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オトナ

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あっという間に夏休みになり、東京でのライブのために各々がバタバタと準備を進め、遂にその日が来た。





「客の温まり方尋常じゃないよ」

表の様子を見に行っていたセナが苦笑いを浮かべながら戻ってきた。

「せな~おれ緊張してきた」

カイトはあがり症で毎回ライブ前はこうやってセナにハグを求めて心を落ち着かせてる。

「まぁ、完全アウェイだからな。おれも正直怖いわ」

そんなこと言いながら誰よりも平常心を保っているタクヤ

「さぁ、そろそろ行きますか」

セナの一声で全員のスイッチが入る。

今回は、事前告知ナシだから地元のファンの子たちは誰もいない。本当にアウェイの環境だ。

しかも、おれらは尖りに尖ってるからセトリ全部がオリ曲。外せばかなりの地獄絵図になるだろう。

地獄上等

おれらはあの嘘つきの背中おいかければいいだけ、怖いものなんて何も無い。

いつも通りやるだけだ。

上手の位置に行き演奏が始まった。

「…………は?」

何となく客席に目を向けた時だった

「……んであいつらいんだよ。」

事前告知ナシ、もちろん友人たちにもこの事は伝えてないはずなのにそこにはハルが居た、その隣にはゆいもいる。

チラッとセナの方を見てみるとセナもほんの少しだけ動揺の色が見える。

まじなんでいるんだ?







無事やり終えて楽屋に戻ると、案の定お嬢さん2人も入ってきた。

「レンくんお疲れ様!!」

「お疲れ様!!じゃねえよ、なんでいんの?」

少しぶっきらぼうな言い方にハルは怯む。

「いや、レン悪い。実はおれが……」

そう言いながら間に入って来たのはカイトだった。

話はこうだ

久しぶりにおれらと遊びたくてカイトに予定を聞いたらものすごーーく歯切れの悪い答えが返ってきて、それを怪しんだハルがカイトから聞き出したと…。まぁ、嘘のつけないカイトらしい。

「でもね、東京の人達凄いよ!わたしてっきりこんなバンド知らないってみんな出てっちゃうと思ってたんだけど、ほぼ誰も出てかないで残ってたもん。まぁ、その分値踏みするような感じで最初は聴いてたけどね。」

結果的には東京でも充分やって行けると言う自信を持って帰れるだろう。

「ちょっとー」

唐突にゆいが声を上げみんながそっちに視線を落とすと、ゆいにもたれ掛かり眠るセナと、その状況に困惑するゆいがいた。

「2人も久しぶりに会ったはずなのに、速攻これって、さすがだねぇ。」

ハルがからかいながらスマホで写真を撮る

「違うって、こいついきなりちょっと借りるってそのまま寝ちゃったの。」

「の割には、ずっと貸したままだけど」

見慣れた光景…いや、どっちかっていうと懐かしい光景か。

「いや、なんかちょっと心配で」

心配?

「ゆいちゃん大丈夫だよ、セナいつもライブ終わりとか練習終わりとかそんな感じだから」

タクヤがそう説明してもあまり納得がいかないみたいだった。

「お前よりおれらの方が普段から見てっから。」

「は?」

おれの一言に食い気味に反応するゆい

「心配っていう割に、もう全然こいつと接点持とうてしねえじゃん」

ハルが心配そうにこっちに視線を送ってきたのをとりあえず頭を撫でてやり過ごす。

「いいよ、別に私あんたと喧嘩するために来たわけじゃないから。もうやめよこの話」

「そうやってまた逃げんの?」

「逃げるとかじゃなくて、せっかくのこういう日台無しにしたくないから。ごめんね余計なこと言って」

そう言われてしまえばおれももう突くことはできない。

「……と、とりあえずみんなで打ち上げいこ!ね!」

ハルはこういう時、すぐにそういう立ち回りをする。

いい子ぶってる訳ではなく、本当にいい子なんだろう。

まぁ、おれはそんなのどうでもいいけど
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