上 下
63 / 330
17.誘惑

1

しおりを挟む
朝受けた依頼の報告前に依頼ボードに目を通す
「シア、これもあるよね?数足りる?」
シャノンが指さしたのは今週攻略してるフロアのドロップ品の依頼
「あぁ、ギリあるな」
要求は7つでインベントリの中も同じ数
10個とかだったらアウトだな

「やった。コレ手持ちで完了できる」
「え?それ先月のフロアの分でしょう?ルーク手持ち残してたの?」
「うん。最近はシアのマネして全部売るのは控えてるんだ」
ルークの言葉にシャノンがずるいと責め立てる

「シャノンもこれからすればいいじゃん。最近入りが大きいんだし全部売らなくても問題ないだろ?」
「そうなんだけど~」
この様子からすると問題ありってことか?
けど俺らの収入は普通の奴らと桁が違うはず…
武器屋防具を頻繁に変えるルークでも余裕があるのにシャノンに余裕がないこと自体がおかしい
「お前入ったもん全部使ったらとんでもない金額だぞ?一体何に使ってるんだよ?」
「…」
「シャノン?」
黙り込み俯くシャノンの顔をのぞき込む

「賭け」
「「は?」」
「かけ…ってまさか賭博?」
「うん…」
ダメなことは多分分かってるんだろう
だからこそうしろめたさを隠しきれてない

「何でそんなとこ出入りしてんだよ?いつから?」
「1か月くらい前に誘われたの。最初大当たりして10倍になったの!その後は負けてばっかりなんだけど…」
まさかの理由に俺は呆れた

「でも負けた分は取り返さないとって思ったらどんどんはまっちゃって…」
「シャノン、最近ルークとの別行動が増えたのは年のせいだと思ってたけど…それが理由か?」
俺が尋ねるとシャノンは頷いた

「だって絶対反対するでしょ?」
「当たり前だよ。シャノンだってそう思うってことは悪いことしてるって自覚はあるんだろ?」
「それは…」
ルークの尤もな言葉に言葉を詰まらせる

「まさか貯金以外全部消えたとかじゃないよな?こないだのオークの褒賞だって…」
「…消えた。だからその分を取り返さなきゃって…」
最悪のパターンに陥ったわけだ

「これは確実に母さんたちに報告するやつだな」
「やだ!お願いシア、お母さんたちには言わないで」
「それは無理だな」
「シア~」
シャノンが泣きそうな顔で見て来るけどこれは譲ったらダメなやつだ

「未成年を賭博に誘うこと自体が問題なんだよ。そもそもお前をカモにしてる時点で悪質極まりない」
「うぅ…」
「とにかく完了報告して帰るぞ」
依頼ボードを見るのは次回にして今日のところは無理矢理でも連れて帰ることにした

「あら、シャノンちゃんちょっと」
「え?」
職員に小声で招かれたシャノンはさっきの話のせいかビクビクしていた

「ランクアップできるけどどうする?」
「え?本当?」
「ええ」
「あ、じゃぁお願いします」
どうやら周りに配慮した行動らしい
そういやギルマスから周知されてるんだっけ

「何であんな小声?」
「俺の称号の事を報告したからだな。お前らのランクアップも早くなるはずだから」
「なるほど。変に絡まれないようにってこと?」
ルークの言葉に頷いて返す

「シャノンは嬉しいけど賭博の事で素直に喜べないって感じだな」
「シアが黙ってたげれば喜ぶんじゃない?」
「それは無理だな。シャノンの他にもカモがいるはずだし」
「あ~なるほど」
シャノンだけの問題じゃないとわかったらしい
この世界の賭博場は法的に認められてるけど、未成年の出入りは禁止されてる
未成年を入れた賭場は閉鎖を余儀なくされるから滅多に誘われたりはしない
つまりシャノンが出入りしているところは悪質な裏賭博場ということになる
ランクアップを祝ってやりたいのは山々だけど賭博の問題が解決してからになりそうだな
そう思うと少し気が重くなる
俺達は手続きを全て済ませて家に帰った
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

番の拷

安馬川 隠
BL
オメガバースの世界線の物語 ・α性の幼馴染み二人に番だと言われ続けるβ性の話『番の拷』 ・α性の同級生が知った世界

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。

ふまさ
恋愛
 伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。  けれど。 「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」  他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

【完結】愛に溺れたらバッドエンド!?巻き戻り身を引くと決めたのに、放っておいて貰えません!

