3 / 5
第一章 勇者かと思いきや魔王でした
#2 魔王に昇格
しおりを挟む
あれから数日。悪魔、いや魔王軍に転生してから速くも数日がたってしまった。
勉強は通常の世界、元の世界よりも楽ではかどった。
魔法やこの世界の法律、人間たちについてなど興味が持てるからか転生したからか覚えは速かった。
(はぁ、やれやれここまで人間と仲が悪いとは)
勉強していくにつれわかるのは仲の悪さだった。毎回戦争状態。こんな中で元人間の転生者なんてばれれば親からも殺されかねない。
勉強も無事ノルマをこなしここまで生き残れたが生き方を選ばなくてはならないようだ。
(勇者に会いたかったなぁ…………)
せめて自分がなれないのならと考えたがそんな望みも叶いそうにない。
異世界にまで来て微妙な人生を送ることを想像してしまう。
『明日からお前には優秀な助手をつける。人類滅亡に貢献してくれ』
昨日父に言われた事を思い出した。
助手といわれても滅ぼす気にはなれない。何より元人間である。もはや見張りに近い。
心のなかでそんな事を考えているとタイミングよくドアが開く。
「失礼いたします、エルメナード・フォカロス様。私は次期魔王に支える者、アリーナと申します」
開くドアと同時に聞こえてくる声。声からして女のようだ。
その女のアリーナという者の話は続く。
「次期魔王は貴方様であり、そのサポート、手伝いを命じられ参上つかまつりました。以後、お見知りおきを……………あ、ちなみに私は朝ごはんはパン派です」
「……………………え、あ、うん」
「最初は堅苦しい奴だなぁ」とか他人事だったが、最後の一文で「こいつやベーな」に変わった。
場の状況が読めなくなり、静まりかえるこの場はとても居づらかった。
アリーナ本人はいい仕事したとでも思っているのか安堵と嬉しさからか笑顔だった。
(助手とかいうからあの魔王、正直びくびくしながら待ってたらとんでもねー奴押し付けてきたじゃねーか)
もはや魔王ですらあのやろうと化した。
そんな魔王は現在城の最上階、自室にてゲームnowという写真と一言と共にSNSに夢中だ。
そりゃあのやろうにもなる。エルメナードもとい吉原は知らないが。
ふざけんなと言いたいところだが面倒ごとが人間の時から嫌いだったので取り敢えずアリーナを下がらせた。
下げられたアリーナは勢いよく閉めたドアの音の後に、鼻歌を歌いながら去っていった。
あいつやベーな
その一言に尽きる次期魔王であった。
程なくして様子を見に来た魔王。この時に魔王の手にゲームコントローラーが握られていた為に自室でくつろいでいることを知る。
しかし、それよりも重要な事を言いたいようだ。
「我が息子よ、事態は深刻な状況にある」
深刻な顔をする魔王、兼父。片手にはゲームコントローラー。
「何事ですか?」
外の状況、この部屋の外の事など大概は知らないエルメナード〔吉原〕にとっては予想など出来ない。
そんな息子に伝える事とは何事かと聞く耳をたてる。
「驚かずに聞いてくれ」
そう言う魔王の片手にはゲームコントローラー。
「………わかりました。それで、深刻とはいったい?」
正直、片手に持ったゲームコントローラーの存在感が強すぎて集中出来ない。
しかし聞かざるをえない。父直々のお言葉なのだから。
「なんと……なんと人間族が増え、とうとう我が安泰の地に踏み入れようとしているのだ」
コントローラーを握る手に力が入っていく。
あのコントローラー大丈夫かな
「しかし我が城は落ちん。ここ数年で築き上げた城を突破できるとは思えん。だが、危険には変わりはない」
ミシミシと悲鳴をあげ始めるコントローラー。
「それは、まずいですね」
コントローラーも。
「そうだ。そこで、我が息子であるお前に人間族の代表とも言える〝勇者〟を亡き者へとしてほしい」
つまり、〝殺せ〟と。
絶対嫌です
「承知しました」
嫌なんて言える訳がない。逆にこっちが殺される。
死んだばっかのもあるがゲームコントローラーを必死に握る魔王に殺されるなんて一生、いや来世辺りまで黒歴史だ。
そんな事では死ねないとしぶしぶでも承知する他ない。
潔い答えが返ってくると魔王はご機嫌になったようでヒートアップする。
「ふっ、確かに我が城まで辿り着き、上から『よくぞここまで来た!さぁ私の城を攻略できるかな?』と言いたいが正直、ね?」
(あーその言葉聞いたことある気がする)
それは生前、クラスで不登校気味な奴がいて少し仲が良かったため彼の家までプリントなど届けているとき、インターホンを押すと必ず、
『フハハハハハ、よくぞ来た。ゲームをするために引きこもった我を呼び出すことは出来るかな?』
というセリフだ。しまいに、
