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107.薬屋

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ルーシーさんは一通り説明を終えるとお茶を出してくれた
「ケイン、成人して薬師になりたいと思ったら家に来な。鍛えてやる」
「本当?本当に僕を弟子にしてくれるの?」
「嘘なんてつかないよ。残念ながら私に跡継ぎはいないからね、ケインのようにどん欲に知識を求めるなら育て甲斐もある」
「シア聞いた?」
「ああ聞いた。ルーシーさんは本当にいいのか?この様子だとあと5年あるとはいえケインは確実にここに来る」
「望むところだ。息子が使ってた部屋もあるから住む場所も食事の心配もいらないさね」
随分好待遇だ
ギルドと商会が取引してるなら人柄も問題ないだろう
何より母さんたちの事を知ってるならなおさらだ

「それまでに気になることがあったら手紙を送ってもいい?」
「それは構わないが手紙なんて書けるのかい?」
「書けるよ。シアが旅に出てる間、文字を書く練習も兼ねていっぱい書いたんだ」
「それはえらいね?ひょっとして計算も出来たり…」
「出来るよ?」
「これは楽しみだ。今すぐにでも来てもらいたくなるねぇ」
「ルーシーさん…」
本気にするからやめてくれ
情緒不安定で俺から離れない状況ではまず無理だ

「今はまだ家に居たい。でも一人で大丈夫だって思えるようになったら来てもいい?」
ケインのその言葉に俺はレティと顔を見合わせていた
自覚がある事に驚いた
「自分で分かってるのはいいことだね。ならケインが自分で大丈夫だと思えて、サラサ達に許可してもらえたらくればいい」
「わかった!」
「シア、私の方からもサラサに手紙を出しておくよ」
「それは助かる」
母さんたちの子供への愛情は重い
ケインが勢いで話せばトラブルになる未来しか見えないからな

「さて、そろそろギルド前に戻るぞ」
「お昼?」
「ああ、お昼だ」
「何か用事があるのかい?」
「弟妹と一緒に飯を食う約束をしてるんだ」
「そうかい。それは残念だね」
ひょっとしてケインと食いたかった感じだろうか

「シア、ボクお昼の後もここに来てもいい?ルーシーさんともっとお話ししたい」
「それはいい考えだね?シア、どうだろうか?」
ルーシーさんも乗り気だ
「そうだなぁ…俺達はケインを送り届けて町をぶらつくけどそれでもいいなら」
「…わかった。でも迎えに来てくれるよね?」
ケインは少し戸惑い、考えてからそう尋ねてきた
「流石に一人で宿に戻れとは言わないさ」
「ならボクは後でもう一度ここに来るね。リトスも一緒でもいい?」
「むしろリトスは一緒にいてくれ」
ここで何かがあるとは思わないが保険だ
ルーシーさんもリトスを可愛いと思ってくれてる感じだし問題はないだろう
『わかったー。ぼくケインといるー』
「頼むな」
『うん』

「じゃぁルーシーさん、一旦昼飯食ってからもう一回連れて来るんで」
「ああ、楽しみにしてるよケイン」
すっかりなじんだ二人にケインがここに来る日はそう遠くないのかもしれないと思うと少し寂しい感じがした
「ケインがシアのことを大好きなのには変わりないと思うよ?」
小声で俺だけに聞こえる様に言ったレティの言葉に苦笑する
「そうだな。情緒不安定なままよりずっといいしな」
自分に言い聞かせるように言いながら気持ちを切り替えてギルドに向かった
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