上 下
61 / 330
15.異変

4

しおりを挟む
翌日再び同じフロアに来た俺達は都合のいい魔物の群れを待っていた
「これで今日もシアの望んだタイミングでエンドレスになったとしたら…」
シャノンの言葉に俺は思わず生唾を飲み込んでいた

人の理の通じない迷宮の中でのと言われる現象であるエンドレス
それに週に1回確実に遭遇していた俺はその時点で普通じゃない
それが希望のタイミングで出せるとしたら…?
昨日はただの偶然かもしれないという淡い期待をしている俺にとってシャノンの言葉は重い
でももし自由にエンドレスを引き出せるなら、ランクアップを目指して迷宮を攻略してる俺達にとってはメリットしかない
ただ、それに付随する色んなことが面倒にはなりそうだけど

「来た!ブラックウルフ2匹とブルーウルフ」
Bランク2匹とCランク1匹
エンドレスに最適な組み合わせだ
俺はエンドレスになってくれと願いながらブラックウルフを仕留めた
ほぼ同時に仕留めていたルークの少し後にシャノンがブルーウルフを仕留めると…
「入った!」
シャノンの嬉々とした声

「シアの規格外疑惑上昇!?」
「うるせぇ」
ルークを軽く睨みつけて再びブラックウルフに対峙する
願ったタイミングでのエンドレス
俺はまだ理解したくなかったらしい
翌日の依頼をこなしてその週末同じことを繰り返す

「やっぱ確実だよシア」
ルークがもう諦めろとでも言いたげな顔をする
「…流石に3回続くとな」
どこか諦めながらそうつぶやいた

当然の様にその日の夕食の場でシャノンはそのことをみんなの前で嬉々として話す
皆が驚く中母さんだけが苦笑していた

「母さん?何で笑ってんの?」
首を傾げながら尋ねると驚くことを口にした

「シアの称号に面白いものが追加されてるわよ」
そう言われて自分のステータスを開く
同時に見ただろう父さんが爆笑した
シャノンも鑑定を使ったらしいけど称号は秘匿してるから見れないらしい
鑑定レベルが俺のレベルを超えないと見れないから当然だ
俺のステータスに表示された新たな称号は…

「エンドレスの申し子?」
思わずつぶやいた言葉に皆が絶句した
「依頼に出てる素材狙い放題だな」
「父さん…」
そういう問題じゃないと思うけど…

「カルム、次のシアが同行する依頼で上級のボス行こうぜ」
「ボス部屋でエンドレスか?」
「魔道具ばっか落とすのがいるだろ。知らない魔道具多いんだよな」
アランさんがそう言いながらメリッサさんを見る

「お前な…嫁の機嫌治すためにシアを使うな」
父さんが呆れたように言う
え?何?アランさんとメリッサさんは喧嘩でもしてるのか?

「ふふ…アランさんはメリッサさんを怒らせちゃったのよね」
「怒らせたってなんで?」
「母さんの大事にしてた髪飾りを壊したんだよ」
答えをくれたのはヘンリーだった

「わざとじゃないんだぞ?たまたま…」
落とした拍子に踏んづけたらしい
しかもその髪飾りはアランさんが昔プレゼントしたものだということを忘れていたと
「…ダメダメじゃん」
思わず零した言葉にメリッサさんが笑い出す
「ほら、シアでもわかる事じゃない」
「ああ、本当に悪いと思ってる」
アランさんは項垂れながらそう言った
その姿は俺達にとったら新鮮で、子供達皆が笑ってしまうくらいには情けなかった

ちなみにメリッサさんは商業ギルドに努めているだけあって魔道具に目がない
「いいよアランさん。修復用の魔道具とか出るといいね」
「シア!」
救われたという顔で名前を呼ばれると流石に恥ずかしい

「僕からも礼を言うよシア」
「なんで?」
「ここんとこ父さんがうっとおしくて…」
凹んでうじうじしてる父親の姿をずっと見せられていたらしい
うん。確かにそれは嫌だな
どうやら俺の規格外ともいえる新しい称号は一つの家庭に平和をもたらせるきっかけになったらしい
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

番の拷

安馬川 隠
BL
オメガバースの世界線の物語 ・α性の幼馴染み二人に番だと言われ続けるβ性の話『番の拷』 ・α性の同級生が知った世界

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。

ふまさ
恋愛
 伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。  けれど。 「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」  他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

【完結】愛に溺れたらバッドエンド!?巻き戻り身を引くと決めたのに、放っておいて貰えません!