白雨 音
恋愛
伯爵令嬢ジスレーヌは、愛する婚約者リアムに尽くすも、 その全てが裏目に出ている事に気付いていなかった。 ある時、リアムに近付く男爵令嬢エリザを牽制した事で、いよいよ愛想を尽かされてしまう。 リアムの愛を失った絶望から、ジスレーヌは思い出の泉で入水自害をし、果てた。 魂となったジスレーヌは、自分の死により、リアムが責められ、爵位を継げなくなった事を知る。 こんなつもりではなかった!ああ、どうか、リアムを助けて___! 強く願うジスレーヌに、奇跡が起こる。 気付くとジスレーヌは、リアムに一目惚れした、《あの時》に戻っていた___ リアムが侯爵を継げる様、身を引くと決めたジスレーヌだが、今度はリアムの方が近付いてきて…?   異世界:恋愛 《完結しました》  お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

「食べ物ブログ」

黒子猫
エッセイ・ノンフィクション
美味しいなって思った食べ物を紹介したりする記事を書いてます。

【完結】おお勇者よ、死んでしまうとは情けない、と神様は言いました

かずえ
BL
名前 ユーゴー  職業 勇者 レベル1  魔王を倒した記憶あり  やる気なし 勇者ユーゴーは長い旅の末、魔王と相討ちで倒すことに成功した。やっと終われると思ったその時、おお勇者よ、死んでしまうとは情けない、と言う神様の声がして、気付けば十歳の、母が死んだ日に戻っていた。 もう一度魔王討伐に行くなんてとんでもない、今度は楽しいと思える人生を送りたいと思った勇者の話。

もしかすると私は、最愛の婚約者に騙されているのかもしれない

柚木ゆず
恋愛
※2月4日、再会編が完結いたしました。明日(2月5日)より、ザマァ編が始まります。  婚約者だった幼馴染エリオットに裏切られ、偶然出会った侯爵家令息のレオンに優しく慰められた子爵家令嬢のルシィ。彼女はその出来事が切っ掛けとなってレオンに恋をして婚約し、2人で幸せな毎日を過ごしていました。  ですが――。そんな彼女には、いつも違和感がありました。  レオン様と一緒にいると、何かが間違っている気がする。  そうして彼女はその違和感について考え始め、やがて真実を知ることになるのでした――。

転生したら乙女ゲームの世界で攻略キャラを虜にしちゃいました?!

まかろに(仮)
BL
事故で死んで転生した事を思い出したらここは乙女ゲームの世界で、しかも自分は攻略キャラの暗い過去の原因のモブの男!? まぁ原因を作らなきゃ大丈夫やろと思って普通に暮らそうとするが…? ※r18は"今のところ"ありません

転生することになりました。~神様が色々教えてくれます~

柴ちゃん
ファンタジー
突然、神様に転生する?と、聞かれた私が異世界でほのぼのすごす予定だった物語。 想像と、違ったんだけど?神様! 寿命で亡くなった長島深雪は、神様のサーヤにより、異世界に行く事になった。 神様がくれた、フェンリルのスズナとともに、異世界で妖精と契約をしたり、王子に保護されたりしています。そんななか、誘拐されるなどの危険があったりもしますが、大変なことも多いなか学校にも行き始めました❗ もふもふキュートな仲間も増え、毎日楽しく過ごしてます。 とにかくのんびりほのぼのを目指して頑張ります❗ いくぞ、「【【オー❗】】」 誤字脱字がある場合は教えてもらえるとありがたいです。 「~紹介」は、更新中ですので、たまに確認してみてください。 コメントをくれた方にはお返事します。 こんな内容をいれて欲しいなどのコメントでもOKです。 2日に1回更新しています。(予定によって変更あり) 小説家になろうの方にもこの作品を投稿しています。進みはこちらの方がはやめです。 少しでも良いと思ってくださった方、エールよろしくお願いします。_(._.)_

処理中です...