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高校時代〜ハルside〜

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普通という言葉に取り憑かれた人生だった

ごく一般的な会社に勤める父と小遣い稼ぎ程度でパートに行く母

庭に並ぶワンボックスの車1台と軽自動車1台
その横にポツンと置いてある自転車

二階建ての一軒家

何もかもが普通の不自由のない一般的な家庭

貧乏でもないしお金持ちでもない

ほんとに普通の人生……



決して嫌ではない人生

でも"嫌気"は差していた

何かきっかけが欲しい

この普通な人生が変わるきっかけが欲しい

そんな気持ちを抱えながら高校に入学



………そして




「1年間よろしくね、お隣さん」




レンと出会った






正直一目惚れだった

高校生活初日で好きな人が出来るなんてちょっと凄い!!!

これから毎日学校行くのが楽しみになった


レンとはすごく仲が良くなった

放課後一緒に帰ったり

休みの日に一緒に買い物に行ったり

…まぁその度に奢るからお金は減ってく一方だけど

でも何だかレンも私を必要としてくれてる気がして嬉しかった



レンは色々な女の子との噂が絶えない人だけど

でもいつも一緒にいるのは私だから……




ある時、レンに予定が入って先に帰っちゃって久々に1人で過ごす放課後があった

ずーーっとレンと一緒に居たから同じ高校の子誰か誘って遊べる感じでもないし……



いきなり中学時代の友達に連絡しても断られたりしたら嫌だから今日は大人しく家に帰ろう



そう決めて1人で家に向かった

何だかこの時間1人で過ごすのが久しぶりすぎて寂しい訳じゃ無いんだけど何とも言えない感情が込み上げてくる

「はぁ…」

思わず零れたため息

気分が冴えないなぁ…

そんな事を思いながらふと顔を見上げると赤く綺麗に染まった空が広がっていた

すごく幻想的なその空を見て考えるより先に身体が動く

走った、思いっきり走った

その思いっきり走って向かった先は

海だ

家の前にある海に急いで向かった

夕陽はすぐに沈むから

気づいたら沈んでるから急がないと






いっぱい走ってやっとたどり着いて

そして目の前に広がるのは

一面が赤く焼けたような青い海

そしてその上に浮かぶ夕陽




「綺麗!!」






思わず大きい声で口に出し焦って周りをキョロキョロと見渡す

よかった~誰もいない

こんな独り言聞かれたらバカだと思われちゃう

…………

………………………

…………………………………

いや、いる

ガッツリ人がいる

ちゃんと周りはキョロキョロした

でも今私は急いで階段をかけ登って
そのテッペンでこの景色を見た

つまり…………

恐る恐る目線を下へ下げると

砂浜から丁度3段ぐらいの所に腰をかけながら振り返り私を見ながらケタケタ笑う男がいた



……………………………恥ずかしい。


その人はほぼ寝転んだような状態で肘を階段に置き、この辺ではあまり見かけない学校の制服を身にまとってタバコを吸いながら
バカにしたように笑っていた

「あ…あの、ごめんなさい」

意味もなく謝るわたし

「いや、確かに綺麗だったな」

恥ずかしい

「いい感性してるって事なんだから恥ずかしがんなよ」

そう言いながらもまだケタケタ笑うその人は
初対面なのにまるで昔から知っている幼なじみのようなそんな感じがした

まぁ…感じがしただけなんだけどね

「この景色見にきたの?」

その男の人が尋ねてくる

「あ、家がすぐそこでたまたま…」

「へ~」

聞いてきといて興味無さそうに答える謎の男

「暇だし帰るまで喋り相手になってよ」

謎の男が海を見ながら言った

「いいけど…あっ名前教えて」

いきなり名前聞くの変かな?

………これが変だとしたら謎の男との会話全てが変だ

「名前?あー…」







「セナって呼んで」






そう、これがセナとの出会いだった
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