白雨 音
恋愛
伯爵令嬢ジスレーヌは、愛する婚約者リアムに尽くすも、 その全てが裏目に出ている事に気付いていなかった。 ある時、リアムに近付く男爵令嬢エリザを牽制した事で、いよいよ愛想を尽かされてしまう。 リアムの愛を失った絶望から、ジスレーヌは思い出の泉で入水自害をし、果てた。 魂となったジスレーヌは、自分の死により、リアムが責められ、爵位を継げなくなった事を知る。 こんなつもりではなかった!ああ、どうか、リアムを助けて___! 強く願うジスレーヌに、奇跡が起こる。 気付くとジスレーヌは、リアムに一目惚れした、《あの時》に戻っていた___ リアムが侯爵を継げる様、身を引くと決めたジスレーヌだが、今度はリアムの方が近付いてきて…?   異世界:恋愛 《完結しました》  お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

「食べ物ブログ」

黒子猫
エッセイ・ノンフィクション
美味しいなって思った食べ物を紹介したりする記事を書いてます。

【完結】おお勇者よ、死んでしまうとは情けない、と神様は言いました

かずえ
BL
名前 ユーゴー  職業 勇者 レベル1  魔王を倒した記憶あり  やる気なし 勇者ユーゴーは長い旅の末、魔王と相討ちで倒すことに成功した。やっと終われると思ったその時、おお勇者よ、死んでしまうとは情けない、と言う神様の声がして、気付けば十歳の、母が死んだ日に戻っていた。 もう一度魔王討伐に行くなんてとんでもない、今度は楽しいと思える人生を送りたいと思った勇者の話。

もしかすると私は、最愛の婚約者に騙されているのかもしれない

柚木ゆず
恋愛
※2月4日、再会編が完結いたしました。明日(2月5日)より、ザマァ編が始まります。  婚約者だった幼馴染エリオットに裏切られ、偶然出会った侯爵家令息のレオンに優しく慰められた子爵家令嬢のルシィ。彼女はその出来事が切っ掛けとなってレオンに恋をして婚約し、2人で幸せな毎日を過ごしていました。  ですが――。そんな彼女には、いつも違和感がありました。  レオン様と一緒にいると、何かが間違っている気がする。  そうして彼女はその違和感について考え始め、やがて真実を知ることになるのでした――。

転生したら乙女ゲームの世界で攻略キャラを虜にしちゃいました?!

まかろに(仮)
BL
事故で死んで転生した事を思い出したらここは乙女ゲームの世界で、しかも自分は攻略キャラの暗い過去の原因のモブの男!? まぁ原因を作らなきゃ大丈夫やろと思って普通に暮らそうとするが…? ※r18は"今のところ"ありません

転生することになりました。~神様が色々教えてくれます~

柴ちゃん
ファンタジー
突然、神様に転生する?と、聞かれた私が異世界でほのぼのすごす予定だった物語。 想像と、違ったんだけど?神様! 寿命で亡くなった長島深雪は、神様のサーヤにより、異世界に行く事になった。 神様がくれた、フェンリルのスズナとともに、異世界で妖精と契約をしたり、王子に保護されたりしています。そんななか、誘拐されるなどの危険があったりもしますが、大変なことも多いなか学校にも行き始めました❗ もふもふキュートな仲間も増え、毎日楽しく過ごしてます。 とにかくのんびりほのぼのを目指して頑張ります❗ いくぞ、「【【オー❗】】」 誤字脱字がある場合は教えてもらえるとありがたいです。 「~紹介」は、更新中ですので、たまに確認してみてください。 コメントをくれた方にはお返事します。 こんな内容をいれて欲しいなどのコメントでもOKです。 2日に1回更新しています。(予定によって変更あり) 小説家になろうの方にもこの作品を投稿しています。進みはこちらの方がはやめです。 少しでも良いと思ってくださった方、エールよろしくお願いします。_(._.)_

処理中です...