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53.海
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シャノンが準備出来たタイミングでギルドに向かう
その道中で2人は当然の様に屋台で買い食いする
「コーヒー1つ」
「はいよ。砂糖とミルクはどうする?」
「いらね」
ブラックのまま受け取り再び歩き出す
宿から近い所にドリンク専門の屋台があるのはちょっとありがたい
「ギルドまでも結構近いし、いい場所にある宿だよね」
「そうだな。広さもあるし海も見えるしゆっくり出来そうだ」
「朝ごはんの量がもう少し多ければいうことないんだけどね」
「その分金やったろ?」
「まぁね」
シャノンはペロッと舌を出しながら笑った
「…ぅおっと…」
ギルドの扉を開けようとしたら勢いよく開いてコーヒーを落としそうになった
「悪い。大丈夫か?」
出てきた男が申し訳なさそうに聞いてくる
「大丈夫だ」
そう返すとホッとしたように表情を緩めて去って行った
「今の人カッコよかったね」
「そうか?」
「そうだよ!シアには負けるけど」
「俺と比べる意味が分からん」
俺は首を傾げながら中に足を踏み入れた
「朝だけあって人多いなぁ」
依頼ボードの前も人がひしめいていた
「シア見える?」
「ああ」
俺は比較的すいてる高ランクの方から依頼書を見ていく
「今日は受けないんでしょ?」
「何があるか確認するだけだ」
「ものと相場?」
「そういうこと。ある程度頭に叩き込んどいた方が効率いいからな」
「その辺のシアのセンスはお母さん譲りだよね」
そう言えば母さんは大抵のことを1回見聞きしただけで記憶してたっけ?
俺はそこまで記憶力良くないけどな
「よし、大体わかったから行くか」
一通り確認し終えると2人は既に話に花を咲かせていた
「わーい。海!早く行こ」
「そんな慌てていかなくても海は逃げないぞ」
「分かってるよ?でも楽しみなんだもん」
ワクワクしてるのを隠そうともしないシャノンは年相応の女の子に見える
「シャノンにとってはどっちがいいのかな?」
「ん?」
「普通の女の子として過ごすのも有なのかなって思ってさ」
ルークの言葉に再びシャノンを見る
「…まぁそれはシャノンが自分で考えることだな。冒険者を強制してるわけじゃないし」
「確かに強制はしてないね。実際ケインとスカイは冒険者になる気は全くないし」
「お前だって好きにしていいんだぞ?」
「僕は冒険者の自分が好きだからやめるつもりはないよ。それにやっとシアと戦えるようになったんだ。それを捨てるなんてもったいないことしないって」
照れ臭そうに笑いながら言うルークの言葉を俺はただ黙って聞いていた
「ずっとシアの背中を遠くから追いかけてたんだ。ようやく手の届く範囲でその背中を追える様になったんだよ?流石に追い越せる気はしないけど近い場所に並んで立ちたいと思ってるんだからな」
「ルーク…」
こんな風に思ってるなんて気づきもしなかった
「ルーク!シア!」
先に進んでいたシャノンが砂浜から呼んでいた
「行くか」
「うん」
頷き合ってシャノンの元に向かって足を速めた
「うわっ歩きにくい」
砂浜に入るなり足元が不安定になる
「サラサラだ…」
踏み込めば簡単に沈んでいく足に太陽の光を浴びた熱が伝わってくる
「靴の中砂だらけだな」
俺自身遠くから見たことはあっても近くまで足を運んだことは無い
仮に経験していたとしても、この世界と同じものとは限らないけど…
ざらざらになってきた靴を脱いでしまうと砂の感触がやけに心地よかった
「シアも脱いだんだ?」
そう言うシャノンの足元にも靴は無い
「水、滅茶苦茶冷たいよ?」
「冬だからな」
「そういうもの?」
「多分」
改めて聞かれると自信がなくなるのはなんでだろうな?