『引きこもりで培った居留守と暇をもて余して出来たトラップは最強だ!』
とかほざいていた。無視して突撃たしが攻略とやらに一時間近くかかってしまったのを覚えている。そしてもう忘れたい。
そんなくそみたいな記憶。
思い出していると魔王は真剣に聞いてくれていると勘違いしたのか更に続ける。
「もし、来てしまったら正直、勝てるかはわからない」
どうやら現在の魔王である父はビビっているらしい。
「そんな訳で、今からは、エルメナード・フォカロス、お前を魔王とする!」
唐突な魔王の言い草に、
嫌です!とは言えず、
「承知しました」
しか、言えなかったのだった。
勉強は通常の世界、元の世界よりも楽ではかどった。
魔法やこの世界の法律、人間たちについてなど興味が持てるからか転生したからか覚えは速かった。
(はぁ、やれやれここまで人間と仲が悪いとは)
勉強していくにつれわかるのは仲の悪さだった。毎回戦争状態。こんな中で元人間の転生者なんてばれれば親からも殺されかねない。
勉強も無事ノルマをこなしここまで生き残れたが生き方を選ばなくてはならないようだ。
(勇者に会いたかったなぁ…………)
せめて自分がなれないのならと考えたがそんな望みも叶いそうにない。
異世界にまで来て微妙な人生を送ることを想像してしまう。
『明日からお前には優秀な助手をつける。人類滅亡に貢献してくれ』
昨日父に言われた事を思い出した。
助手といわれても滅ぼす気にはなれない。何より元人間である。もはや見張りに近い。
心のなかでそんな事を考えているとタイミングよくドアが開く。
「失礼いたします、エルメナード・フォカロス様。私は次期魔王に支える者、アリーナと申します」
開くドアと同時に聞こえてくる声。声からして女のようだ。
その女のアリーナという者の話は続く。
「次期魔王は貴方様であり、そのサポート、手伝いを命じられ参上つかまつりました。以後、お見知りおきを……………あ、ちなみに私は朝ごはんはパン派です」
「……………………え、あ、うん」
「最初は堅苦しい奴だなぁ」とか他人事だったが、最後の一文で「こいつやベーな」に変わった。
場の状況が読めなくなり、静まりかえるこの場はとても居づらかった。
アリーナ本人はいい仕事したとでも思っているのか安堵と嬉しさからか笑顔だった。
(助手とかいうからあの魔王、正直びくびくしながら待ってたらとんでもねー奴押し付けてきたじゃねーか)
もはや魔王ですらあのやろうと化した。
そんな魔王は現在城の最上階、自室にてゲームnowという写真と一言と共にSNSに夢中だ。
そりゃあのやろうにもなる。エルメナードもとい吉原は知らないが。
ふざけんなと言いたいところだが面倒ごとが人間の時から嫌いだったので取り敢えずアリーナを下がらせた。
下げられたアリーナは勢いよく閉めたドアの音の後に、鼻歌を歌いながら去っていった。
あいつやベーな
その一言に尽きる次期魔王であった。
程なくして様子を見に来た魔王。この時に魔王の手にゲームコントローラーが握られていた為に自室でくつろいでいることを知る。
しかし、それよりも重要な事を言いたいようだ。
「我が息子よ、事態は深刻な状況にある」
深刻な顔をする魔王、兼父。片手にはゲームコントローラー。
「何事ですか?」
外の状況、この部屋の外の事など大概は知らないエルメナード〔吉原〕にとっては予想など出来ない。
そんな息子に伝える事とは何事かと聞く耳をたてる。
「驚かずに聞いてくれ」
そう言う魔王の片手にはゲームコントローラー。
「………わかりました。それで、深刻とはいったい?」
正直、片手に持ったゲームコントローラーの存在感が強すぎて集中出来ない。
しかし聞かざるをえない。父直々のお言葉なのだから。
「なんと……なんと人間族が増え、とうとう我が安泰の地に踏み入れようとしているのだ」
コントローラーを握る手に力が入っていく。
あのコントローラー大丈夫かな
「しかし我が城は落ちん。ここ数年で築き上げた城を突破できるとは思えん。だが、危険には変わりはない」
ミシミシと悲鳴をあげ始めるコントローラー。
「それは、まずいですね」
コントローラーも。
「そうだ。そこで、我が息子であるお前に人間族の代表とも言える〝勇者〟を亡き者へとしてほしい」
つまり、〝殺せ〟と。
絶対嫌です
「承知しました」
嫌なんて言える訳がない。逆にこっちが殺される。
死んだばっかのもあるがゲームコントローラーを必死に握る魔王に殺されるなんて一生、いや来世辺りまで黒歴史だ。
そんな事では死ねないとしぶしぶでも承知する他ない。
潔い答えが返ってくると魔王はご機嫌になったようでヒートアップする。
