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55.吉報

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夕食後、いつものように俺の部屋で思い思いにくつろいでいた
「ねぇ、明日は休みにするんでしょう?」
「ああ、明日で1年も終わることだしな」
「家にいたら大掃除に追われてる時期だっけ?」
「そうそう。お母さんが毎年煩いんだよね」
「うるさいのはお前の部屋が汚すぎるからだろ?俺もルークもたいして言われてないぞ」
「え~」
シャノンは拗ねたようにソファにもたれ込んだ
12月の28日と29日は毎年大掃除の日
30日はみんなで1年の間にあった思い出話で盛り上がる
翌1日は新しい年の目標をみんなの前で発表するというのが恒例になっていた

「そう言う意味では今年はちょっと寂しいかな?」
「そうだな」
兄妹が多いだけでなく複数世帯の家にはたくさんの人がいる
その中に居るのが当たり前だっただけに、3人で過ごすというのはちょっと物足りない気もする

「カードくらい送るか」
「あ、賛成!」
「僕も書く」
『ぼくも』
「ん?」
リトスの言葉に思わず凝視してしまった

「リトスは文字書けないだろ?」
『うぅ…』
明らかにしょぼくれた感じで俺の指にしがみ付く
ついでに魔力を吸うあたり何とも言えないが…

「何?どうしたの?」
「リトスも書きたいんだと。でも字は書けないからな」
「なら足形とかは?」
少し考えていたルークが思いついたように言う

「お、それはいいかも」
『あしがた?』
「リトスの足の裏にインクを付けて紙にペタって押すんだ」
「きっと可愛い足形が取れるね」
『あしがた!おす!』
飛び跳ねながら言う姿は癒される

「せっかくだから皆で寄せ書きにしようよ」
「それいいな。こないだ貰ったの嬉しかったし」
誕生日に届いた皆からの寄せ書きのことだろう

「なら、リトスの両足にインクを付けて…」
『しあくすぐったい』
「ちょっと我慢な」
もがくリトスの足に何とかインクを付ける
「よし、リトス紙の上を好きに歩いてみ」
『わかった―』
リトスは紙の上をトテトテと歩く
自由に動き回ったおかげで模様の様に足形が付いていた

『できた?』
「ああ。いい感じだな」
「すっごい可愛い」
シャノンの喜びようにリトスも大はしゃぎだ
その紙に俺達は順にメッセージを書いていく

「完成!早く送ろ」
シャノンに急かされるように転移の魔道具を取り出した

「あれ?」
「どうかした?」
2人が覗き込んでくる

「何か来て…!」
俺は届いたカードを開いて固まった

「シア?」
「誰から?」
「父さんだ…妹が生まれたらしい」
「「ええ~?!」」
「29日の昼前…つまり今日の昼前に生まれて、名前はシエラだってさ」
「シエラ?」
「妹?」
「ただ」
「「ただ?」」
「左目が見えないっぽい」
俺がそう告げると2人は顔を見合わせて固まった

「左目に光が無いから多分見えないだろうって書いてある。それ以外は問題なさそうだけど」
「…そっか。でもお父さん達の事だから何とか方法見つけるよね?」
「それにたとえ片目が見えなくても大事な妹だし」
「そうだな。ちゃんと生まれてきてくれたこと自体喜ばしいことだ」
その気持ちは本当だ
そりゃぁ五体満足で生まれてくれた方がいいに決まってるけどな
でもそうじゃないからって何かが変わるわけじゃない
俺達はさっきの寄せ書きにシエラへのお祝いを付け足して母さんたちに送った

「帰る楽しみができちゃったね」
「何に興味持つか今から楽しみだよな。スカイは手芸、ケインは薬草だし…」
「冒険者だったら付きっきりで面倒見てあげるんだけどな」
「女はまだまだ少ないからな。シャノンの場合はルークがいたからマシだけどシエラが冒険者になったとしてもどうなるかは分からないな」
「そうだよねぇ…それは確かに一番困る問題」
「案外大丈夫かも?」
「え?」
「だって僕たちの時みたいにアランさんとトータさんのところにも子供ができる気がするし」
「そういや出る前にそんな話をした気がする。ミリアのとこもそのうち出来るだろうし、カルムさん達はまた養子取りそうだから下手したら近い年齢で5人か?」
「あはは!充分あり得る」
「スカイたちが寂しがってたから余計だよね?」
バルドさんとミリアが結婚して、その後に俺達が旅に出たから、短い期間にあの家から5人が出てしまった
そのせいで、スカイもケインもかなり寂しそうにしているのは手紙からひしひしと感じていた
俺達が帰る頃にどうなってるのか色んな意味で楽しみになってきた
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