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閑話1 後悔(side:レイ)

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寝室で酒を飲みながら昨日の事を思い返す
シアの泣き声が頭の中から消えない

『俺はあの時力を暴走させたから』
『父さんが誰よりも愛してる母さんを殺しかけた俺を許せるはずがない』
『俺はずっと恨まれて』

「あいつはいつから自分を追い詰めながら…?」
事件があったのは1歳の頃
前世の3歳の記憶があったせいで普通なら考えずに済んだことまで考えて、色んなことを感じてたはずだ

「怖い顔してどうしたの?」
サラサがそう言いながら横に座った

「みんな寝たのか?」
「子ども達はぐっすりね。シアも、いつもならまだ起きてるけど昨日沢山泣いて疲れたんでしょ」
「…そうか」
「シアが泣いたのは13年ぶりね。ようやく泣けたみたいでほっとしたわ」
「え?」
「あの子、何があっても必死で涙をこらえてたもの。事件の後からずっと。何とかしようとしても変にこじれちゃうしで参ったわ」
「そうなのか?」
俺が尋ねるとサラサは悲しそうな顔をして頷いた

「あの子言ったのよ。『力が暴走した』って」
「!」
「辛いことがあっても悲しいことがあっても、涙を流さずにただ私にしがみ付いて耐えてたの。代わりに私は随分泣いたわ」
「…苦しかっただろうな…何度も話をしようとしながら結局逃げたせいで長い間辛い思いをさせた」
「でもレイに大切にされてることはちゃんと伝わってたわよ」
「え?」
大切なのは事実だ
昔から抱きしめて甘やかしたくて仕方なかった
でもそんなはずないだろ…

「『父さんに嫌われたくない』それがあの子の口癖よ」
「嫌われたくない…?」
「そう。それってとは思ってなかったってことでしょう?」
「でもあいつ『恨まれてる』と思ってたんだぞ?」
「だから、どうしていいかわからなかったんじゃない?嫌ってる相手を大切にする人はまずいないわ。たとえ血のつながった子供でも」
「まぁ…それは確かにそうだけど」
「ちょっと構えながらでも、レイとの関りを断とうとしなかったのは、どこかで希望を持ってたからだと思うよ?流石に自分を責め続けた時間が長いから、下の子たちみたいに無条件に甘えたり話をしたりするのは難しかったみたいだけど」
どこかおびえた目をしていた
でもそれでも真っすぐこっちを見てたように思う

「レイもシアも、もっと我儘になってよかったのよね。そしたらここまで拗らせずに済んだのに」
「サラサの言うとおりだな…シアには本当に悪いことをした」
「まったく…シアは私よりレイが大好きだし、レイも、子供達の中でシアの事が一番好きなくせにねぇ」
「…おま…何…」
「何でって…シアはレイの言うを払拭した存在でしょう?本当なら子どもはみんな平等にって言いたいところだけど、こればっかりはねぇ…」
サラサが呆れたように言う

「みんなももどかしかったと思うよ?良かったね。ちゃんとフォローしてくれる仲間で」
「確かにな…」
それは本当に感謝しかない

「そうだ、あの子たちにアクセサリーを用意しようと思ってるんだけど。旅に出ることだしその方が安心でしょ」
魔石をセットできるアクセサリーは装備の一種だ
ペンダントやブレスレット、リングに魔力を流した魔石をセットして使う

「…シアにはこれをやってもいいか?」
俺は長い間自分の手首に嵌めて来たブレスレットを指して尋ねた
これは昔サラサからもらったものだ
サラサと俺の魔力が何度も重ね掛けされた魔石が付けてある

「気休めにしかならないかもしれない。でも…」
それとも双子は新しいものなのにといじけるだろうか

「大丈夫よ。レイがそうしたいなら私は反対しないわ」
「サラサ…」
「私の想いもレイの想いも詰まった最高の一品ね」
「…ああ」
それだけお前が大切なのだと伝わるといい
それが旅の中でシアの支えになればいい
そう思いながら魔石に魔力を流した
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