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104.隣町へ

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翌朝俺達は家でコーラルさんが来るのを待っていた
こっちから行かなくていいのか聞いたところ
「あいつはこの家に来るのが好きらしくてな。護衛の時はいつも迎えに来る」
カルムさんからそう返ってきた
確かに事あるごとに家に来る
それこそリビングに居ても誰も気にもかけない程度には
マリク達みたいに時々帰って来る家族の扱いとさほど変わらない当たり何とも言えないが…

「やあ、待たせたね」
コーラルさんはやってくるなりそう言った
「ケインが『無限』と同行してくれるそうだね」
「僕…一緒に行ってもいい?」
ケインはコーラルさんを真っすぐ見て尋ねた
「ふむ。一つだけ条件がある」
「何?」
「道中、シアの言うことを聞くこと。それが約束できるなら許可しよう」
「約束する!」
即答だった
元々ケインが俺の言うことを聞かないなんてことはあまりない
しいて言えば俺と離れることに関してわがままを言うことくらいだろう

「良かったな」
ケインの頭をなでると嬉しそうな笑みが返ってきた
「では向かおうか」
「ああ。行ってくる」
コーラルさんに頷き皆に向かって声をかける
「気を付けてね」
「シャノンは買いすぎないように」
「うるさいー」
「ルークは羽目を外しすぎないようにな」
「僕流石にそこまで見境なくないと思うんだけど…」
「シア、レティシアナもケインをお願いね」
「ああ」
「わかりました」
口々にかけられる声に答えながら家を出る

「シャノンとルークは前方頼むな」
「はーい」
返事するなり先に荷馬車に乗り込んだ
幌付きだから雨が降っても安心だ
「ケインは俺の隣な」
「うん!」
後ろべりにレティと向き合う様に座ると内側にケインを座らせる
他に荷馬車に乗っているのはスチュアート家の騎士4人だ
ルークとシャノンは早速騎士達と話を始めた

「馬車にはコーラルさんと従者以外誰が?」
「メイドが1人と騎士1人が乗っております」
「あ、言葉は普通でいいんで」
何となくむず痒くてそう言うとホッとしたような笑みが返ってきた
まぁ、Aランクって言っても相手は20後半~30代半ばの騎士達だ
シャノン達の気安さもだがコーラルさん自体の気安さを考えてもどういう対応を取るべきか悩むところではあるか…?

「一応初めましての人もいるみたいだから自己紹介。俺はシア、『無限』のリーダーで主に魔法を使う。向かいにいるのがレティシアナ、障害物がなければ魔法、あれば体術がメイン」
「女性で体術とは珍しい」
思わず零された言葉にレティは苦笑する
まぁ、一見そんな風には見えないしむしろ体術なんて大丈夫なのかと心配にもなるだろう

「ルークは剣、シャノンは補助魔法を使う。最後大目ににこいつはケイン。俺達が長い間家を空けてたせいで情緒不安定気味なんだ。何かあってもこっちで対処するから大目に見てもらいたい」
「確かにずっとシアに引っ付いてるな。まぁ隣町までは魔物の心配は少ない。賊の対処さえなければ問題ないだろう」
「高ランクの冒険者崩れがいなければいいんだがな」
確かにその通りだ
冒険者資格をはく奪された元高ランク冒険者はその辺の魔物よりも厄介だ
力がある上に頭も使う
しかもはく奪されるほどの馬鹿さも持ち合わせていると来れば言わずもがな…

「もし賊が出た時は可能なら一旦固まってもらいたい」
「なぜだ?」
「まとめて補助魔法をかけるため。勿論そんな余裕がない時は気にしなくていい」
「了解した。補助魔法などかけられたことがないからピンと来ないが、余裕があれば出来るだけ固まろう。全員では無理でも2~3人で固まるくらいなら可能だろう」
「助かるよ」
思いのほか理解してくれるのが早くてホッとした
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