上 下
128 / 330
39.天然温泉

1

しおりを挟む
山の中の鬱蒼とした場所に差し掛かったとき独特の匂いが漂ってきた
「なんだこの匂い?」
ルークが顔を顰める
「こんな匂い初めて。シアは?」
「俺も知らない。でもこのルートで間違いはないんだよなぁ」
どうしたものかと一旦休憩しながら考えることにした

地図を広げて今居る場所を確認する
「少し戻ってこっちのルートってのも有だけどかなり迂回してるもんな」
指で辿ってみても3倍以上の距離がある

「もう少し進んでみて、どうしても無理そうならこっちの迂回ルートに変えるか」
「そうだね。これくらいならまだ問題はないし」
結局今よりも匂いが酷くなるようなら引き返そうということで落ち着いた

「あれ?2人共ちょっと待って」
いつものようにルークの開けた穴を塞ごうとして中に水が溜ってることに気付く

「どうしたの?」
「いや、底に水…いや、お湯か?」
「ほんとだ。湯気出てる」
同じように覗き込んだ2人も興味深々だ

「ひょっとして…シャノン鑑定だ」
「鑑定?あの水を?」
「ああ」
言いながら自分でも鑑定する

「えっとね、地中から湧き出した湯、だって」
「やっぱりな」
ちなみに俺の方にはこう表示されている

***
温泉
地中から湯が湧き出している現象や場所、湯そのもの
この一帯の湯には疲労回復の効果がある
地球ではその熱水泉を用いた入浴施設やそれらが集まった地域も一般に温泉と呼び、人工温泉と対比して「天然温泉」と称する場合もある
***

「風呂に入れるかもしれない」
「え?お風呂?本当に?」
「僕も入りたい」
2人の目が輝いた

この世界は風呂につかるという概念はない
でも母さんのお陰であの屋敷には風呂がある
俺達は子供のころから風呂につかるのが好きで、この旅の最大の不満は風呂に入れないことだったりする
さっきまでより足取りが軽くなった

「何かいるな」
うごめく気配
「4つ足の獣ではなさそう?」
「ああ。何か這いずり回ってる感じだな」
ほぼ同時に察知した魔物の気配

「1つだけど結構でかい?」
「魔力も高め」
『スクルト(防御力強化)』『マジックバリア(魔法耐性向上)』
シャノンがすかさず唱えた
この辺りの反応は随分早くなった

「来た!…って蛇?」
ルークが草陰から現れたそれを見て飛びのいた
蛇と言ってもかなりデカい
身体は直径30cmくらいある
その長さも5m以上
姿を完全に表してるわけじゃないから全長が分からない

「ファイアスネーク!Aランク!」
シャノンがいつものように情報を伝えて来る
「とりあえず頭狙う」
ルークがそう言いながら頭を切りつけた

「…は?」
完全に弾かれたな
ルークのあの剣を弾くなんて滅多にない

「何だよこの固さ」
「魔力乗せても無理か?」
「やってみる」
ルークは魔力を乗せて再び切りつける

「弾かれてはいないけど打撃にしかならない。あれじゃ大したダメージにはならないよ。シャノンの水か氷でやってみて」
「はーい…ぅわ…!」
シャノンのウォーターカッターが威嚇するために大きく開かれた口元からのど元に向かって水平に切り裂いた

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

番の拷

安馬川 隠
BL
オメガバースの世界線の物語 ・α性の幼馴染み二人に番だと言われ続けるβ性の話『番の拷』 ・α性の同級生が知った世界

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。

ふまさ
恋愛
 伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。  けれど。 「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」  他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

【完結】愛に溺れたらバッドエンド!?巻き戻り身を引くと決めたのに、放っておいて貰えません!

白雨 音
恋愛
伯爵令嬢ジスレーヌは、愛する婚約者リアムに尽くすも、 その全てが裏目に出ている事に気付いていなかった。 ある時、リアムに近付く男爵令嬢エリザを牽制した事で、いよいよ愛想を尽かされてしまう。 リアムの愛を失った絶望から、ジスレーヌは思い出の泉で入水自害をし、果てた。 魂となったジスレーヌは、自分の死により、リアムが責められ、爵位を継げなくなった事を知る。 こんなつもりではなかった!ああ、どうか、リアムを助けて___! 強く願うジスレーヌに、奇跡が起こる。 気付くとジスレーヌは、リアムに一目惚れした、《あの時》に戻っていた___ リアムが侯爵を継げる様、身を引くと決めたジスレーヌだが、今度はリアムの方が近付いてきて…?   異世界:恋愛 《完結しました》  お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

「食べ物ブログ」

黒子猫
エッセイ・ノンフィクション
美味しいなって思った食べ物を紹介したりする記事を書いてます。

【完結】おお勇者よ、死んでしまうとは情けない、と神様は言いました

かずえ
BL
名前 ユーゴー  職業 勇者 レベル1  魔王を倒した記憶あり  やる気なし 勇者ユーゴーは長い旅の末、魔王と相討ちで倒すことに成功した。やっと終われると思ったその時、おお勇者よ、死んでしまうとは情けない、と言う神様の声がして、気付けば十歳の、母が死んだ日に戻っていた。 もう一度魔王討伐に行くなんてとんでもない、今度は楽しいと思える人生を送りたいと思った勇者の話。

もしかすると私は、最愛の婚約者に騙されているのかもしれない

柚木ゆず
恋愛
※2月4日、再会編が完結いたしました。明日(2月5日)より、ザマァ編が始まります。  婚約者だった幼馴染エリオットに裏切られ、偶然出会った侯爵家令息のレオンに優しく慰められた子爵家令嬢のルシィ。彼女はその出来事が切っ掛けとなってレオンに恋をして婚約し、2人で幸せな毎日を過ごしていました。  ですが――。そんな彼女には、いつも違和感がありました。  レオン様と一緒にいると、何かが間違っている気がする。  そうして彼女はその違和感について考え始め、やがて真実を知ることになるのでした――。

転生したら乙女ゲームの世界で攻略キャラを虜にしちゃいました?!

まかろに(仮)
BL
事故で死んで転生した事を思い出したらここは乙女ゲームの世界で、しかも自分は攻略キャラの暗い過去の原因のモブの男!? まぁ原因を作らなきゃ大丈夫やろと思って普通に暮らそうとするが…? ※r18は"今のところ"ありません

転生することになりました。~神様が色々教えてくれます~

柴ちゃん
ファンタジー
突然、神様に転生する?と、聞かれた私が異世界でほのぼのすごす予定だった物語。 想像と、違ったんだけど?神様! 寿命で亡くなった長島深雪は、神様のサーヤにより、異世界に行く事になった。 神様がくれた、フェンリルのスズナとともに、異世界で妖精と契約をしたり、王子に保護されたりしています。そんななか、誘拐されるなどの危険があったりもしますが、大変なことも多いなか学校にも行き始めました❗ もふもふキュートな仲間も増え、毎日楽しく過ごしてます。 とにかくのんびりほのぼのを目指して頑張ります❗ いくぞ、「【【オー❗】】」 誤字脱字がある場合は教えてもらえるとありがたいです。 「~紹介」は、更新中ですので、たまに確認してみてください。 コメントをくれた方にはお返事します。 こんな内容をいれて欲しいなどのコメントでもOKです。 2日に1回更新しています。(予定によって変更あり) 小説家になろうの方にもこの作品を投稿しています。進みはこちらの方がはやめです。 少しでも良いと思ってくださった方、エールよろしくお願いします。_(._.)_

処理中です...