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第九章、敗北と絶望
#109 剣帝の試練
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「逃げてるだけじゃなにもできないぞー。」
「くっ!」
アーサーの剣を片っ端からミルドは剣で受ける。
アーサーの剣は一見乱雑だが素早く、相手の退路を塞いでいく。
「ぐぅ!!」
「僕はまだまだ早くなるぞ。」
アーサーは急に剣の速度を上げていく。
「ぬぉぉ!?」
今のアーサーはグラトニーと戦った時とは一味二味違う。
「どうした?体力が切れてきてるぞ。」
アーサーの斬撃は止まらない。
ミルドは反撃すらもできなかった。
しばらくそんな状況が続いているとアーサーは剣を止めた。
そして疲労しているミルドに対して呆れながら、
「お前は剣術をなんだと思ってるんだ?剣術をなめているのか?」
「…………。」
返事ができない。
実際のところミルドは剣に頼ってばかりのところがあるからだ。
「7代目、剣術とは何か言ってみろ。」
「相手を逃さずに牽制しつつ相手に攻撃を加える武術です。」
「一般の剣術では50点、剣聖の剣術で言えば0点以下だ。お前は剣聖になってなにを学んだんだ?なにも学んでないのか?」
「……ですが」
「一度死んだから忘れましたってか?そんなので剣聖なんて名乗ってたのがどれだけ恥ずかしいことかわかってるか?」
「……。」
「いいか?剣聖の剣は一般の剣術とは違う。剣聖の剣術は大切なもの、守るべきものを守るための剣だ。お前は根本から間違っている。」
ミルドは歯を食いしばることしかできない。
一度死んだからといってそれを言い訳にして逃げた自分に剣聖を名乗る資格なんてないのだ。
「まぁお前の言い分もわかるぜ。死んでしまったことは仕方がないし死ぬななんて言わない。ただ忘れるなっていってるんだ。」
アーサーは剣を地面に突き刺しそのまま少しもたれかかる。
「試練の内容を少し変える。俺は今から瀕死のお前の主人を殺しにいく。」
「なっ!?」
「それが嫌なら僕を全力で止めてみるんだな。殺す気で来い、もちろん止めようとするならお前を殺すけどな。」
「主人は関係ないでしょう!!」
「関係はないな。だがお前の主人が本当に守りたいものなら止めにこれるだろ?」
「ですが殺す気でなんて。」
「いっとくが剣聖に必要なものは大切なものを守る『剣術』、常に力を精進させ続ける『努力』、そしていついかなる時でも冷静に解決する『判断力』、いざとなったら身を挺して仲間を守る『度胸』、最後に危険な敵の息の根を止める『覚悟』だ。お前には『覚悟』がない。俺は本気で殺しに行くぞ。」
そう言ってアーサーは部屋を出ようとドアノブに手をかける。
「待て!!」
ミルドはアーサーを大声で止める。
「我が主人は私を別の体ですが生き返らせてくれ、普通は捨て駒に使われるアンデッドの私を大切にしてくれました。」
「だからやめてくれってか?そんなものが通るわけ」
「我が主人は心優しき人です。誰にも優しく接し、国民一人一人の声に耳を傾け、国の問題に一番悩み助けてくれます。」
「だからなんだって言ってんだよ!!」
「私はそんな優しい主人が大好きなんです!!」
ミルドは立ち上がる。
「覚悟……、ですか。もう決まりましたよ。」
そしてアーサーの方に剣を構える。
「私は守りたい人のために、あなたを全力で止めて見せます!!」
ミルドの目に迷いはない。
「いいだろう。僕も全力でそれを阻止する。お前の代わりは用意できるんだ、お前が死のうが世界に影響は出ない。世界の選択なんて知ったことか。」
アーサーも剣を構えた。
この試練はどちらかが死ぬまで続くだろう。
そして《剣帝の試練》が始まった。
「くっ!」
アーサーの剣を片っ端からミルドは剣で受ける。
アーサーの剣は一見乱雑だが素早く、相手の退路を塞いでいく。
「ぐぅ!!」
「僕はまだまだ早くなるぞ。」
アーサーは急に剣の速度を上げていく。
「ぬぉぉ!?」
今のアーサーはグラトニーと戦った時とは一味二味違う。
「どうした?体力が切れてきてるぞ。」
アーサーの斬撃は止まらない。
ミルドは反撃すらもできなかった。
しばらくそんな状況が続いているとアーサーは剣を止めた。
そして疲労しているミルドに対して呆れながら、
「お前は剣術をなんだと思ってるんだ?剣術をなめているのか?」
「…………。」
返事ができない。
実際のところミルドは剣に頼ってばかりのところがあるからだ。
「7代目、剣術とは何か言ってみろ。」
「相手を逃さずに牽制しつつ相手に攻撃を加える武術です。」
「一般の剣術では50点、剣聖の剣術で言えば0点以下だ。お前は剣聖になってなにを学んだんだ?なにも学んでないのか?」
「……ですが」
「一度死んだから忘れましたってか?そんなので剣聖なんて名乗ってたのがどれだけ恥ずかしいことかわかってるか?」
「……。」
「いいか?剣聖の剣は一般の剣術とは違う。剣聖の剣術は大切なもの、守るべきものを守るための剣だ。お前は根本から間違っている。」
ミルドは歯を食いしばることしかできない。
一度死んだからといってそれを言い訳にして逃げた自分に剣聖を名乗る資格なんてないのだ。
「まぁお前の言い分もわかるぜ。死んでしまったことは仕方がないし死ぬななんて言わない。ただ忘れるなっていってるんだ。」
アーサーは剣を地面に突き刺しそのまま少しもたれかかる。
「試練の内容を少し変える。俺は今から瀕死のお前の主人を殺しにいく。」
「なっ!?」
「それが嫌なら僕を全力で止めてみるんだな。殺す気で来い、もちろん止めようとするならお前を殺すけどな。」
「主人は関係ないでしょう!!」
「関係はないな。だがお前の主人が本当に守りたいものなら止めにこれるだろ?」
「ですが殺す気でなんて。」
「いっとくが剣聖に必要なものは大切なものを守る『剣術』、常に力を精進させ続ける『努力』、そしていついかなる時でも冷静に解決する『判断力』、いざとなったら身を挺して仲間を守る『度胸』、最後に危険な敵の息の根を止める『覚悟』だ。お前には『覚悟』がない。俺は本気で殺しに行くぞ。」
そう言ってアーサーは部屋を出ようとドアノブに手をかける。
「待て!!」
ミルドはアーサーを大声で止める。
「我が主人は私を別の体ですが生き返らせてくれ、普通は捨て駒に使われるアンデッドの私を大切にしてくれました。」
「だからやめてくれってか?そんなものが通るわけ」
「我が主人は心優しき人です。誰にも優しく接し、国民一人一人の声に耳を傾け、国の問題に一番悩み助けてくれます。」
「だからなんだって言ってんだよ!!」
「私はそんな優しい主人が大好きなんです!!」
ミルドは立ち上がる。
「覚悟……、ですか。もう決まりましたよ。」
そしてアーサーの方に剣を構える。
「私は守りたい人のために、あなたを全力で止めて見せます!!」
ミルドの目に迷いはない。
「いいだろう。僕も全力でそれを阻止する。お前の代わりは用意できるんだ、お前が死のうが世界に影響は出ない。世界の選択なんて知ったことか。」
アーサーも剣を構えた。
この試練はどちらかが死ぬまで続くだろう。
そして《剣帝の試練》が始まった。
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