上 下
226 / 350
86.旺盛な食欲

2

しおりを挟む
「レティシアナはシャノンよりも筋がいいみたいね」
「え…っと?」
「シャノンと比べるのはどうかと思うけど?」
困惑するレティに苦笑しながら母さんに返す
シャノンは壊滅的だから比較対象には向かない
アイツが出来るのは串焼きだけだからな
しかも味付け一切なしのぶつ切りした肉を串に刺しただけの代物だ
味覚は悪くないはずなのにを平気で食えるのが俺には理解できない

「シャノンの料理スキルってどうにもならないものなのか?」
「どうかしらね。あの子、端から丸投げだから何とも言えないわ。好きな人でもできて、その人に作ってあげたいとか思い始めたら変わるかもしれないけど」
「…」
俺とレティは顔を見合わせる

「シャノンの場合、相手に作ってってねだってそう」
「同感」
レティの言葉に思わず頷いた
うん。期待は出来なさそうだ
そんな俺達を母さんが生暖かい目で見てることに、この時の俺は気付いてなかった

「それにしてもすごい量」
既に焼きあがったハンバーグは4つの大皿に小山になっている

「シャノンとルークの食欲がこの家での普通だからな」
「え?」
「バーベキューでも皆散々食ってたろ?」
「言われてみれば…でもシアはそんなに食べないよね?」
「ここでは俺と母さんが特殊?」
俺は母さんを見る

「そうね。小さい子たちでも私やシアよりたくさん食べるわ」
「単純に俺も母さんも…まぁレティもだろうけど、ホットドッグとハンバーガー1個ずつあれば満足だろ?」
「うん」
「ケインやスカイくらいのチビ達でも2個ずつは軽く食う」
「あの小さい体で?」
「ああ。で、他はチビ達の倍以上」
「…」
レティが固まった

『シアーごはん』
カーロがそう言いながらすり寄ってきた

「おはよカーロ。昨日と同じくらいでいいのか?」
『うん』
その答えに俺はサンドイッチを取り出した

「カーロもたくさん食べるのね」
その量を見てレティが諦めたように言う

『シアとサラサのごはんおいしいから』
「それは分かるわ。これまで食べたことないものも一杯だし」
『レティシアナもシアのご飯好き?』
「ええ。好きよ」
満面の笑みで即答された
餌付けした覚えはないんだけど…してないよな?
何故かちょっと不安になった

「おはよ~」
ヘンリーが起きてきたのを皮切りに続々と起きて来る

「お、レティシアナも手伝ってくれてるのか?」
トータさんが尋ねながら出来上がっているハンバーガーを取っていく

「手際がいいから助かっちゃったわ」
「そうなのか?」
「ええ。シアと話しながら作業してたから慣れてるんでしょうね」
「料理する人手が増えるのは有り難いわね~サラサちゃん変わるわ」
ナターシャさんが母さんとバトンタッチした

「サラサ、シエラを頼む」
「はーい」
父さんからシエラを抱き受けた母さんはそのままソファーに向かう
手の空いた父さんはホットドッグやハンバーガーが大量に乗った皿をリビングに運び出していた
それを見てチビ達が飲み物を用意する
食べ始めると皿の上の山はどんどん小さくなっていった

「ハンバーガー!」
ケインが起きてくるなり手に取って食べ始めた
順調に食いしん坊になっているらしい

「こらケイン、先に挨拶だろ?」
「う…おはよ。いただきます」
「ふふ…おはようケイン。よくできました」
母さんがそう言いながら笑う
こんなやり取りに俺達が日常に戻ってきたことを実感するくらいには俺も気を張りつめていたらしい

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられ令嬢は王子のお気に入り

怜來
ファンタジー
「魔力が使えないお前なんてここには必要ない」 そう言われ家を追い出されたリリーアネ。しかし、リリーアネは実は魔力が使えた。それは、強力な魔力だったため誰にも言わなかった。そんなある日王国の危機を救って… リリーアネの正体とは 過去に何があったのか

長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。

蜜柑
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。 妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~

桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。 両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。 しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。 幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。

処理中です...