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52.食欲

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昨日は疲れていたのか母さんに手紙を送ってすぐに睡魔に負けたらしい
テーブルが食い散らかされたままだった
まぁすぐに片付くからいいけどな

『しあ、おはよー』
身体を起こすとリトスが肩によじ登ってきた
「おはようリトス。ちゃんと寝れたか?」
『ねれた。でもおなかすいた』
「じゃぁ朝ごはん食べに行くか」
『うん』
リトスを乗せたまま下の食堂に向かう

「いらっしゃい」
「あ、これ見せろって言われてんだけど」
「長期のお客さんね。好きな席にどうぞ」
声をかけてきた女性にカギを見せると笑顔でそう言われた
窓際の席が空いてたからそこに座ることにした

「お待ちどうさま」
さっきの女性がそう言いながら食事の乗ったトレイを置いた

「主人から聞いてたまげたよ。成人したてでAランクだって?」
「まぁ」
「あとの二人は弟妹かい?」
「ああ。1つ下の双子だ」
「そうかい。仲のいい兄弟で羨ましいい限りだね。うちのなんて顔を合わせりゃ喧嘩だ」
豪快に笑いながら女性は言う

「あぁ、私はサイラって言うんだ。何かあったらいつでも言っといで」
「…どうも」
俺が頷くのを見てサイラさんは去って行った

「シア、もう起きてたんだ?」
ルークが入り口でサイラさんにカギを見せてから向かいに座った

「シャノンはまだ寝てるっぽい。全然動く気配がなかった」
「いつものことだ」
「たしかに。リトスうまいか?」
『おいしー』
今リトスがかじってるのはバターの付いたトーストだ
好物は果実らしいけどそれ以外のものも大概食べる驚くほどの雑食だ

「はい、お待たせ」
サイラさんが同じようにトレイを持ってきた
「兄弟そろってイケメンだわ。モテるだろう?」
「おかげさまで?」
「言うねぇ…そうだ、ミーコって子にだけは気を付けなさいね。あの子は観光客と見たらすぐに目を付けて色々買わせようとするから」
「買わせるだけ?」
「ならいいんだけどね、婚約者が厄介なのよ。ここの領主の息子だから」
「…」
「それがまたやきもち焼きでね、ミーコも異性との距離が近いもんだからトラブルだらけなんだ」
だから気を付けな、そう言ってサイラさんは入ってきた客を迎えに行った

「分かってるな?ルーク」
「そんなトラブルメーカーとは関わらないようにするよ。でもその為にもシアは彼女作った方がよくない?」
「何でそうなるんだよ?」
「断る口実」
「そんなのいなくても断る」
「シアのは“断る”じゃなく“ぶちのめす”って感じじゃん」
ルークが呆れたように言う

「二度と寄ってこなきゃそれでいいだろ」
「…できればもう少しお手柔らかに」
「頼んでもないのに勝手に寄って来る女に気を使う意味が分からん」
残念な顔をされた
何でだ?
考えを変える気がないから別にいいけどな
丁度俺が食べ終えたタイミングでシャノンが降りてきた

「2人共早いよ?」
「お前が遅いんだよ」
「いつものことだけどな」
俺達の言葉にシャノンは頬をふくらます

「あらあら、あなたも随分可愛いのねご両親は美男美女かしら?」
サイラさんが少し驚いたような顔をしていた

「おばさん当たり!お父さんすっごくカッコいいの。お母さんは綺麗だよ」
「やっぱりそうかい?羨ましいねぇ…」
そう言いながら去っていくサイラさんを見送りシャノンは食事を始めた

「ねぇルーク、足りる?」
「いや。全然」
「だよね?シアは?」
「俺は充分だ。お前らにはこれをやる」
銀貨を10枚ずつ渡す
銀貨1枚が1,000Gだから10,000Gになる
宿の朝食が50Gだから200食分くらいか
少なくても3人前、下手したら5人前は平らげる2人の多少の足しにはなるだろう

「ちなみに3か月分だからな」
「やった。じゃぁこれで屋台で食べる」
「僕も」
ルークはともかくシャノンのこのちっこい体のどこに入っていくのか謎だ

「よし、そろそろ行くか」
シャノンが平らげたのを見て立ち上がる

「ギルド行って海だよね?」
「ああ」
「じゃぁ準備したらシアの部屋行くね」
シャノンは階段を駆け上がって行った

「お前は?」
「僕はいつでも出れるからこのままシアの部屋」
そう言うルークに頷いて部屋に戻った
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