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63.大漁?
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「あ…」
「何だ?何かいい方法でも思いついたか?」
3人の目が一瞬でこっちに向いた
正直言ってちょっと恐怖を感じる
「いや、出来るかは分かんねぇけど…」
「何だ?」
「窒息させてインベントリに入れればいいんじゃないかと思ってさ」
「「「は?」」」
「とにかくやってみる」
俺は説明を求める視線から逃れる様に自分の視線を網に向ける
水面から結構な量の獲物が飛び出している
その周辺の空気を奪うイメージ
お陰でピチピチ跳ねていたのが動かなくなった
続いてインベントリに格納…やっぱ死んだ獲物だけが格納された
「これならいけそうだ」
「…いや、あー…うん。聞きたいことは山ほどあるがそれは後だ。シア、俺達はどうすればいいんだ?」
ルワードさんは流石というべきか?
現状何が優先されるのかをよく理解しているようだ
「網の負荷もあるから少しずつ持ち上げてくれ」
「少しずつ?」
「ああ。水面から出たのから窒息させて格納する」
その言葉に3人が顔を見合わせた
「とにかく、俺達は網をゆっくり引き揚げればいいってことだな?」
「ああ」
俺がニヤリと笑いながら返すと3人は頷いて引き上げにかかった
一定のペースで引き上げられる網に集中しながら俺は窒息させて格納するという作業を繰り返す
「引き上げた端から持ってかれるから網が随分軽いな」
「確かに…これじゃ普段より楽なくらいだ」
「だとしてもこの量は異常だろ」
その言葉が重くのしかかる
だって俺は間違いなくエンドレス並みの大漁を望んだからだ
でもここは迷宮じゃなく海で、対象は魔物じゃない
どこかで俺のせいじゃないと思いながら、俺のせいだと確信してる自分もいる
「まぁほら、この1回だけだろうし偶然ってことで…」
「偶然にしてもとんでもない量なんだよ!一体何が起きたかさっぱりわからん」
「この後もこの量だったらびっくりだけどな」
その言葉に俺は渇いた笑いを返す
かなりの確率でこの後もこの大漁になるとどこかで確信していた
そしてその予想は俺の望みに反して現実のものになった
「…で?」
1日で5日分以上の収穫をして戻ってくるなりルワードさんは俺に聞いてくる
どこまで話せばいいのか正直悩んでいた
「…まぁお前さんが訳ありだってのは何となく理解してる」
「へ?」
「領主の件もあったしな。それにその歳でAランクってのも、ただ者じゃない証拠だろ?」
「…」
「だから話せないことは無理に話さなくてもいい。俺が聞きたいのは一つ。今日の大漁はお前が原因か?」
「…多分」
俺は頷いた
でもこれ以上をどう話せばいいのかが分からない
「…わかった。原因がお前ならこの先船に乗った時に同じことが起こらないように対処できるんだろ?」
「多分大丈夫だ」
俺がエンドレスを、エンドレスのような大漁を望みさえしなければ問題ないはず
これまでの9回は問題なかったことを考えれば、その9回との違いはその点だけだから
「よし。じゃぁ1回分だけ向こうに出してくれ」
「え?」
「後の4回分はお前の取り分でいい」
「でもそれじゃ…」
「残念ながらそこまで捌けないし、どうせ売れ残る」
「あ…」
確かにここからどこかにおろしてるわけじゃない
町の人間と、精々近隣の町の人間にしか需要がない以上多すぎた分は破棄するしかなくなるだろう
「それでも気になるなら今日の晩飯はお前の作ったものを食わせてくれ」
「ルワードさん…」
「お前があれだけ楽しそうな顔をしたんだ。今日捕れた獲物は上手い飯になるんだろう?」
「あ、あぁ。そういうことなら皆の分を用意する。この町で世話になってる礼も兼ねて」
それでも俺の利益の方が明らかにデカい
心のなかで感謝しながら腕によりをかけて料理を振舞うことにした
「何だ?何かいい方法でも思いついたか?」
3人の目が一瞬でこっちに向いた
正直言ってちょっと恐怖を感じる
「いや、出来るかは分かんねぇけど…」
「何だ?」
「窒息させてインベントリに入れればいいんじゃないかと思ってさ」
「「「は?」」」
「とにかくやってみる」
俺は説明を求める視線から逃れる様に自分の視線を網に向ける
水面から結構な量の獲物が飛び出している
その周辺の空気を奪うイメージ
お陰でピチピチ跳ねていたのが動かなくなった
続いてインベントリに格納…やっぱ死んだ獲物だけが格納された
「これならいけそうだ」
「…いや、あー…うん。聞きたいことは山ほどあるがそれは後だ。シア、俺達はどうすればいいんだ?」
ルワードさんは流石というべきか?
