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21.囲まれた

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「こんなところで会えるなんてついてるわ!」
女の甲高い声がする
気配を探ってぞっとする
全方位から囲まれてるのか?
その数は8
半分くらいが素人や低ランクの冒険者とは違った気配だ
さすがにうっとうしいとは言え女性に攻撃を加えるのは有り得ない
ついてるわって待ち伏せした人間の言葉じゃないだろうに…

「げ…」
漂ってくる臭いに目を顰めた
キツイ香水の臭いに頭痛と吐き気に襲われる
1種類の軽く漂う香りなら問題ない
でも複数のどきつい臭いは獣よりも酷い
ここまでくると”香り”と表現することさえはばかられる
俺にとったらある意味凶器だ

「私達、シア様をお慕いしてるの」
「そうよ。それなのに近寄らせても貰えなくて…」
「お父様に婚約を打診してとお願いしても反対されてしまいますしね…」
「ですから直接こうしてお会いすることにしましたの」
まとわりつくような声だ
オークジェネラルに張り飛ばされた時より頭がくらくらする
それに何かがおかしい

「ふふ…凄いでしょう?特別に作らせたの。私たちが付けている香水には魔封じの効果があるのよ?」
ひとりがそう言うと四方八方から手が伸びて来る

「触るな」
「そんな寂しいこと言わないで?私達皆シア様と幸せになりたいだけなんだもの」
「そうですわ。シア様はただ愛して、守って下さればよろしいのです」
「家の政務などの心配もございませんわ」
狂ってる
そう思った

身なりや言動からして貴族だ
町中で貴族の娘がうろつくなんてこと自体が普通じゃない
その貴族の娘が複数集まるなどこの町では聞いたことが無い
そもそも、この町には貴族が喜ぶようなものは何もない

「せっかくあのコバンザメをシア様から引き離せたと思いましたのに…結局その後もシア様はこちらを気にもしてくれませんでしたものね」
「コバンザメ…?」
流石に引っかかって言葉にしてしまった
「シア様の妹の事ですわ。シア様の側にいると聞いて調べさせていただきましたの」
「貴族である私たちよりいいものを見に着けてるのが少々腹立たしかったものですから」
「それにシア様に溺愛されているとか。たとえ家族でも許せませんわ」
「だいたいあんな平民の小娘が大金を持っているなど…私たちはこの香水の為に咽から手が出るほどお金を欲っしておりましたのに…」
「…まさか…」
嫌な予感がした
そしてその予感が外れることが無いことを女が続けた言葉で知ることになる

「彼女からお金を奪って差し上げようと思いましたの。だってそうでしょう?王族にも覚えの良いこの私、エリザベス・ミュラーリア・サブマリンよりもシア様と近しいなど許せませんわ」

ミュラーリアの名を持つのは王族の血筋
サブマリンは確か2代前の王弟の家名のはず
なるほど、だから闇賭博が成立していたわけか
あの人たちが調べても情報が出てこないわけだ
もっとも情報が出たとしても簡単には動けなかっただろうけど…

弾丸の後ろ盾の貴族はそれなりの地位にある
それにもかかわらず調査が中々進まない理由がこんなところで判明するとはな
そう思うとやり場のない怒りがこみあげて来る
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