上 下
11 / 11
第三章

3-3.

しおりを挟む
それにしても、アーティはいつもこんな話をしてるんだね……。大変だっただろうなぁ。
「お疲れ様でございました」
エリザベートが声をかけてくれた。
「ありがとう」
本当に助かったわ。
「あの叔母様を相手にするのは骨が折れるでしょう」
「そうなんだよー。もう、やめたい……けれど、アーティは進んでこの役をやっているのよね」
「相性の問題かと思います」
「そうね。それもあると思うけど」
「他に何がございます?」
「ううん。なんでもない。それより、次はどこに行くのかな?」
「本日はもう何も予定は入っておりません。王宮でゆっくりとお休みくださいませ」
「わかった。そうする」
「では、こちらへ」
私は、案内されるままについていった。
「おはよう、アーティ」
なぜかというか、半ば必然というか、ジェフが現れた。王家の一族やらその周辺やらが、王宮の中で歩き回っているのは不思議じゃない。そもそも、ここは我々王家の仕事場なのだから。本家だと住居も兼ねるから、王女であるリリィはここの敷地内で暮らしている。婚約者であるリリィ(外側は私、中身はアーティ)のところを、ジェフが訪れるのは日常的なことだ。仕事しろ、とは思うこともあるけれど。
「ごきげんね、ジェフ。何かよいことがあったの?」
「ああ、聞いてくれ。リリィとの正式な結婚を早めることにした。来月中には式を挙げるつもりだ」
はぁ?
「リリィは同意したの?」
「いやあ、そのことなんだが、実は……」
と言って話してくれた内容は結構衝撃的で、書くのもはばかられるけれど、書いてしまうと、要するに結ばれてしまったらしい。リリィがOKしたってジェフは言っているけれど……。
なんてことしてくれたのよ!あの女!私の体使って、ああ、折角の清らかな体だったのに、それを中身の本人の知らないところで散らしてしまうなんて!
私は動揺を隠せず、まともに喋ることができなかった。
「それは、おめ、おめ、……いやぁ!」
思わずその場を走り去ってしまったのだった。

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

処理中です...