双子ぷろでゅーーす!!!

nagiyoooo

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環ちゃん

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「どうして・・・どうしてそんなことを!」

「すまない、俺はこうするしかなかったんだ、お前のためにも」

「私のためって? それが人を傷つけていい理由になるの?」

「・・・すまない・・・」

・・・・・・・・・・・・

「カットォォ!!」

 パチンという音が鳴り響く。

 工場の中を模したセットの上には、景と相手役の男が立っている。

 そして、その足元には人の形をした人形が置いてあり、赤い色に染まっている。

 俺と景は今、次期放送予定のドラマの撮影に来ている。

 なぜか俺も撮影現場に入ってもいいことになったので、カメラの後ろで見学していた。

 薄暗い空間に、数えきれないほどのスタッフが常にあわただしく動いていて、カメラを挟んだセットの方を見ると、まるで別世界のように感じられる。

「相変わらず仕事の時はびっくりするほどきれいだな」

 セットの上に立つ景は、撮影用の衣装を着せられメイクも施されていて、普段のクールさからより一層大人っぽさが引き立てられている。

 その表情は、日常生活の天然ぶりが嘘のように感じるほど真剣で、役に入り込んでいる。

 景はセットから降りて、イスとテーブルだけが置いてある簡易的な休憩場所に座った。

「お疲れ、景」

「ああ、兄さん。いたのね」

「お前はどうやってここまで来たんだよ」

 俺の労いの言葉をあっさりとスルーする景は、テーブルに置いてあるお茶を手に取った。

「次出るのはいつなんだ?」 

 俺は景の隣に座り、台本をぱらぱらめくりながら聞いた。

「さっきメイクの人に聞いたら、まだ結構先みたい」

「メイクの人って、てかなんでそのメイクの人は知ってんだよ」

 景は女優というよりも、役を演じる行為自体が好きなので、ほかのことに関して無関心なとこがある。

「よろしくお願いしまーす!」

 俺たちが会話をしていると、入り口の方から元気な子供の声が聞こえてきた。

 現場の人たちの視線がそこに集まる。

「環ちゃん!」 

 景が小さく叫んだ。

 入り口から堂々と現場に入ってくる女の子、環ちゃんは、見た目は小学生くらいの女の子だが、その立ち振る舞いは一人前の役者そのものだった。

 後ろについているのはおそらくマネージャーだろうか、茶色く焦げた肌に金髪。そして余裕で190センチは超えていそうな身長に、スーツがはち切れそうな体格。

 マネージャーというより、ボディーガードだ。

「こえ~な、あの人。さすが人気子役」

「どうしよう、環ちゃん来ちゃったわ」

 台本で顔を半分隠している景は、おどおどしながらも、じっと環ちゃんを見つめていた。

「どんだけ好きなんだよ」

 俺がそうツッコむと、環ちゃんが突然、俺らのいるほうを見た。

「え、環ちゃん今こっち見た? あれ、こっちに来てる?!」

 若干パニックになりつつある景は、早口でそんなことを言っている。

「そんなわけないだろ、控え場所はほかにもあるんだから、わざわざこっちに来なくても・・・」

 とはいったものの、どうやらほんとにこっちに来ている。

 次第に近づいてくる人気子役と屈強な男。

「兄さん、なんか知らないけど、逃げたほうがいいと思うわ」

 俺の袖を引っ張りながら慌てる景。

「いやまて、相手が売れっ子だからって景もそこそこの人気女優だ。ここで舐められたらだめだ」

 そういって俺の袖をつかむ景の手をつかみ、近づいてくる大物とにらめっこをしていた。

 景はおびえているのか感動しているのか、小刻みに揺れている。

 そして環ちゃんと男は俺たちの向かいの席の前に立った。

「・・・・・・・」

「こ、こんにちは。今日はよろしくお願いします。」

 無言で見つめてくる二人より先に、俺があいさつをした。

 それに続いて景もお辞儀だけした。

 いまだに俺の袖をつかんでいる景は、小声で俺にささやいた。

「兄さん、なんだかわからないけどめちゃくちゃ見られてるわ。どけってことかしら」

「いや俺もわからん、なんで無言なんだ?」

 ひそひそと話す俺らの間に、突然大きな声で環ちゃんはしゃべりだした。

「あなたが日向景ね!」

 にっこりと笑って景を指さす環ちゃん。

 なにが起きているのかわからない俺と景は、完全に思考が停止していた。
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