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82.帰郷

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「あ、おいシャノン?」
家が見えた途端走り出したシャノンに俺とルークは顔を見合わせ苦笑する

「ただいまー!!」
シャノンの駆け込んでいく声を聞きながら、自然と俺達の歩くスピードも速くなる
でもその結果…

「レティ?」
1人距離を置くレティに声をかけると不安そうな表情を浮かべていた
そりゃそうか
突然他人の家に行くんだから

「大丈夫だ」
俺は立ち止まってレティを待つ
「レティがパーティーに加わったことも、一緒に連れて帰ることもちゃんと伝えてあるから」
「でも…」
それでもしり込みするレティが何かを言おうとしたタイミングでシャノンの声が聞こえてきた

「シア!レティ!早く!」
「ほら」
さし出した手を掴んだレティの手は少し震えていた
それに気づかないふりをして引き寄せるとそのまま家に向かう
玄関の奥には父さん達の姿が見えた

「ただいま」
「お帰りなさいシア。それに…」
母さんがレティを見る

「手紙で知らせてただろ?レティシアナだ」
「よ、よろしくお願いします!」
レティは勢いよく頭を下げた

「ふふ…そんなにかしこまらないで?自分の家だと思ってくつろいでくれていいからね」
「そうよ。まぁ人数が馬鹿みたいに多いから名前を覚えるのは大変かもしれないけどね」
そう続けたのはナターシャさんだ

「とにかく入ってゆっくりするといい」
父さんがそう言って先に入っていくとケインが飛びついてきた

「シアお帰り!」
「ああ、ただいま。お前大きくなったな?」
「来月には10歳だよ?」
そう言えばそろそろ誕生日だったか

「そうだな。じゃぁ誕生日に何が欲しいか考えとけ」
「何でもいい?」
「ああ、いいぞ」
そう答えると母さんの元に走って行った

「来いよ」
まだ立ち止まっているレティを促し中に入る
懐かしいリビングには皆が勢ぞろいしていた
文字通り皆だ
マリク達も、バルドさん達も当然の様に揃っている
口々にかけられる『お帰り』と『ようこそ』にレティはただ驚いていた

皆にレティを紹介するとなぜか俺の彼女だと思い込んでる感じがしたけど、何も言われてないのに否定するのもどうかと思ってとりあえず放置
当のレティは自己紹介された皆の名前を覚えようと必死だった

リトスを紹介するとチビ達が飛びついた
リトスも大喜びでチビ達と走り回っている
旅の間一緒に走り回ってやったりはしてなかったから仕方ない

「この子がシエラよ」
母さんが赤ん坊を抱いたままやって来る
旅の途中で生まれた一番下の妹だ
そう言えばまた家も大きくなってたような気がする
最初にここに越してきた時より倍くらいの大きさにはなってるはずなんだけどな…
まぁ、独り立ちしたマリクたちの部屋でもそのまま置いてある時点で当然と言えば当然か?

「かわいい…」
レティがのぞき込むようにしてそう零すと、シエラがレティに向かってその短い手を精一杯伸ばして見せる
「抱いてみる?」
「…いいんですか?」
「もちろんよ」
戸惑いながら尋ね返すレティに母さんは『当然でしょう?』とでもいうように返していた
ゆっくりとシエラをレティに渡すとシエラは嬉しそうに笑い声をあげる

「珍しいわ。シエラはちょっと人見知りする子なんだけど」
「そうなのか?全然そんな感じはしないけど…」
レティの腕の中から伸びきった俺の髪を引っ張っている姿からは全く想像できない
因みに俺の髪は旅の間にかなり伸びた
何度も切ろうとしたけど、リトスが嫌がったから切れないままになってるだけなんだけどな

俺達は旅の間の出来事を根掘り葉掘り聞かれながら久々に賑やかな時間を過ごした
煩いと思ったこともあるこの賑やかな空間が不思議なくらい心地よかった
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