「潮風が気持ちいい」
「べた付くのはちょっと勘弁してほしいけどな」
「魔法ですぐ取れるからいいんじゃない?だってこのべた付きも海ならではなんでしょ?」
「まぁ確かにそうだけどな。リトスもこの風は大丈夫か?」
『だいじょうぶ』
「その頬ずりしてるってことは大丈夫って感じ?」
「ああ」
じゃれるような頬ずりをする時に悪い反応の時はない
「私もリトスに頬ずりされたい」
『これは、しあだけ』
「この頬ずりは俺にだけらしいぞ」
「残念」
ショボンとするシャノンに苦笑する
「これ何の匂い?」
尋ねたのはルークだ
「美味しそうな匂い。行ってみよ~」
シャノンに引っ張られるように俺達は再び歩き出した
その道中で2人は当然の様に屋台で買い食いする
「コーヒー1つ」
「はいよ。砂糖とミルクはどうする?」
「いらね」
ブラックのまま受け取り再び歩き出す
宿から近い所にドリンク専門の屋台があるのはちょっとありがたい
「ギルドまでも結構近いし、いい場所にある宿だよね」
「そうだな。広さもあるし海も見えるしゆっくり出来そうだ」
「朝ごはんの量がもう少し多ければいうことないんだけどね」
「その分金やったろ?」
「まぁね」
シャノンはペロッと舌を出しながら笑った
「…ぅおっと…」
ギルドの扉を開けようとしたら勢いよく開いてコーヒーを落としそうになった
「悪い。大丈夫か?」
出てきた男が申し訳なさそうに聞いてくる
「大丈夫だ」
そう返すとホッとしたように表情を緩めて去って行った
「今の人カッコよかったね」
「そうか?」
「そうだよ!シアには負けるけど」
「俺と比べる意味が分からん」
俺は首を傾げながら中に足を踏み入れた
「朝だけあって人多いなぁ」
依頼ボードの前も人がひしめいていた
「シア見える?」
「ああ」
俺は比較的すいてる高ランクの方から依頼書を見ていく
「今日は受けないんでしょ?」
「何があるか確認するだけだ」
「ものと相場?」
「そういうこと。ある程度頭に叩き込んどいた方が効率いいからな」
「その辺のシアのセンスはお母さん譲りだよね」
そう言えば母さんは大抵のことを1回見聞きしただけで記憶してたっけ?
俺はそこまで記憶力良くないけどな
「よし、大体わかったから行くか」
一通り確認し終えると2人は既に話に花を咲かせていた
「わーい。海!早く行こ」
「そんな慌てていかなくても海は逃げないぞ」
「分かってるよ?でも楽しみなんだもん」
ワクワクしてるのを隠そうともしないシャノンは年相応の女の子に見える
「シャノンにとってはどっちがいいのかな?」
「ん?」
「普通の女の子として過ごすのも有なのかなって思ってさ」
ルークの言葉に再びシャノンを見る
「…まぁそれはシャノンが自分で考えることだな。冒険者を強制してるわけじゃないし」
「確かに強制はしてないね。実際ケインとスカイは冒険者になる気は全くないし」
「お前だって好きにしていいんだぞ?」
「僕は冒険者の自分が好きだからやめるつもりはないよ。それにやっとシアと戦えるようになったんだ。それを捨てるなんてもったいないことしないって」
照れ臭そうに笑いながら言うルークの言葉を俺はただ黙って聞いていた
「ずっとシアの背中を遠くから追いかけてたんだ。ようやく手の届く範囲でその背中を追える様になったんだよ?流石に追い越せる気はしないけど近い場所に並んで立ちたいと思ってるんだからな」
「ルーク…」
こんな風に思ってるなんて気づきもしなかった
「ルーク!シア!」
先に進んでいたシャノンが砂浜から呼んでいた
「行くか」
「うん」
頷き合ってシャノンの元に向かって足を速めた
「うわっ歩きにくい」
砂浜に入るなり足元が不安定になる
「サラサラだ…」
踏み込めば簡単に沈んでいく足に太陽の光を浴びた熱が伝わってくる
「靴の中砂だらけだな」
俺自身遠くから見たことはあっても近くまで足を運んだことは無い
仮に経験していたとしても、この世界と同じものとは限らないけど…
ざらざらになってきた靴を脱いでしまうと砂の感触がやけに心地よかった
「シアも脱いだんだ?」
そう言うシャノンの足元にも靴は無い
「水、滅茶苦茶冷たいよ?」
「冬だからな」
「そういうもの?」
「多分」
改めて聞かれると自信がなくなるのはなんでだろうな?
「潮風が気持ちいい」
「べた付くのはちょっと勘弁してほしいけどな」
「魔法ですぐ取れるからいいんじゃない?だってこのべた付きも海ならではなんでしょ?」
「まぁ確かにそうだけどな。リトスもこの風は大丈夫か?」
『だいじょうぶ』
「その頬ずりしてるってことは大丈夫って感じ?」
「ああ」
じゃれるような頬ずりをする時に悪い反応の時はない
「私もリトスに頬ずりされたい」
『これは、しあだけ』
「この頬ずりは俺にだけらしいぞ」
「残念」
ショボンとするシャノンに苦笑する
「これ何の匂い?」
尋ねたのはルークだ
「美味しそうな匂い。行ってみよ~」
シャノンに引っ張られるように俺達は再び歩き出した
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