5 / 33
リアマーチは忘れていない
しおりを挟む
毎日を一日置きに、一日置きを三日に、そうしていく内に一週間が過ぎた時、茅乃はとうとう、冷静さを欠いた行動に出てしまっていた。
悪い事をしている、という自覚はあったのだけれど、それでも、これで彼の思い通りにしてしまえば、今まで築いてきた細い繋がりが無かった事になってしまうのではないか。そう考えた時には携帯電話を握り締め、ただひたすらに彼が折れるまでの根気比べをしていたのである。
「だからって、人の家の前で待ち伏せして、大声で俺に弄ばれたって言いふらす、って言い出すのはどうかと思う」
そういうの、脅迫って言うんだぞ。
言いながら、幸喜はうんざりした顔で欠伸を一つ零している。
今現在二人が並んで歩いている、幸喜達の住む最寄り駅からは数駅先にあるこの駅は、複数の路線が乗り入れているターミナル駅だけあり、駅に直結している商業施設も多い。
家電量販店も複数あり、舞台が行われている小さな劇場や大型の映画館、美術館なども駅周辺に密集している為か、比較的若い年代の者が多く、その中の一部でしかない二人は然程目立った様子には見えないだろう。
肩を竦めて覗き見た幸喜は、ここ一週間、意図的に茅乃との連絡を経ち、音信不通の上に自然消滅を狙っていた。らしい。
忙しい時は忙しいと言ってくれていたのに、突然何の連絡もなくなったとなれば、事故か事件にでも巻き込まれたか、と当初は心配をしていたけれど、そんな気持ちも、いつもより少し時間をずらして訪れたバス停から、呑気に洗濯物を干している彼の姿が見えた時にはすっかりと消え失せてしまった。
意図的に連絡を絶とうとしているのが理解出来た以上、茅乃は何としてもそれを阻止しなければならなかった。
そのせいで、脅迫まがいのメッセージを送りつけていたとしても、だ。
「違います。幸喜さんがいけないんです。あれだけ私が念を押してこれが最後にならないようにって言っていたのに、一週間も放置するなんて。私はただ健気に待っていたのに」
頰に手を当てながら、さも悲しい様子で茅乃が言うと、彼は眉間に皺を寄せて頭を振った。
「事実無根の人間を脅しておいて、よく健気って言えたな」
「だって、そうでもしないと幸喜さん連絡途絶えるじゃないですか」
「そうしたいんだけどな」
そうは言いながらも、結局の所、茅乃を拒絶しないのは、彼の人の良さからだろう。
斜め後ろから見上げる彼の顔は、週末のせいか、少しくたびれて見える。
「私、幸喜さんが優しくて押しに弱くて突き放すのが下手で面倒見がいいこと、ちゃんと知ってますから」
彼の人の良さにつけ込んで、にっこりと笑った茅乃がそう言えば、幸喜は渋面を浮かべて頭の後ろをがしがしと掻いている。
貶されているのだか誉められているのだかわからない言葉に、きっと戸惑っているのだろう。
年上の男性がそうしている姿は物珍しく、茅乃が顔を覗き込むと、「ああもう、うるさいうるさい」と彼は片手を振って距離を離そうとしている。
別段からかっているわけでもないのだけれど、大人である彼が幼い子供のようになっているのがおかしくて、茅乃はくすくすと吐息混じりに笑みを溢した。
駅構内には飲食店や書店、ドラッグストアや小さなスーパーまでもあり、改札の外には人の波が途切れる事なく流れている。
改札を出た先には直結の商業施設が左右に並び、先に続くロータリーの向こう側にも沢山の人が見えた。
これ程大きな駅ならば、幸喜と茅乃が並んで歩いていようと、然程気に留める者もいないだろう。
同じ場所で会う事に幸喜が難色を示しているのは、茅乃も理解していた。
何をするにも親の同意が必要な年齢である茅乃が何と言おうと、親や周囲の人間が彼を犯罪者とでも言ってしまえば、そう見られてしまうのだろう事も。