「ふっ、確かに我が城まで辿り着き、上から『よくぞここまで来た!さぁ私の城を攻略できるかな?』と言いたいが正直、ね?」
(あーその言葉聞いたことある気がする)
それは生前、クラスで不登校気味な奴がいて少し仲が良かったため彼の家までプリントなど届けているとき、インターホンを押すと必ず、
『フハハハハハ、よくぞ来た。ゲームをするために引きこもった我を呼び出すことは出来るかな?』
というセリフだ。しまいに、
『引きこもりで培った居留守と暇をもて余して出来たトラップは最強だ!』
とかほざいていた。無視して突撃たしが攻略とやらに一時間近くかかってしまったのを覚えている。そしてもう忘れたい。
そんなくそみたいな記憶。
思い出していると魔王は真剣に聞いてくれていると勘違いしたのか更に続ける。
「もし、来てしまったら正直、勝てるかはわからない」
どうやら現在の魔王である父はビビっているらしい。
「そんな訳で、今からは、エルメナード・フォカロス、お前を魔王とする!」
唐突な魔王の言い草に、
嫌です!とは言えず、
「承知しました」
しか、言えなかったのだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない
AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。
かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。
俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。
*書籍化に際してタイトルを変更いたしました!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
乙女ゲームのモブ(雑に強い)の俺、悪役令嬢の恋路を全力でサポートする。惨劇の未来から王国を救うために奔走します!
夏芽空
ファンタジー
魔法学園に通う男子生徒、リヒト・シードランは、とあるきっかけで前世の記憶を取り戻した。
それによって気づいたことがある。
この世界が、前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム『マジカルラブ・シンフォニック』の世界であること。
そしてそのゲームにおいて、リヒト・シードランは登場しないキャラクター――つまりはモブであること。
これらの驚きの事実が判明するが、群を抜いてヤバいのがある。
マジカルラブ・シンフォニックの後半、王国民の半分が死亡する、という惨劇イベントが発生してしまうのだ。
それはどのルートを通っても必ず発生してしまう、回避不可能なイベントである。
惨劇の原因となるのは、ゲームの悪役令嬢、リリーナ・イビルロータスの闇堕ち。
恋路が叶わなかった彼女は負の感情に囚われて闇堕ちしてしまい暴走、結果として大量虐殺を引き起こしてしまうのだ。
そんな未来を変える方法は一つ。
リリーナの恋路を叶えて、闇堕ちを防ぐことだ。
彼女の恋を叶えるため、リヒトは全力でサポートすることを決めた。
使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。
だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。
それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。
王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!?
けれど、そこには……。
※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう!
そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね!
なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!?
欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!?
え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。
※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません
なろう日間週間月間1位
カクヨムブクマ14000
カクヨム週間3位
他サイトにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる