山ほど入手できるなんて事には直接関わりたくないからな」
「やっぱそういうもん?」
「当たり前だろうが。その辺の冒険者に投げれる依頼でもないし、回収したところで管理が面倒すぎる」
「まぁそうなるか」
高ランク素材の大量入手
広まれば値崩れするだけでなく無謀に森に入って命を落とす低ランクの馬鹿が激増することだろう
冒険者の間ではどこからとなく情報が流れるものだしな
出所を隠したとしても貴族の密偵やそれに近い者が調べに来るだろうし、そこからバレればまた面倒なもめごとが起きることも想像に難くない

「とりあえずギルド用に10本、キアナさん預けといたから」
それを商会におろすのか貴族に仕入れの倍以上の高額で売りつけるのかはギルマス次第だろう
ひょっとしたら一部を自分で買って武器作る可能性もありえるか
こう見えてギルマスも剣主体で戦う元Aランク冒険者だしな
そのへんは好きにしてくれればいいことだけど

「お前のそういうところはサラサにそっくりだな」
「そうかな?」
「ああ、オークションの時の肉の差し入れなんかもそうだがな」
『あれは美味かった』と言って豪快に笑うギルマスに苦笑する
おすそ分け、根回し的な感覚は確かにこの世界では珍しいのかもしれない
そういやまだレティにもちゃんと説明してないんだっけ
改めて思い出しながら俺達はギルドを後にした
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

低利貸屋 レイヴン ~ 錬金?いや、絶対秘密だが増金だ 

おーぷにんぐ☆あうと
ファンタジー
スキルという能力を日常的に使用する世界で、主人公が持つスキルは、黙っているだけでお金が増えるという飛んでもないスキル。 しかも、購入費、修繕費、治療費。この世で値段がついているものは、物だろうと怪我だろうと病気だろうと何でも買い取れる派生スキルも持っていた。 普段は、金貸しを生業としている、そんな彼にも秘めた目的がある。 その目的を達成するために、相棒クロウとともに今日も冒険者を相手に商売をする。 お金を使った派生スキルを活用し、立ち塞がる敵を吹き飛ばしていく。そんなお話です。 尚、本作はカクヨムさまにも掲載しています。

自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹
ファンタジー
家族と一緒に初めて王都にやってきたソーマは、王都の光景に既視感を覚えた。自分が作ったゲームの世界に似ていると感じて、異世界に転生した事に気がつく。 自作ゲームの中で作った猫執事キャラのプティと再会。 やっぱり自作ゲームの世界かと思ったけど、なぜか全く作った覚えがない乙女ゲームのような展開が発生。 何がどうなっているか分からないまま、ソーマは、結構マイペースに、今日も魔道具制作を楽しむのであった。 第1章完結しました。 第2章スタートしています。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

お飾り妻は離縁されたい。「君を愛する事はできない」とおっしゃった筈の旦那様。なぜか聖女と呼んで溺愛してきます!!

友坂 悠
ファンタジー
この先はファンタジー色が強くなりすぎて恋愛ジャンルではどうかとの思いもあって完結させていましたが、ジャンルを移し連載再開することにしました。 よろしくお願いします。 「君を愛する事はできない」 新婚初夜に旦那様から聞かされたのはこんな台詞でした。 貴族同士の婚姻です。愛情も何もありませんでしたけれどそれでも結婚し妻となったからにはそれなりに責務を果たすつもりでした。 元々貧乏男爵家の次女のシルフィーナに、良縁など望むべくもないことはよく理解しているつもりで。 それでもまさかの侯爵家、それも騎士団総長を務めるサイラス様の伴侶として望んで頂けたと知った時には父も母も手放しで喜んで。 決定的だったのが、スタンフォード侯爵家から提示された結納金の金額でした。 それもあって本人の希望であるとかそういったものは全く考慮されることなく、年齢が倍以上も違うことにも目を瞑り、それこそ両親と同年代のサイラス様のもとに嫁ぐこととなったのです。  何かを期待をしていた訳では無いのです。 幸せとか、そんなものは二の次であったはずだったのです。 貴族女性の人生など、嫁ぎ先の為に使う物だと割り切っていたはずでした。 だから。縁談の話があったのも、ひとえに彼女のその魔力量を買われたのだと、 魔力的に優秀な子を望まれているとばかり。 それなのに。 「三年でいい。今から話す条件を守ってくれさえすれば、あとは君の好きにすればいい」 とこんなことを言われるとは思ってもいなくて。 まさか世継ぎを残す義務さえも課せられないとは、思ってもいなくって。 「それって要するに、ただのお飾り妻ってことですか!?」 「何故わたくしに白羽の矢が立ったのですか!? どうして!?」 事情もわからずただただやるせない気持ちになるシルフィーナでした。 それでも、侯爵夫人としての務めは果たそうと、頑張ろうと思うのでしたが……。 ※本編完結済デス。番外編を開始しました。 ※第二部開始しました。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~

桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。 両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。 しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。 幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。

公爵令嬢はだまっていられない!

西藤島 みや
ファンタジー
目が覚めたら異世界だった、じゃあ王子様と結婚目指して…なんてのんびり構えていられない!? 次々起きる難事件、結局最後は名推理?巻き込まれ型の元刑事…現悪役令嬢、攻略対象そっちのけで事件解決に乗り出します! 転生ものですが、どちらかといえばなんちゃってミステリーです。出だしは普通の転生物、に見えないこともないですが、殺人や詐欺といった犯罪がおきます。苦手なかたはご注意ください。

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

処理中です...