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112.呼びだし

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9月に入り夜が少し涼しくなってきた
そうなると出たくなるのが屋上だったりする
俺はレティに声をかけて屋上でエールを飲むことにした

「風が気持ちいいね」
レティの言葉通り吹き抜けていく風は少し前の熱風とは違って心地いい冷たさだった
ベンチの前に簡易のテーブルを取り出すと、その上にエールやつまみになりそうなものを適当に並べた
「ほら」
「ありがと」
グラスに入れたエールはヒンヤリしていてさらに気持ちいい
こんな風に2人で他愛ない話をしながらエールを飲むのは別荘に行った頃からの習慣だ
これまではリビングでみんなが飲み始めると、俺達は大抵部屋に戻って2人で飲んでいた

「これからしばらくは晴れた日は屋上だな」
「さそうだね。景色もいいし…」
目の前には町の灯りが広がっている
といっても小さな町だからそれほど多くは無いんだけどな
それでも毒々しさのない淡い光を見てると不思議と心が穏やかになる

「うぉっ?」
何かが勢いよくぶつかってきたのはそんな時だった
俺の胸の辺りに体当たりするように飛び込んできた『何か』
敵意がないだけに気付くことも避けることも出来ずに、そのまま衝撃と共に受け止める羽目になったわけだが…
「いて…」
結構な衝撃で一瞬息が詰まった
「大丈夫?」
突然の事にレティもアタフタしている
「大丈夫だけど…妖精?」
ぶつかったせいかそのまま転がる様に膝の上に落ちたのは風の妖精だった
『シア…!』
泣きそうな妖精の声にただ事ではない何かを感じる

「どうした?」
『助けて!友達を…助けて!お願い!』
懇願する妖精に否やはない
何があったのかはわからない
でも俺なら何とかできると思ってここまで来たのなら出来る限りのことはする
「俺はどうしたらいい?」
『一緒に…来て?』
伺う様に俺を見上げていう妖精の顔は不安だと物語っていた
「了解。ただしレティも一緒だぞ?」
『うん』
その返事を聞いて、ちょっと散歩してくると父さん達に声をかけてからレティと共に外に出た
結構なスピードで先導するように飛ぶ妖精を追いかけてたどり着いたのは洞窟の中だった
その中にはたくさんの妖精が集まっていた
そこには俺の見慣れた陽気な妖精の雰囲気が欠片も存在しない
じっとしたままただ一か所を見守る様に集まってるように見えた

「一体何が?」
不安そうなレティの肩を抱き寄せる
レティには小さい光の玉が大量に浮いてるようにしか見えないだろうから余計に不安なはずだ
『シア呼んで来た』
俺を呼びに来た妖精がそう言うと妖精達が道を開ける様に移動した
「っ…!」
そこにはちゃんとした姿は分からないけど、欠けて半月状になった弱々しい光をかすかに灯す光の玉がいた
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