世界のためなら何度でも

つぼっち

文字の大きさ
上 下
208 / 281
第三章、【白の王冠】メタトロン

D-18 第一ノ天命・ケテル

しおりを挟む
体が硬直した。

まるで手術で全身麻酔を打った時のように。

そして手が勝手に剣の方へと伸びて行く。

そして剣を取り、俺の首元へ剣を持ってきてしまう。

「こなくそぉ!!」

あともう少しで首が切れるところで俺の体に意思が灯った。

なんだこれは。

まるで自殺でもするかの如く手が動いてしまった。

「ふむ、貴様エクストラスキルを持っているな。あまり複雑なのは効かないか。」

「お、俺に何をした……。」

「これは私が授かった王冠によって得たエクストラスキル、【第一ノ天命・ケテル】。私が下した命令を相手は必ず推敲するという力だ。しかし複雑だったり厳しい内容は力量差で発動できなくなるという欠点があるがな。」

なるほど、エクストラスキルは使えないだけで器としては残っているってことか。

でも俺が今使えるのは時間を少しだけ戻すことのできる【時間逆行】と魔術のみ。

剣は魔剣だが空っぽなので全く使えない。

「じゃあこんなのはどうだ、『目を閉じろ』!!」

パチッ

「め、目が勝手に閉じた!?」

全く見えない。

見えるのは微かな光だけ。

隔離結界のせいで外の声も聞こえない。

絶体絶命だ。

コツ、コツ。

足音が俺の周りをぐるぐると回っている。

無闇に魔術を撃てば隙ができてそこを突かれる。

かと言ってこのまま何もしない状態だと殺されるのは時間の問題だろう。


ぶおっ


風。

顔のあたりに当たった。

その瞬間反射神経の限りを使って横に避ける。

パサリと俺の髪が少し地面に落ちる音がする。

おそらく剣が髪をかすめたのだろう。

「時よ戻れ。」

ギュルギュルと俺の時間だけが戻って行く。

そして本来顔に刺さっていた場所の手前まで戻ってきた。

先ほど見た剣の長さは一般的なロングソード並み。

つまり今目の前にあいつはいる。

「至近距離で爆ぜやがれ。」

膨大なエネルギーを圧縮した球をメタトロンの体の中にめり込ませる。

そして俺の制御下から離れたエネルギーは急激に膨張し、


大爆発を起こし体を爆裂四散させた。




というのが理想だったのだが、

爆発は生物に被弾した反応を起こさなかった。

つまりメタトロンに被弾していない。

外してしまった。

「当たったのは私の剣だ。」

メタトロンは爆発を撃たれる直前に剣を身代わりに避けていたのだ。

「死ね。」

風が首元に当たる。

あ、死んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

村人Aが勇者の裏で、

ヤマノ トオル
ファンタジー
「号外!!号外!!」 伝書係が大声をあげて村中を駆け回る。 その紙面にはこう書かれていた。 [勇者様、魔王城へ向けて出発] 昨今、魔物の悪行が繰り広げられているこの世の中を変えるため、セイギーノ王国の王子様であるフラペチーノ様が魔王討伐のために城を出られたとのことだった。 遂にこの日がやってきた。 その号外を読んだタイクーツ村の村民であるアッパレーは心躍らせていた。 フラペチーノ様は生まれた瞬間から魔王討伐のために育てられている、と聞かされたことがあった。 勉学、武術、剣術、魔術、、、その全てを魔王を倒すために叩き込まれているのだ。 誰もがフラペチーノ様が魔王を倒してくれると期待していた。 だが、アッパレーだけは違った。 魔王討伐のために鍛錬を積むフラペチーノ様の存在を知った数年前から、アッパレーも鍛錬を始め、今日この日を待ち侘びていたのだ。 「勇者様と共に、魔王討伐に行ってきます!」 アッパレーは大きな木こり斧を担いで、広場に集まる村人たち達に対し、声高らかに言い放った。 この物語は愚直な村人アッパレーが魔王討伐に向かう勇者様御一行を追いかけ、奇跡を起こす心温まるファンタジーです。

ふだん

祐哉
青春
別に何があるっていうわけでもない、ただの日常です。 ボーっとしたい人におすすめかな?

錬金術師始めました

頭フェアリータイプ
ファンタジー
全ての人類が職業(ジョブ)を持つ世界。戦闘職、補助職、そして生産職。多種多様な職業の中で生産職の上級職、錬金術師(アルケミスト)を持つ少女が自分の店を持つことを目指して冒険者をする話。 前作はたくさんの応援ありがとうございました。残念ながら完結となりました。今回はエール1につき1話更新とします。お気に入りが8入るなら1人くらい広告見てくれないかなという下心です。してくださるととても喜びます。1日3回できるのでぜひ他所様でもして差しあげてください。広告収益は100%還元されるそうです。

親友に裏切られたおかげで幸せになりました

よーこ
恋愛
親友と婚約者が浮気した。

運命の糸の先に

hayama_25
恋愛
梨華と瑞稀は幼馴染で、いつも一緒に過ごしてきた。大人になってもその距離は変わらず、二人は隣同士の部屋に住んでいる。 梨華は瑞稀のことをただの幼なじみだと思っていたが、次第に彼への想いが変わっていくことに気づく。 そんな中、瑞稀の元カノが突然現れ、二人の関係に波風が立つ。梨華は自分の気持ちに正直になりたいと思うが、瑞稀の心がどこに向かっているのか分からず、不安と葛藤の日々を過ごす。 二人はすれ違いながらも、運命の糸に導かれ、真実の愛を見つけることができるのか。

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

処理中です...