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3.泣きごと

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「シア、リアム、この世界の魔法はね、イメージすることが何より大事なの」
「イメージ?」
「んー?」
2人はサラサの言葉によくわからないと首を傾げた

「誰でも使える生活魔法で試してみようか。例えばお水ね」
「お水」
「そうお水。手を洗う時を思い出しながら『ウォーター』ね」
『うぉーたー』
『Water』
リアムの手元にはへしゃげた水球が、シアの前では水が滝のように流れ落ちた

「あーうん、そうなるわよね」
サラサはシアの状況を見て苦笑した

「じゃぁ次はそのお水が無くなるのを頭の中で思い出して」
「わかった」
2人の手元から水が無くなった

「手、洗えたよ?」
「お水出た」
2人はキャッキャとはしゃぎながらサラサに飛びついた

「いい?これが魔法の基本。頭の中で思い描く、イメージするのが一番大事」
「ママ、なんで僕とりあむのお水は別の形だったの?」
「いい所に気付いたわねシア。それはね、イメージした物が違ったからよ」
「でもお水をイメージしたよ?」
リアムも首を傾げる

「リアムがイメージしたのはカルムさんやナターシャさんがいつも出してくれる水のボールでしょう?」
「そう!」
うんうんと首を縦に振る

「シアがイメージしたのは前世の水道かしらね?」
「だって手を洗うって…」
シアはショボンとうつむいた

「ふふ…何も間違ってないわよ。2人ともイメージした通りにお水が出たでしょう?」
「!」
シアが何か思いついたようにサラサを見た

『Water』
再びシアがそう口にすると次はきれいな水球が現れた

***

そうだ
母さんは最初そこから教えてくれた
きっとそれはシャノンの時も同じはずだよな

「なぁシャノン」
「なに?」
「例えばだけどな」
「ん」
「こうすりゃ使えるって、俺が時空魔法を使って見せてお前は使えるか?」
「そんなの無理に決まってるじゃない!」
「何でだ?」
「だって私はそんな属性持ってないし…」
シャノンは拗ねたように言う

「そうだな。時空魔法に比べてシャノンの持ってる水属性を持ってる人は多いな。でも皆が使えるわけじゃない」
「それは分かってるよ?」
「そうかな?」
「え?」
「孤児院で見せた魔法は何だった?」
「それは水…」
シャノンは言葉を飲み込み俺を見た

「それにな、属性を持ってたとしてもいきなり使うことは出来ないと思うぞ?お前だって最近まで光魔法使えなかったろ?それはなんでだ?」
「使い方が分からなかったからだよ?」
「でもナターシャさんや母さんが使ってるのは見たことあったよな?」
「うん。何度も見た」
「でも使えなかったんだよな?」
「う…」
シャノンは口ごもる

「もうわかったか?」
「…今日私は何も教えられてない?」
一度引っ込んだ涙がまた溢れてきていた

「よくできました」
俺はシャノンの頭をポンポンとなでるように叩く

「じゃぁどうしたらいいの?」
「それはシャノンが考えることだよ」
「そんなの無理…」
そう言いながらシャノンは俺の膝の上に乗って抱き付いてきた
いくつになってもこうやって甘えてくるところは変わらない
それを辞めさせないあたり、俺も相当甘やかしてるんだろうけど
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