現状何が優先されるのかをよく理解しているようだ
「網の負荷もあるから少しずつ持ち上げてくれ」
「少しずつ?」
「ああ。水面から出たのから窒息させて格納する」
その言葉に3人が顔を見合わせた
「とにかく、俺達は網をゆっくり引き揚げればいいってことだな?」
「ああ」
俺がニヤリと笑いながら返すと3人は頷いて引き上げにかかった
一定のペースで引き上げられる網に集中しながら俺は窒息させて格納するという作業を繰り返す
「引き上げた端から持ってかれるから網が随分軽いな」
「確かに…これじゃ普段より楽なくらいだ」
「だとしてもこの量は異常だろ」
その言葉が重くのしかかる
だって俺は間違いなくエンドレス並みの大漁を望んだからだ
でもここは迷宮じゃなく海で、対象は魔物じゃない
どこかで俺のせいじゃないと思いながら、俺のせいだと確信してる自分もいる
「まぁほら、この1回だけだろうし偶然ってことで…」
「偶然にしてもとんでもない量なんだよ!一体何が起きたかさっぱりわからん」
「この後もこの量だったらびっくりだけどな」
その言葉に俺は渇いた笑いを返す
かなりの確率でこの後もこの大漁になるとどこかで確信していた
そしてその予想は俺の望みに反して現実のものになった
「…で?」
1日で5日分以上の収穫をして戻ってくるなりルワードさんは俺に聞いてくる
どこまで話せばいいのか正直悩んでいた
「…まぁお前さんが訳ありだってのは何となく理解してる」
「へ?」
「領主の件もあったしな。それにその歳でAランクってのも、ただ者じゃない証拠だろ?」
「…」
「だから話せないことは無理に話さなくてもいい。俺が聞きたいのは一つ。今日の大漁はお前が原因か?」
「…多分」
俺は頷いた
でもこれ以上をどう話せばいいのかが分からない
「…わかった。原因がお前ならこの先船に乗った時に同じことが起こらないように対処できるんだろ?」
「多分大丈夫だ」
俺がエンドレスを、エンドレスのような大漁を望みさえしなければ問題ないはず
これまでの9回は問題なかったことを考えれば、その9回との違いはその点だけだから
「よし。じゃぁ1回分だけ向こうに出してくれ」
「え?」
「後の4回分はお前の取り分でいい」
「でもそれじゃ…」
「残念ながらそこまで捌けないし、どうせ売れ残る」
「あ…」
確かにここからどこかにおろしてるわけじゃない
町の人間と、精々近隣の町の人間にしか需要がない以上多すぎた分は破棄するしかなくなるだろう
「それでも気になるなら今日の晩飯はお前の作ったものを食わせてくれ」
「ルワードさん…」
「お前があれだけ楽しそうな顔をしたんだ。今日捕れた獲物は上手い飯になるんだろう?」
「あ、あぁ。そういうことなら皆の分を用意する。この町で世話になってる礼も兼ねて」
それでも俺の利益の方が明らかにデカい
心のなかで感謝しながら腕によりをかけて料理を振舞うことにした
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