世界のためなら何度でも

つぼっち

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第二章、非人の村

#10 叡智の書

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「今、なんて?」

「だから、前にもここに人間が来たんだよ。そいつら全員が異世界から来たって言ってたんだよ。」

「ちなみに何人ですか?」

「あー、確か今までで6人来たって言われてるな。」

じゃあ俺を含めて7人、あの世界から来たのか。

「ありがとう、おっちゃん」

「おうよ」

その6人ももしかしたら大罪人かもしれない。

その中に女神への復讐を企んでいる人もいるはずだ。

他の6人に会うためにまずはこの世界について知らなければならない。

そのために、俺は村にある図書館を訪ねた。

村の人に聞いた話だとここが村で一番大きな図書館らしい。

って言っても図書館はここにしかないらしいけど。

俺は、適当に本を取り、机の上で読み始めた。

「えーっと、〈人間でもわかる世界史〉、〈人間でもわかる魔術の原理〉、〈人間でもわかる文字の読み書き〉……人間ディスりすぎじゃね?」

さすが人間と非人が戦ってる世界。

中でも気に入ったのが〈進撃の非人〉という本。

これは宿でじっくり読むためにレンタルしておこう。

そのほかにも〈魔族と魔獣の違い〉や〈非人と亜人の違い〉、〈魔獣人間バーサーカーについて〉、
〈エルフはなぜ美人が多いか〉や〈食べられる雑草〉など、この世界に関係する本を手当たり次第に読みまくった。

「……〈暗黒時代〉?」

俺が〈人間でもわかる世界史〉を読んでいる時に少しだけ出てきた単語だ。

気になって調べようと思ったが、不思議なことにこんな巨大な図書館で〈暗黒時代〉に関する本が一冊もなかった。

「暗黒時代についてはこの図書館の本には書いてないよ。」

俺が試行錯誤していると、突如声がかけられた。

声の方を向くとそこには美人エルフの村長がいた。

「どうしてですか?」

「暗黒時代についての本は発行が禁止されている。」

「そうなんですか……。」

俺ががっかりしていると、

「ついてこい。」

そう言って村長は図書館のカウンターの奥に歩いていく。

しばらく歩いたところで、一つの扉があった。

図書館の扉は全て木製でできているが、その扉は金属でできていた。

村長が鍵で扉を開けると、1冊の本が机に置いてあった。

「これは?」

「この村に代々伝わる〈叡智の書〉と言われる本で、過去に起きたことか全て書かれていると言われている本じゃ。」

「言われている? 村長は読んだことはないんですか?」

「あぁ、なんでも前魔神が書いた本といわれていてな、字が読めないんじゃよ。ただ異世界から来たっていった6人に見せたら解読できたそうだ。」

「へぇー。読んでもよろしいですか?」

「あぁ。ただし、この部屋から持ち出すと持ち主だけ爆発する仕組みだから注意して読むといい」

そう言って村長は部屋から出ていった。

俺は本を手に取り、パラパラとページをめくる。

文字は思った通り元の世界の文字で書かれていた。

書かれている項目はさっき見た魔術の原理や全魔獣なども書かれていたが、本の半分ほどを見るとほとんどが戦争の話や神について、暗黒時代についても書かれていた。

「暗黒時代、『今の世界は一度滅びた後の世界である。その滅びた前の時代を暗黒時代と呼ぶ。謎が多い』
か……」

俺はじっくり本を読み進めていくと、とうとう最後のページにたどり着いた。

俺は最後のページを開く。

「え……」

そこには

『異世界からの訪問者へ』

と、書かれていた。
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