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73.反撃

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翌朝、憲兵が来ていると宿主が呼びに来た
下に降りると2人の憲兵が待っていた
「双方の話を聞きたいので来てもらいたいのだが…」
「…わかった。あいつらに伝言たのめるか?」
「ああ。勿論だ」
俺は頷くと宿主にルークたちへの伝言を伝えて憲兵について宿を後にした

「こちらへ」
通されたのはこの町の集会所のような場所だった
すでにローガンとブリーナがいて、部屋の中には大勢の見物人がいた
俺達が3日かけてきた場所にローガンが既にいるってことは、ブリーナと一緒に来たってことだよな?
つまり手加減する必要はないってことか

「これはどういうことか聞きたいんだが?」
「ローガンは商人として名が知れている。その娘は君と正反対の主張をしてきた。白黒つけるために簡易裁判を行うことになった。私は領主としてその真偽を判断する」
正面に座っている男がそう言った
さて、この領主は屑かまともか…
そんな考えが頭をよぎったのは内緒だ

「なるほど。差し詰め俺は被告の立場というわけか?随分な扱いをされたもんだ」
「どちらが被告と決まったわけではない。ただ、主張が食い違った場合こういう形を取るのがこの町での通例でな」
挑発するように言うと俺を呼びに来た憲兵が申し訳なさそうにそう言った

「…二度と関わるなと言ったはずなんだがな」
ため息交じりに言いながら指示された場所に座る
正面を見るとブリーナが悔しそうにこっちを睨みつけていた
思い通りにならなかったら逆切れとか本当に勘弁してもらいたいもんだ

「彼、シアはブリーナが“自分の物にならないなら殺してやる”と言いながらナイフを持って襲ってきたと言っている。その前にブリーナは宿主に対して自分は彼の婚約者だと虚偽の申告をして、部屋を突き止めていたこともわかっている」
憲兵が淡々と話す

「違うわ!うちの屋敷に泊まった時にシアは私を襲って純潔を無理やり奪ったのよ!それなのに責任を取ろうともせずに逃げたから…だから私は…!」
ブリーナは泣き叫びながら訴える
それを見た憲兵たちが俺に厳しい目を向けてきた
いや、中立の立場のあんた達がそれで大丈夫なのか?

「これに対して反論はあるかね?」
領主は特に感情を乱すことなく訪ねてきた
「婚約を頼まれたのを断ったその日に部屋に侵入されたのは事実だ。でも俺はそのままローガンに付き返している。俺が襲ったというならその証拠を出してくれ」
襲ってないからそんな証拠あるはずがないけどな

「ローガン、彼の言う証拠はあるかね?」
「…その男は口止め料として大金と装備用の装飾品を脅し取っている!宿も受付を終えてるにも拘らずその日のうちに飛び出して行ったのが何よりの証拠じゃないか!」
ローガンが叫ぶように言った
それが必至で用意しただろう言い訳かと思うと呆れるな

「その脅し取ったという証拠はあるかね?」
口を挟んだのは領主だった
「それは…!しかし実際に大金を…白金貨30枚を奪って行ったんだぞ!」
「白金貨30枚…300万Gか…」
その金額にギャラリーがざわついた
まぁ平民の1月の平均収入は10万G~15万Gだからしかたないか
そんなことを考えていると領主が俺の方を見ていた

「普通の者にとっては300万Gは大金ではあるか…しかし奪ったという証拠はないようだな?」
「それは…でも状況証拠は揃ってるじゃないか!?領主は私よりこんな冒険者の小僧を信じるというのか?!」
目を吊り上げて叫ぶローガンの顔はかなり焦っているように見える

「愚策だな…」
俺のそのつぶやきは誰の耳にも届かなかった

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