結局、人は自分の信じたいものしか信じないいきものだから、と考えて、茅乃は密かに息を吐き出した。
「そもそも、忙しかったのは本当の事だから」
昨日も残業だったし、と仕事について思うところがあるのか、忌々しげに唇を噛んで言う幸喜は携帯電話を睨むように眺めると、目的の場所を確認しているらしい。
折角大きな駅に出るのなら、実際に洗濯に使える便利な道具を見てみよう、と事前に計画を立てていたのだ。
面倒そうにしてはいるけれど、そうした所は律儀なようで、茅乃は小さく笑みを浮かべながらも、口先を尖らせる。
「それでも、一週間以上放置されるのは酷いです。それに、一言でも送ってくれれば私もあんな事はしません」
拒絶される、意地悪をされる、というのなら、茅乃も対応が変わっていただろうが、そのどちらでもないと言うのなら、話は別だ。
放置された報復として、容赦ない仕打ちも致し方ない事と受け止めて貰う他はない、と不満げに言うと、彼は呆れた様子で、ともかく目的のものを見に行こう、と言いかけて、全ての動作をぴたりと止めてしまう。
まるで、時間が止まったかのように。
「どうしたんですか?」
不自然に一箇所に視線を止めたままま動かない幸喜を不審に思い、その視線の先を追ってみると、見知らぬ人物が彼の前までゆっくりと歩いてくる。
ふんわりとしたボブカット、淡い色合いのワンピースと白いカーディガン、目立たないけれどきちんとした印象を持たせるアクセサリー。
少し垂れ気味の優しげな目が印象的な女性だ。
「……、志穂、さん」
志穂、と呼ばれたその人は、嬉しそうに手を振って彼の名前を呼んだ。
「やっぱり。幸喜くん」
親しげな様子ではあるけれど、何故だか二人の間には温度差があるように感じられた。
女性は笑みを零しているけれど、幸喜の表情は硬く強張っていて、ぎこちないのだ。
年齢は幸喜と同じ程に見えるけれど、彼の様子を見るに、少し年上だろうか。
そう考える茅乃は、幸喜の少し後ろに下がり、見えにくい角度に移動するけれど、女性は少女のような無邪気さで茅乃を覗き込み、笑顔で見つめている。
「そっちの子は、お友達?」
「あ、ええと……」
口ごもり、視線をさまよわせている幸喜を見て、茅乃は誰にも気づかれないよう、小さく息を吐き出した。
笑顔を作るのは簡単だ。
頰を持ち上げて、口端を引き上げて、目元を和らげて。
その人に合わせた自分を演じてみせるだけ。
「初めまして」
そう言って、茅乃は幸喜の前に出た。
幸喜と一緒にいたのが子供だった事に驚いたのか、女性は目を丸くしたけれど、瞬き一つの間には、再び優しそうな笑顔を浮かべている。
「初めまして。私は、瀬尾志穂です。幸喜くんの姉で……、といっても、義理の、だけれど」
義理の姉、と言う割には身内ならではの親密さを感じられないので、親の再婚相手の連れ子、もしくは、兄弟姉妹の配偶者だろうか。
笑顔を保ったままそう考える、茅乃は両手を合わせて子供のように頷いてみせた。
「そうだったんですね。私は羽中茅乃です」
そう言うと、側にいる幸喜が引き攣ったような気配がしたけれど、茅乃は平然とした顔で更に言葉を続ける。
「実は、先日駅で倒れていた所を助けて貰って。今日はそのお礼をさせて頂こうと思って瀬尾さんをお呼びしたんです」
「まあ、そうなの」
「はい!」
息を吸うように無邪気な笑顔で嘘を塗り固めていく茅乃に対し、幸喜の顔色は悪くなっていく一方だが、どうにか話題を切り替えたいのだろう、慌てて二人の間に入り、額を押さえながら懸命に話題を探している。
「あー……、ええと、志穂さんは、買い物とか?」
「久しぶりに会う友達と食事でも行こうって約束しているの」
「そ、そっか」
ぎこちなく笑みを浮かべた幸喜は、その先の言葉が紡ぐ事が出来ずに、唇を緩く噛み、俯いている。
周囲は煩いのに、会話が続かない事で沈黙がやけに長く感じられていて、居た堪れなくなった茅乃が幸喜を見つめていると、志穂がぽつりと呟いていて。
「……でも、良かった、元気そうで。心配したのよ、ずっと顔を見ていなかったから。仕事で忙しいのかもしれないけど、また顔を見せて頂戴ね」
あの人も心配していたから、と彼女が言えば、幸喜は頷く事なく視線を逸らしている。
その明らかな拒絶の態度に、茅乃は思わず息を吸い込んだ。
ひゅう、と喉の奥に入り込む空気が、内側から一気に身体を凍らせていくようで、不快で堪らない。
気がついた時には幸喜の服の裾を掴み、引っ張っていた。
生地が痛んでしまうだとか、子供染みた仕草だとか、いつもなら気にする事も、今の茅乃には考える事も出来なかった。
「お話中にすみません。お気に入りのカフェが混んでしまうので、そろそろ失礼しても大丈夫ですか?」
茅乃が急かすようにそう言って視線を向けると、幸喜は安堵の表情を浮かべて、ほ、と息を吐き出し、慌てて合わせるように頷いた。
引き攣った笑みを浮かべているが、茅乃がいつも以上にはしゃいで服の裾を引っ張ったりその場で軽く飛び跳ねたりしているので、呆れているように見えるだろうか。
志穂は嘘に気づいているのかいないのか、わからないけれども、「ごめんなさいね、引き止めちゃって」と微笑ましそうな笑顔を浮かべている。
忙しない茅乃にせっつかれるように、幸喜は軽く片手を上げて、力無くひらひらと振っていて。
「志穂さん。じゃあ、これで」
「ええ。二人共、楽しんできてね」
手を振る彼の横顔は、酷く乾いた笑みを浮かべていた。
悪い事をしている、という自覚はあったのだけれど、それでも、これで彼の思い通りにしてしまえば、今まで築いてきた細い繋がりが無かった事になってしまうのではないか。そう考えた時には携帯電話を握り締め、ただひたすらに彼が折れるまでの根気比べをしていたのである。
「だからって、人の家の前で待ち伏せして、大声で俺に弄ばれたって言いふらす、って言い出すのはどうかと思う」
そういうの、脅迫って言うんだぞ。
言いながら、幸喜はうんざりした顔で欠伸を一つ零している。
今現在二人が並んで歩いている、幸喜達の住む最寄り駅からは数駅先にあるこの駅は、複数の路線が乗り入れているターミナル駅だけあり、駅に直結している商業施設も多い。
家電量販店も複数あり、舞台が行われている小さな劇場や大型の映画館、美術館なども駅周辺に密集している為か、比較的若い年代の者が多く、その中の一部でしかない二人は然程目立った様子には見えないだろう。
肩を竦めて覗き見た幸喜は、ここ一週間、意図的に茅乃との連絡を経ち、音信不通の上に自然消滅を狙っていた。らしい。
忙しい時は忙しいと言ってくれていたのに、突然何の連絡もなくなったとなれば、事故か事件にでも巻き込まれたか、と当初は心配をしていたけれど、そんな気持ちも、いつもより少し時間をずらして訪れたバス停から、呑気に洗濯物を干している彼の姿が見えた時にはすっかりと消え失せてしまった。
意図的に連絡を絶とうとしているのが理解出来た以上、茅乃は何としてもそれを阻止しなければならなかった。
そのせいで、脅迫まがいのメッセージを送りつけていたとしても、だ。
「違います。幸喜さんがいけないんです。あれだけ私が念を押してこれが最後にならないようにって言っていたのに、一週間も放置するなんて。私はただ健気に待っていたのに」
頰に手を当てながら、さも悲しい様子で茅乃が言うと、彼は眉間に皺を寄せて頭を振った。
「事実無根の人間を脅しておいて、よく健気って言えたな」
「だって、そうでもしないと幸喜さん連絡途絶えるじゃないですか」
「そうしたいんだけどな」
そうは言いながらも、結局の所、茅乃を拒絶しないのは、彼の人の良さからだろう。
斜め後ろから見上げる彼の顔は、週末のせいか、少しくたびれて見える。
「私、幸喜さんが優しくて押しに弱くて突き放すのが下手で面倒見がいいこと、ちゃんと知ってますから」
彼の人の良さにつけ込んで、にっこりと笑った茅乃がそう言えば、幸喜は渋面を浮かべて頭の後ろをがしがしと掻いている。
貶されているのだか誉められているのだかわからない言葉に、きっと戸惑っているのだろう。
年上の男性がそうしている姿は物珍しく、茅乃が顔を覗き込むと、「ああもう、うるさいうるさい」と彼は片手を振って距離を離そうとしている。
別段からかっているわけでもないのだけれど、大人である彼が幼い子供のようになっているのがおかしくて、茅乃はくすくすと吐息混じりに笑みを溢した。
駅構内には飲食店や書店、ドラッグストアや小さなスーパーまでもあり、改札の外には人の波が途切れる事なく流れている。
改札を出た先には直結の商業施設が左右に並び、先に続くロータリーの向こう側にも沢山の人が見えた。
これ程大きな駅ならば、幸喜と茅乃が並んで歩いていようと、然程気に留める者もいないだろう。
同じ場所で会う事に幸喜が難色を示しているのは、茅乃も理解していた。
何をするにも親の同意が必要な年齢である茅乃が何と言おうと、親や周囲の人間が彼を犯罪者とでも言ってしまえば、そう見られてしまうのだろう事も。
結局、人は自分の信じたいものしか信じないいきものだから、と考えて、茅乃は密かに息を吐き出した。
「そもそも、忙しかったのは本当の事だから」
昨日も残業だったし、と仕事について思うところがあるのか、忌々しげに唇を噛んで言う幸喜は携帯電話を睨むように眺めると、目的の場所を確認しているらしい。
折角大きな駅に出るのなら、実際に洗濯に使える便利な道具を見てみよう、と事前に計画を立てていたのだ。
面倒そうにしてはいるけれど、そうした所は律儀なようで、茅乃は小さく笑みを浮かべながらも、口先を尖らせる。
「それでも、一週間以上放置されるのは酷いです。それに、一言でも送ってくれれば私もあんな事はしません」
拒絶される、意地悪をされる、というのなら、茅乃も対応が変わっていただろうが、そのどちらでもないと言うのなら、話は別だ。
放置された報復として、容赦ない仕打ちも致し方ない事と受け止めて貰う他はない、と不満げに言うと、彼は呆れた様子で、ともかく目的のものを見に行こう、と言いかけて、全ての動作をぴたりと止めてしまう。
まるで、時間が止まったかのように。
「どうしたんですか?」
不自然に一箇所に視線を止めたままま動かない幸喜を不審に思い、その視線の先を追ってみると、見知らぬ人物が彼の前までゆっくりと歩いてくる。
ふんわりとしたボブカット、淡い色合いのワンピースと白いカーディガン、目立たないけれどきちんとした印象を持たせるアクセサリー。
少し垂れ気味の優しげな目が印象的な女性だ。
「……、志穂、さん」
志穂、と呼ばれたその人は、嬉しそうに手を振って彼の名前を呼んだ。
「やっぱり。幸喜くん」
親しげな様子ではあるけれど、何故だか二人の間には温度差があるように感じられた。
女性は笑みを零しているけれど、幸喜の表情は硬く強張っていて、ぎこちないのだ。
年齢は幸喜と同じ程に見えるけれど、彼の様子を見るに、少し年上だろうか。
そう考える茅乃は、幸喜の少し後ろに下がり、見えにくい角度に移動するけれど、女性は少女のような無邪気さで茅乃を覗き込み、笑顔で見つめている。
「そっちの子は、お友達?」
「あ、ええと……」
口ごもり、視線をさまよわせている幸喜を見て、茅乃は誰にも気づかれないよう、小さく息を吐き出した。
笑顔を作るのは簡単だ。
頰を持ち上げて、口端を引き上げて、目元を和らげて。
その人に合わせた自分を演じてみせるだけ。
「初めまして」
そう言って、茅乃は幸喜の前に出た。
幸喜と一緒にいたのが子供だった事に驚いたのか、女性は目を丸くしたけれど、瞬き一つの間には、再び優しそうな笑顔を浮かべている。
「初めまして。私は、瀬尾志穂です。幸喜くんの姉で……、といっても、義理の、だけれど」
義理の姉、と言う割には身内ならではの親密さを感じられないので、親の再婚相手の連れ子、もしくは、兄弟姉妹の配偶者だろうか。
笑顔を保ったままそう考える、茅乃は両手を合わせて子供のように頷いてみせた。
「そうだったんですね。私は羽中茅乃です」
そう言うと、側にいる幸喜が引き攣ったような気配がしたけれど、茅乃は平然とした顔で更に言葉を続ける。
「実は、先日駅で倒れていた所を助けて貰って。今日はそのお礼をさせて頂こうと思って瀬尾さんをお呼びしたんです」
「まあ、そうなの」
「はい!」
息を吸うように無邪気な笑顔で嘘を塗り固めていく茅乃に対し、幸喜の顔色は悪くなっていく一方だが、どうにか話題を切り替えたいのだろう、慌てて二人の間に入り、額を押さえながら懸命に話題を探している。
「あー……、ええと、志穂さんは、買い物とか?」
「久しぶりに会う友達と食事でも行こうって約束しているの」
「そ、そっか」
ぎこちなく笑みを浮かべた幸喜は、その先の言葉が紡ぐ事が出来ずに、唇を緩く噛み、俯いている。
周囲は煩いのに、会話が続かない事で沈黙がやけに長く感じられていて、居た堪れなくなった茅乃が幸喜を見つめていると、志穂がぽつりと呟いていて。
「……でも、良かった、元気そうで。心配したのよ、ずっと顔を見ていなかったから。仕事で忙しいのかもしれないけど、また顔を見せて頂戴ね」
あの人も心配していたから、と彼女が言えば、幸喜は頷く事なく視線を逸らしている。
その明らかな拒絶の態度に、茅乃は思わず息を吸い込んだ。
ひゅう、と喉の奥に入り込む空気が、内側から一気に身体を凍らせていくようで、不快で堪らない。
気がついた時には幸喜の服の裾を掴み、引っ張っていた。
生地が痛んでしまうだとか、子供染みた仕草だとか、いつもなら気にする事も、今の茅乃には考える事も出来なかった。
「お話中にすみません。お気に入りのカフェが混んでしまうので、そろそろ失礼しても大丈夫ですか?」
茅乃が急かすようにそう言って視線を向けると、幸喜は安堵の表情を浮かべて、ほ、と息を吐き出し、慌てて合わせるように頷いた。
引き攣った笑みを浮かべているが、茅乃がいつも以上にはしゃいで服の裾を引っ張ったりその場で軽く飛び跳ねたりしているので、呆れているように見えるだろうか。
志穂は嘘に気づいているのかいないのか、わからないけれども、「ごめんなさいね、引き止めちゃって」と微笑ましそうな笑顔を浮かべている。
忙しない茅乃にせっつかれるように、幸喜は軽く片手を上げて、力無くひらひらと振っていて。
「志穂さん。じゃあ、これで」
「ええ。二人共、楽しんできてね」
手を振る彼の横顔は、酷く乾いた笑みを浮かべていた。
1
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
ザ・マニアック
フルーツパフェ
大衆娯楽
現在の最新作
高級官僚である父親の反対を押し切って警察官の道を歩んだ桜井美里(22)。
親の七光りの誹りから逃れたい彼女は成果を急ぐあまり、初任務のパトロールで一般人男性を誤認逮捕してしまう。
事件が明るみに出れば父親の立場も危うくなる。
危惧した美里は刑事補償として同僚達と一緒にご奉仕をすることに!?
しかしながら清楚な道を歩んできた美里に羞恥の道は歩みがたく。
恋人はパワーショベルの達人
紅灯空呼
ライト文芸
典型的な文系女子の大森正子が、ある日パソコンで人生最大の失敗をやらかした。10年もの歳月をかけて集めてきた大切なWEB小説がぶっ飛んだのだ。それがきっかけでプログラマー男性との交際が始まる、かに思えたが、その男は去ってしまう。その後ネット上で知り合った謎のハッカーとのネット交際が始まるものの、わずか1週間でその人物が意外なことに以前からの顔見知りだと判明する。それから間もなく、家族や自分に不幸が起き、正子は悩み苦しみ、そして……。
※本小説内の人物・会社・WEBサイト・作品・TV番組・映画・事件・OS・処理環境・アプリなどはすべて架空のものです。暴力など反社会的行為や法律違反・差別等を助長する意図は一切ありません。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
2度もあなたには付き合えません
cyaru
恋愛
1度目の人生。
デヴュタントで「君を見初めた」と言った夫ヴァルスの言葉は嘘だった。
ヴァルスは思いを口にすることも出来ない恋をしていた。相手は王太子妃フロリア。
フロリアは隣国から嫁いで来たからか、自由気まま。当然その所業は貴族だけでなく民衆からも反感を買っていた。
ヴァルスがオデットに婚約、そして結婚を申し込んだのはフロリアの所業をオデットが惑わせたとして罪を着せるためだった。
ヴァルスの思惑通りに貴族や民衆の敵意はオデットに向けられ遂にオデットは処刑をされてしまう。
処刑場でオデットはヴァルスがこんな最期の時まで自分ではなくフロリアだけを愛し気に見つめている事に「もう一度生まれ変われたなら」と叶わぬ願いを胸に抱く。
そして、目が覚めると見慣れた光景がオデットの目に入ってきた。
ヴァルスが結婚を前提とした婚約を申し込んでくる切欠となるデヴュタントの日に時間が巻き戻っていたのだった。
「2度もあなたには付き合えない」
デヴュタントをドタキャンしようと目論むオデットだが衣装も用意していて参加は不可避。
あの手この手で前回とは違う行動をしているのに何故かヴァルスに目を付けられてしまった。
※章で分けていますが序章は1回目の人生です。
※タグの①は1回目の人生、②は2回目の人生です
※初日公開分の1回目の人生は苛つきます。
★↑例の如く恐ろしく、それはもう省略しまくってます。
★11月2日投稿開始、完結は11月4日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
シャウトの仕方ない日常
鏡野ゆう
ライト文芸
航空自衛隊第四航空団飛行群第11飛行隊、通称ブルーインパルス。
その五番機パイロットをつとめる影山達矢三等空佐の不本意な日常。
こちらに登場する飛行隊長の沖田二佐、統括班長の青井三佐は佐伯瑠璃さんの『スワローテールになりたいの』『その手で、愛して。ー 空飛ぶイルカの恋物語 ー』に登場する沖田千斗星君と青井翼君です。築城で登場する杉田隊長は、白い黒猫さんの『イルカカフェ今日も営業中』に登場する杉田さんです。※佐伯瑠璃さん、白い黒猫さんには許可をいただいています※
※不定期更新※
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※
※影さんより一言※
( ゚д゚)わかっとると思うけどフィクションやしな!
※第2回ライト文芸大賞で読者賞をいただきました。ありがとうございます。※
お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。
「だって顔に大きな傷があるんだもん!」
体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。
実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。
寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。
スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。
※フィクションです。
※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる