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72.奇襲

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「次の町が近くて良かったよね」
ローガンの屋敷がある町を出た3日後、隣の町につくなりシャノンが言った
「ゆっくり休めると思ってたのがダメになると残念感半端ないもんなぁ」
「だよね?ルークもそう思うよね?」
しみじみ言うルークにシャノンが食いついた
「中々の曲者だったもんなぁ。あの親子」

「…女嫌いに拍車がかかりそうだ」
俺のつぶやきに2人は固まった
「何だよ?」
「…確かにシアって異常者に狙われること多いよね?」
「出発前の貴族もだっけ。今はもう元貴族だけど」
そういえばあれも強烈だった

「いい人に出会えるといいのにね?」
「同情したように言うな」
「だって普通じゃ考えられない人にばかり狙われてるし…」
「…」
何かうんざりしてきた
女難の相でもあるんだろうか?
確認してみたくても俺の周りに占い関連に明るい人はいない

「とにかく、今は気を取り直して屋台でも行かない?」
「そうだよ。上手いもん食べてゆっくり休もう。な、シア?」
「…そうだな」
相変わらず気を回すのが下手な2人を前にこれ以上何かを言う気にもならなかった
2人の望むまま屋台で飲み食いすると少しだけど気がまぎれた…のか?


その夜部屋のドアがノックされた
部屋は3部屋取ったから今は俺ひとり
ルークたちが尋ねてくるときはノックと共に声がかけられるから2人とは別の奴
「誰だ?」
声をかけても返事がない
返事がない時点で宿の人間という線も消えた
ただ、宿に泊まるとたまに酔っ払いが間違えて…ということもある
またその類かと思いながらひとまずドアを開けた

「…何でお前がここにいる?」
そこに立っていたのは二度と会わないはずのブリーナだった
「会いたかったからよ!お願いだから私のものになってよ!1回抱いてくれるだけでいいから!」
開口一番そう叫ぶブリーナに嫌悪感が沸き上がる
「断る。俺がお前の願いをかなえる義務はないしな」
「お願いだから!」
腕に縋りついてこようとしたのを躱すとブリーナは前のめりになり倒れ込んだ

「私の何がいけないのよ?」
目に涙をためてそう叫ぶ姿に可愛さの欠片も見いだせないから不思議だ
「全てだよ。この世に女が一人だけになっても絶対お前を選ぶことは無い」
「そんな…!?」
ブリーナの顔が激しく歪む
「…私のものになってくれないなら殺してやる!」
物騒な言葉と共に取り出したのはナイフだった
まったくもって怖くもなんともないけど黙って刺されてやるほどお人好しでもないんだよなーこれが

「私が…こんなに気にかけてあげてるのに!!」
「頼んでないしむしろ迷惑だ」
「黙れ!」
ブリーナの振り上げた手からナイフを叩き落として首に手刀を当てる
「っ…」
そのまま崩れ落ちたブリーナを縛り上げると引きずる様に受付まで連れてきた
放せだなんだと喚くせいで宿泊客が何事かと伺っていた
恥をかくのは俺じゃないからどうでもいい

「え…?」
宿主が驚いた顔をする
「この子あんたの婚約者じゃないのかい?」
その物言いからそう虚偽の申告をして通してもらったことが分かった
「婚約を望まれたが断った相手だ。望みどおりにならないなら殺してやると襲ってきた」
「何だって?!それは申し訳ないことをした…あんたに怪我は?!」
「何ともない。とりあえず憲兵に突き出してくれ。これはこいつが持ってきたナイフだ」
「すぐに呼びに行かせる。ひょっとしたら事情を聞かれるかもしれないが…」
「ああ、それは構わない。でも明日にしてもらってくれ」
頷いてブリーナを引き渡すと俺は部屋に引き返した
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