123 / 363
閑話2 苛立ち(side:ルーク)
1
しおりを挟む
「くそっ…」
僕は苛立ちや悔しさの入り混じった、何とも言えない感情に押しつぶされそうだった
シャノンだけが悪いわけじゃない
シャノンの好奇心は今に始まったことじゃないし、それを止めるのが僕たちの役目だってことも分かってる
でもあの時シャノンは全く僕たちの言葉を聞かなかった
やめた方がいいという直感
それはシアも僕も持ってた
だからこそ止めたのに…!
シャノンは僕たちの静止を振り切って行ってしまった
やりきれない気持ちを何とかしたくて森の木々に八つ当たりする
そんな情けない自分に余計に腹が立つ
この時の僕は一番怠ってはならない危機察知を怠っていた
常時発動しているとはいえ意識を向けていなければ、気付かないことも多いと知っていたはずなのにだ
『ギャン…!』
剣を振り回していた先で鳴き声が聞こえた
「は…?」
声の高さからして魔物の子供か?
でもこんな森で子供だけ…?
嫌な予感がして初めて危機察知に意識を向けた
「ぐ…っ!!」
気付いた瞬間、僕は重い衝撃と共に飛ばされていた
「…ぅ…ゲホッ…」
飛ばされた先の木の幹にぶつかった衝撃で吐き出したのは血の塊
流石にまずいと冷や汗が流れる
普通以上の耐性があるのに強烈な痛みで既に動くのも厳しい
そんな事にはお構いなしで僕を殺したいのだろう魔物が2体
ポイズンウルフ
Bランク
多分さっき剣で殺してしまった子供の親
「くそっ…」
洞窟を出てきたときとは違う悔しさに襲われる
僕は無力だ
素直にそれを認めればよかったんだ
止めてやれなくてごめんって
守ってやれなくてごめんって
ただそう言うだけで良かったのに…
怒りをむき出しにして近付いて来る2体を前になすすべもない
しびれて体が動かないのは、飛ばされた時の衝撃と共に毒が回ってるせいだろうか
少しずつ薄れる意識に魔力をためる事さえままならない、無力な自分に自然と涙が溢れてくる
「ごめんな…シャノン…」
死を覚悟したのは初めてだった
危険な場面はいくらでもあったのに、僕はたった一人で危機に直面したことは無かったみたいだ
シャノンに聞こえてたかは分からないけど最後に向けた言葉があれなのか…
「最低だ…」
シアが窘めてくれたのに…
ゆっくり近づいて来る2体を霞む視界で捉えながら、それでも何もできない自分がいる
そして…
「!!」
射程距離まで来た2体が同時に僕に向かって飛び掛かってきた
このままかみ殺されるのだろう
そう思いただ目を閉じる
でも、その瞬間は訪れなかった
「大丈夫か?!」
代わりにそんな声がかけられる
「…?」
おそるおそる目を開けると冒険者らしき人が数人いるらしい
僕は…助かったのか?
「これは毒か」
「俺が」
かすかに聞こえる声の後に体が一気に楽になった
「これも飲んどけ」
口に流し込まれたのは多分回復薬だ
「ありがとう…ございます」
「気にするな。でも君は未成年だろう?何でこんな場所に一人で?」
「いえ、兄と妹と一緒に…でも妹が大怪我をしていて…僕はそんな妹を責めてしまって…!」
押し寄せて来る後悔に飲み込まれそうだった
「シアの回復でも現状維持しか出来なくて、回復薬も効かなくて…僕はどうしたら…」
悔しさで涙が止まらない
こんな最低な僕だけが助かっても意味がないのに…
「シア?兄弟で冒険?」
「ひょっとしてレイとサラサのか?」
思いもしない名前が出てきて初めて顔を上げた
「…両親を、知ってるんですか?」
「ああ、昔馴染みだ。冒険できるならお前はルークで怪我をしてるのはシャノンか?」
そう尋ねられて頷いて返す
「案内しろ。治せるかは分からんが見てやる」
僕を回復してくれた人がそう言った
縋るような気持ちで支えられながらシアとシャノンのいる洞窟に案内した
僕は苛立ちや悔しさの入り混じった、何とも言えない感情に押しつぶされそうだった
シャノンだけが悪いわけじゃない
シャノンの好奇心は今に始まったことじゃないし、それを止めるのが僕たちの役目だってことも分かってる
でもあの時シャノンは全く僕たちの言葉を聞かなかった
やめた方がいいという直感
それはシアも僕も持ってた
だからこそ止めたのに…!
シャノンは僕たちの静止を振り切って行ってしまった
やりきれない気持ちを何とかしたくて森の木々に八つ当たりする
そんな情けない自分に余計に腹が立つ
この時の僕は一番怠ってはならない危機察知を怠っていた
常時発動しているとはいえ意識を向けていなければ、気付かないことも多いと知っていたはずなのにだ
『ギャン…!』
剣を振り回していた先で鳴き声が聞こえた
「は…?」
声の高さからして魔物の子供か?
でもこんな森で子供だけ…?
嫌な予感がして初めて危機察知に意識を向けた
「ぐ…っ!!」
気付いた瞬間、僕は重い衝撃と共に飛ばされていた
「…ぅ…ゲホッ…」
飛ばされた先の木の幹にぶつかった衝撃で吐き出したのは血の塊
流石にまずいと冷や汗が流れる
普通以上の耐性があるのに強烈な痛みで既に動くのも厳しい
そんな事にはお構いなしで僕を殺したいのだろう魔物が2体
ポイズンウルフ
Bランク
多分さっき剣で殺してしまった子供の親
「くそっ…」
洞窟を出てきたときとは違う悔しさに襲われる
僕は無力だ
素直にそれを認めればよかったんだ
止めてやれなくてごめんって
守ってやれなくてごめんって
ただそう言うだけで良かったのに…
怒りをむき出しにして近付いて来る2体を前になすすべもない
しびれて体が動かないのは、飛ばされた時の衝撃と共に毒が回ってるせいだろうか
少しずつ薄れる意識に魔力をためる事さえままならない、無力な自分に自然と涙が溢れてくる
「ごめんな…シャノン…」
死を覚悟したのは初めてだった
危険な場面はいくらでもあったのに、僕はたった一人で危機に直面したことは無かったみたいだ
シャノンに聞こえてたかは分からないけど最後に向けた言葉があれなのか…
「最低だ…」
シアが窘めてくれたのに…
ゆっくり近づいて来る2体を霞む視界で捉えながら、それでも何もできない自分がいる
そして…
「!!」
射程距離まで来た2体が同時に僕に向かって飛び掛かってきた
このままかみ殺されるのだろう
そう思いただ目を閉じる
でも、その瞬間は訪れなかった
「大丈夫か?!」
代わりにそんな声がかけられる
「…?」
おそるおそる目を開けると冒険者らしき人が数人いるらしい
僕は…助かったのか?
「これは毒か」
「俺が」
かすかに聞こえる声の後に体が一気に楽になった
「これも飲んどけ」
口に流し込まれたのは多分回復薬だ
「ありがとう…ございます」
「気にするな。でも君は未成年だろう?何でこんな場所に一人で?」
「いえ、兄と妹と一緒に…でも妹が大怪我をしていて…僕はそんな妹を責めてしまって…!」
押し寄せて来る後悔に飲み込まれそうだった
「シアの回復でも現状維持しか出来なくて、回復薬も効かなくて…僕はどうしたら…」
悔しさで涙が止まらない
こんな最低な僕だけが助かっても意味がないのに…
「シア?兄弟で冒険?」
「ひょっとしてレイとサラサのか?」
思いもしない名前が出てきて初めて顔を上げた
「…両親を、知ってるんですか?」
「ああ、昔馴染みだ。冒険できるならお前はルークで怪我をしてるのはシャノンか?」
そう尋ねられて頷いて返す
「案内しろ。治せるかは分からんが見てやる」
僕を回復してくれた人がそう言った
縋るような気持ちで支えられながらシアとシャノンのいる洞窟に案内した
64
お気に入りに追加
618
あなたにおすすめの小説
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
婚約破棄は誰が為の
瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。
宣言した王太子は気付いていなかった。
この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを……
10話程度の予定。1話約千文字です
10/9日HOTランキング5位
10/10HOTランキング1位になりました!
ありがとうございます!!
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜
青空ばらみ
ファンタジー
一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。
小説家になろう様でも投稿をしております。
元悪役令嬢はオンボロ修道院で余生を過ごす
こうじ
ファンタジー
両親から妹に婚約者を譲れと言われたレスナー・ティアント。彼女は勝手な両親や裏切った婚約者、寝取った妹に嫌気がさし自ら修道院に入る事にした。研修期間を経て彼女は修道院に入る事になったのだが彼女が送られたのは廃墟寸前の修道院でしかも修道女はレスナー一人のみ。しかし、彼女にとっては好都合だった。『誰にも邪魔されずに好きな事が出来る!これって恵まれているんじゃ?』公爵令嬢から修道女になったレスナーののんびり修道院ライフが始まる!
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる