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第一章 高等学院編 第一編 魔法化学の夜明け(一年次・秋)
EP.XIII 魔法とは何か(解答編)
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テセウスは父親の葬儀の後、十月七日にアポロに誓いを捧げた。その日、若者たちがクレタから街に戻ってきたからだ。テセウスが若者たちを安全に連れ帰ったことで街のものは皆大いに歓喜した。彼らの持ち帰った食料の残りを鍋でゆでて、皆でそれを一緒に食べた。
その祝宴では、いわゆる「エリジオーネ」と呼ばれる、テセウスが祈りの際に使ったような上質な羊毛に乗せられた枝付きのオリーブや、ありとあらゆる種類の果物が運ばれてきた。
その後には、彼らは盛大に歌を歌った。
『エリジオーネ、それは幸運に恵まれた人たちからの贈り物。
それは、無花果とパン。
壺入りの蜂蜜と体を綺麗にするオイル。
それからすぐに眠ってしまう強すぎるワインさ』
この儀式は『ヘラクレスの子どもたち』にも取り挙げられており、アテネの人々によって今日まで続けられている。だが、これについては多くの者が問題点を唱えている。
テセウスが若者と共に航海して戻ってきた船には、30本の櫂があった。アテネの人々はこれをファレロンのデメトリウスの時代にも保存していた。このため、朽ちた櫂は徐々に新たな木材に置き換えられていき、論理的な問題から哲学者らにとって恰好の議論の的となった。乃ち、ある者はその船はもはや同じものとは言えないとし、別の者はまだ同じものだと主張したのである。
無限回廊書架 DDC. 109
――プルタルコス『対比列伝 - テセウス伝記』第二十二章、第二十三章 A.D. 102
ミルヴァの言った説が成り立たないのなら、やはり虚数以外のマナは、神様によって創られたということになるのだろうか。そして、神様の使った虚数の魔法によって他の元素が生み出されたと仮定することができる。
けれども、僕にはどうしてもその考えが正しいとは思えなかった。そもそもマナとは何だろうか。マナの属性の違いとは何によって決まるのだろうか。そこから考え始めなければならなくなってしまった。
まず、恐らくだが虚数と他の属性のマナの関係性に親子関係といったものはないように思える。いずれも魔法を使うための資源となることから、それらは同列に扱うべきものではないだろうか。神様が天と地を創る前の場所には虚数のマナしかなかったというだけで、他の属性のマナが出現できる状態は整っていたということだ。
『出現できる状態が整っている』ということは、それらの元素の元となるものが何かあったはずだ。
そう、それこそが――根源と呼ばれるものなのではないだろうか。
その原始元素とでも呼ぶべきものから各属性のマナが作られて、世界に充満していったという考えはどうだろうか。
そもそも原初の魔法、それこそ神髄魔法と呼ばれる、神の御業は、本当に虚数という単なる一属性の魔法でしかないのだろうか。
神様であればどの属性の魔法であっても、不自由なく使えたりしそうなものだ。それこそ、神様の使う魔法は、原始元素属性の魔法ではないだろうか。
「さて、ミルヴァ君の言う異世界説、それは一つの仮定として面白いが、それだと別の世界ではすでに一般的に魔法が使われていることになり、初めての魔法としての考察ができなくなるので、今回は原初の世界の天地創造として考えてもらおう。
他属性のマナが生まれた過程について、何か意見のある人はいるかね」
――ちょうどいい。いま考えていたことを言ってみよう。
「はい、よろしいでしょうか」
「おぉ、コーダ君だね。よろしい、述べたまえ」
そして、虚数も他のマナも、ある共通の原始元素から作られたという考えを先生に話した。神様の使った魔法が、その原始元素属性の魔法ではないかという説明をした。
「うむ、自力でその仮説にたどり着くとは実に素晴らしい。では、コーダ君。魔法とは何か、その答えは出たかね?」
――神髄魔法こそ起源にして頂点。
最も偉大にして、根源に至る魔法。
それならば……、
「魔法とは――自然の法則や物質の構成を、再構築することです」
「……そのとおぉぉぉぉりぃぃぃぃ!!!」
うわっ!びっくりした!
急に大きな声出すんだもんな…。
「神が! 天地を創造された!
それが魔法であるならば!
原理的には、誰でもそれが、可能なはずなのである!
…ただ、惜しむらくはその理論、工程を具に理解し、計算できる能力が無くてはならず、それは人間には到底計算できるものではない。
また、原始元素に干渉する方法を会得しなければならないが、これは原始元素に対する加護がなくては使うことができない。
現在の私の専らの研究内容は、後天的に元素についての加護を会得することが可能なのかどうか、それを過去の歴史の中から探すことである」
「………」
……どうしよう。僕、後天的に光・闇・虚数の加護を得ているのですが。ここでそれを発表するとまた話がややこしくなりそうだし、それに誰にでも真似できる方法ではないので、黙っておくことにした。
――いや、待てよ。
加護を得ているとその属性に対する<魔力酔い>がほとんど出なくなる。そもそもなぜ魔力の強いものに触れると魔力酔いが起きるのかというと、自分の持っている属性の魔力や生命力と反発するからだ。
ではなぜ反発するのか。順応する属性と反発する属性の違いは何か。
後天的に使える属性の増えた僕だからこそ分かる。使える属性が増えるということは感覚のチャンネルが増えることだ。たとえば、僕ら人間族は、右手・左手・右足・左足をそれぞれ動かすことができる。
――それはなぜか。
あらかじめ動かし方が本能に記憶されているからだ。けれど魔力の感知、脈覚については本能に記憶されていない。親から受け継がない。右手も左手も右足も左足も、どの部位の動かし方も自分で見つけるしかない。それは、幼い間に慣れ親しんだ環境や食べてきたものによって、馴染みやすい属性が固定していき、自分の加護が決まる。
だから周囲に魔法がない環境で育った人間族には脈覚を使う機会がなく、成長とともに魔法に対する適性を失う。体には経絡という器官が残っているが、その役割は休眠してしまっている。
体の部位の例で言うなら、人によっては右手も左手も動かせるようになるし、どれも動かせないままの人もいる。手首や指の動きまで細かく制御できる人もいれば、肘や肩などの大雑把な動きしかできないものもいる。
あるいは、手足の動かし方は分からないが、首の動かし方や目の開き方を自分で見つけることもある。
僕の場合で言えば、両手両足が動かせる状態だったところに、首と目と口の動かし方を教えてもらったようなものだ。
一度動かし方が分かってしまえば、恰も最初からそれを知っていたかのように振る舞えるし、違和感など無い。けれども動かし方が分かるまでは、なかなか動かせるものではない。
たとえば耳。エルフ族や猫人族は耳を動かすことができる。人間族でも原理的には耳は動かせるはずだが、ほとんどの人間は動かし方が分からない。動かす必要もないし、進化の過程でその情報が本能から抜け落ちてしまったからだ。
自分にない加護の属性の魔力を受け入れるというのはそれほどまでに難しい。難しいが一度できてしまえば簡単なのだ。
――だが、原始元素の加護を得るというのは、それ以上に難しい。
例えるなら、翼やしっぽだ。鳥人族や狼人族には翼やしっぽがあるが、もはや人間族には存在しないその部位を、どのように動かすかを悟らなくてはならない。耳のように部位があっても動かし方の情報だけが進化の過程で抜け落ちたどころか、部位自体が無くなってしまっている、あるいはもとより身に備わっていないものについての、動かし方を理解しなければならないという難解さに等しい。
けれども……、そう、けれども、だ。
頭の中や体の構造は各種族ごとに違う部分は色々あって、それぞれ自分の種族の体に合うように本能は最適化されてしまっているはずだが、それでも動かせないことは無いはずなのだ。
すなわち…光や闇、虚数の魔法について普段触れる機会が少ないからこそ、それらの属性に対する加護を持つ者が希少なだけであって、それを感じる脈覚を目覚めさせる機会さえあれば、きちんと加護を得るはずなのだ。
――僕らが、自分の国の言葉を自然と覚えたように。
そう、だから、後天的に加護を増やすことは、恐らくできる。
――つまり、原始元素さえ扱えるはずだ。
ℵ
「そう…魔法とは、自然の力を借りたり、自分の意志を反映したりするものではなく、コーダ君の言ったように――もともと存在する自然の法則を利用し、あるいは改変し、物質を操作することである。
そして、この『物質』というものには光も闇も、虚数も含まれる、ということだ」
「ティセリウス先生、質問よろしいでしょうか」
手を挙げたのはマルガレータだ。いまだに僕をちらちら睨んでくる。なんだか執拗に値踏みされている感じだ。
「マルガレータ君、質問どうぞ」
「はい。元素魔法には、それぞれの元素ごとに Lv 1 から Lv 3 の魔法がありますが、光や闇、虚数についても同じなのでしょうか?」
…なるほど。確かに、それは僕も気になるところだ。まだ習得していないとは言え、僕にも使えるようになるかも知れないし、それは知っておきたい。
エンペドクレスやエリヒトオのように四大元素についての書物は色々あるが、その他の三属性については伝説や神話のような話ばかりなのだ。
「いい質問ですね。これも魔法の歴史を語る上で重要な事柄だ。
実は、魔法には本来 Lv というものは存在していない。この分類は開拓者として、スキルの修練のために開発されたものなのだ。
そう…例えば野菜の切り方にはどんなものがあるかね?」
野菜の切り方? そんなことに何の関係が…。
「え? 野菜ですか…す、すみません、存じておりません…」
「ふむ、それでは誰か分かる者はいるか?」
突然の話に面食らったのかマルガレータも答えられない。というか、お嬢様っぽいので、自分で料理をしたこともなさそうだ。まぁ僕もないけれど…。
「はぁい」
今度は手を挙げたのは、同じ白組のアンナリーナ・ヴィンクヴィストだ。明るい若緑色の髪を頭の上で大きな赤いリボンで結わえてある、不思議な感じのする少女だ。
彼女は確か、魔法士の中でも薬士を目指していると言っていたから、野菜ではないが、ハーブや果物などの扱いには長けているのだろう。
「ええっとぉ~、薄切り、輪切り、みじん切り、くし形切りにぃ~、拍子木切り、さいの目切り、半月切りでしょ~。それからぁ――」
「そのあたりまでで結構ですよ。ありがとう」
間延びした声からは一見勉強が得意そうには見えないが、それだけ色々言えるとはすごいものだ。やはりハーブの扱いについては一家言を持っているのだろう。僕にはほとんど分からなかった…。
「――さて、マルガレータ君、野菜の切り方はいくつか決まったものがあるが、切り方なんてなぜ決まっていると考える? 決められた通りにしか、決められた場所でしか野菜を切れないことはないのだから、どういう理由があって『切り方』なんてものが決まっているのだろうか」
「それは…その方が分かりやすいから――なるほど、魔法もそういうことなのですね」
「その通り。覚えやすく、教えやすい魔法を体系的に学べるように開発された――言わばカリキュラムのようなものだ。
何でもできると言っても、効率の良い方法、悪い方法などがある。先人の培った経験から、良い方法のみを集めて作ったのが、現在の魔法体系である」
……そう言えば、エリヒトオの魔道書も同じようにレベル分けされていた。古くから伝わる練習法なのだろうか。
「マルガレータ君の疑問についてであるが、四大元素以外の三属性については、加護を持っているものがほとんどいないため体系化されていない。それどころか、虚数については加護を持っているものが今までいたことがないため、そもそもどんな性質の魔法が使えるのかも知られていないのです。
存在することは知られているが、見えもしないし、触れもしない。観測もできない。さて、それは果たして存在するといえるだろうか。ゆえに、虚数の存在を懐疑的に考えている学者も少なくない」
それならば、虚数魔法についての詠唱なんかは、そもそもどうやって練習すればいいのだろうか。
「――ありがとうございました」
マルガレータが礼を言ってその話題は終わる。
「さて、今日の魔法史の授業はこれまでとしましょう。次の授業は、創世記から現在に至るまでの歴史の転換点で、どのような人物がいて、どのような魔法が使われてきたかを学びましょう」
え、なにそれ、面白そう。
ℵ
授業は終わった。はやく寮に戻って自分の魔法の練習をしたい。まだ試せていないことがあるし、今日の授業で教えてもらった原始元素についても、色々と考察の尽きない代物だ。それに元素魔法も早く Lv 2 を習得したいところだ。最初に使えるようになった水魔法なら、と思って Lv 2 を試みたことが今までに何度かあるが、これが中々うまくいかない。どうやら、Lv 1 のように単純な水流操作や空気操作とは勝手が違うようだ。水魔法 Lv 2「オクシブローヒ」は雨を降らす魔法なのだが、普通の雨ではない。戦士職に対して特に有効な魔法で、甲冑などの金属を腐蝕させる効果のある雨を降らせる。だから、単純な水流操作では、ただ単に真水の雨が降らせることしかできない。そもそも金属の腐蝕なんてものがどういった原理で起きているのか、そこから考えたいところだが――などと、授業の終わった教室で考え事をしていたら、いつの間にか数人の生徒に囲まれていた。
「コーダさんってもう魔法が使えるんですね! すごいです!」
「いや、それでもまだ Lv 1 しか使えないし…」
「二つの詠唱を同時に行うのってどうやっているのかしら?」
「左手と右手で別々の魔法陣を使うんだよ」
「ねーねー、コーダってどっから来たのにゃ?」
「え、ええと、ここから馬車で一週間ぐらい北西の方角だよ」
「あは、コーダ君、別のクラスの子からも人気者だねぇ」
「あはは…。入科試験で目立ちすぎたのが失敗だったかなぁ…」
「よかったら今度、僕にも魔法を教えてくれないか。僕は土属性専門だが」
「いや、ちょっと僕のやり方は特殊みたいで、参考にならないかも…」
……なかなか、解放されない。寮に帰りたい。帰れない。同じ授業に出席していたマリーの席の方を見ると、もう帰る準備を整えたようで、つくねんと所在なげに僕を待ってくれている。が、見ようによっては女の子に囲まれていることで、マリーが拗ねているようにも見える。というか、魔法科のクラスに女子生徒が多いのだから仕方ない。それに男子生徒も話しかけてくれているのだから、それで拗ねられても僕は悪くない。
拗ねていると言えば、今日執拗に睨みを利かせていたマルガレータはどうしているだろうかと教室を見渡すと――げっ! 入り口のところで仁王立ちで腕を組んで待っている。そしてなぜだか非常にお冠のようだ。いつまで人を待たせる気なのよ、と言わんばかりの表情だ。
「ちょっとあなた! いつまで人を待たせる気なのよ!」
言っちゃった! 表情だけじゃなかった。
僕の周りにいた生徒もマリーも驚いている。ちなみに言えば、僕も驚いている。なぜなら彼女に待っておいてくれと頼んだことはない。そもそもで言えば、彼女と話したことすら無い。そして彼女の後ろには、魔法科の授業にも出席していた黒組の男子生徒が二人、護衛のように立っている。彼らも僕に対して憤怒のような視線を向けてきている。
ただならぬ空気を察した生徒たちは挨拶をして自然に切り上げる形で三々五々帰っていく。人の垣根が消えて、教室に残っているのは僕とマリーと、マルガレータ(とその取り巻き)だけになった。
「私と勝負なさい!」
……突然何を言い出すんだ、この子は。
「いけませんっ! それでお怪我なぞされようものなら、私はお館様に顔向けできません!」
「ふんっ! お父様なんて構うもんですか! ダニエル、エーリク、あなた達は決して手出し無用です。これは命令よ」
「………はっ。かしこまりました」
「了解、お嬢様」
ひとまず、取り巻きとの話はついたようだが…。
「ええと、勝負するってのは……どこからそういう話に?」
「私は空気魔法の Lv 1 を使えますのよ。だから私と勝負なさい!」
いや、それは理由になっていないんじゃないだろうか…。
「てめぇ、お嬢様の申し出を断ろうってんじゃないだろうな。お前みたいな田舎モンがお嬢様に声を掛けてもらえることなんて一生に一度もない幸福の極みだと知れ!」
「お嬢様の命令は絶対。拒否は許されない」
「ええと…そうは言われましても…。ダニエル君とエーリク君だっけ? 僕は別にマルガレータさんの家臣ではないので従う必要は無いんじゃ…」
「てめぇ、お嬢様の前でよくもそんな無礼な口を…。このお方を誰だと思っていやがる! このお方はなぁ――」
「お止めなさい! 手出し無用と言いましたが口出しも無用です。余計なことを喋らなくてよろしい」
「ですが――」
「諄いっ!」
「はっ! し、失礼いたしました」
僕にはあれだけ凄んでいたダニエルが、マルガレータの言葉の前には借りてきた猫のように恐縮している。ダニエルに言われたとおり、貴族社会とは無縁の片田舎から出てきたので、王都では有名なのかもしれないが、マルガレータの素性なども一切知らない。確か、マルガレータの家名はパーシュブラントというみたいだが……考えてみてもやっぱり分からなかった。
「それでは勝負の内容は一週間後に伝えますわ。それまでせいぜい首を洗って待ってなさい。それではごきげんよう」
それだけ伝え終わると、彼女は護衛を連れて、ぞろぞろと帰っていった。
……いやいや、僕何にも返事してないよ。ほんと、嵐のように現れて嵐のように去っていったな。一体何だったんだろうか…。
教室で拗ねているマリーをどう宥めすかしたものかも考えないといけないのに、頭痛の種が増えてしまった。
その祝宴では、いわゆる「エリジオーネ」と呼ばれる、テセウスが祈りの際に使ったような上質な羊毛に乗せられた枝付きのオリーブや、ありとあらゆる種類の果物が運ばれてきた。
その後には、彼らは盛大に歌を歌った。
『エリジオーネ、それは幸運に恵まれた人たちからの贈り物。
それは、無花果とパン。
壺入りの蜂蜜と体を綺麗にするオイル。
それからすぐに眠ってしまう強すぎるワインさ』
この儀式は『ヘラクレスの子どもたち』にも取り挙げられており、アテネの人々によって今日まで続けられている。だが、これについては多くの者が問題点を唱えている。
テセウスが若者と共に航海して戻ってきた船には、30本の櫂があった。アテネの人々はこれをファレロンのデメトリウスの時代にも保存していた。このため、朽ちた櫂は徐々に新たな木材に置き換えられていき、論理的な問題から哲学者らにとって恰好の議論の的となった。乃ち、ある者はその船はもはや同じものとは言えないとし、別の者はまだ同じものだと主張したのである。
無限回廊書架 DDC. 109
――プルタルコス『対比列伝 - テセウス伝記』第二十二章、第二十三章 A.D. 102
ミルヴァの言った説が成り立たないのなら、やはり虚数以外のマナは、神様によって創られたということになるのだろうか。そして、神様の使った虚数の魔法によって他の元素が生み出されたと仮定することができる。
けれども、僕にはどうしてもその考えが正しいとは思えなかった。そもそもマナとは何だろうか。マナの属性の違いとは何によって決まるのだろうか。そこから考え始めなければならなくなってしまった。
まず、恐らくだが虚数と他の属性のマナの関係性に親子関係といったものはないように思える。いずれも魔法を使うための資源となることから、それらは同列に扱うべきものではないだろうか。神様が天と地を創る前の場所には虚数のマナしかなかったというだけで、他の属性のマナが出現できる状態は整っていたということだ。
『出現できる状態が整っている』ということは、それらの元素の元となるものが何かあったはずだ。
そう、それこそが――根源と呼ばれるものなのではないだろうか。
その原始元素とでも呼ぶべきものから各属性のマナが作られて、世界に充満していったという考えはどうだろうか。
そもそも原初の魔法、それこそ神髄魔法と呼ばれる、神の御業は、本当に虚数という単なる一属性の魔法でしかないのだろうか。
神様であればどの属性の魔法であっても、不自由なく使えたりしそうなものだ。それこそ、神様の使う魔法は、原始元素属性の魔法ではないだろうか。
「さて、ミルヴァ君の言う異世界説、それは一つの仮定として面白いが、それだと別の世界ではすでに一般的に魔法が使われていることになり、初めての魔法としての考察ができなくなるので、今回は原初の世界の天地創造として考えてもらおう。
他属性のマナが生まれた過程について、何か意見のある人はいるかね」
――ちょうどいい。いま考えていたことを言ってみよう。
「はい、よろしいでしょうか」
「おぉ、コーダ君だね。よろしい、述べたまえ」
そして、虚数も他のマナも、ある共通の原始元素から作られたという考えを先生に話した。神様の使った魔法が、その原始元素属性の魔法ではないかという説明をした。
「うむ、自力でその仮説にたどり着くとは実に素晴らしい。では、コーダ君。魔法とは何か、その答えは出たかね?」
――神髄魔法こそ起源にして頂点。
最も偉大にして、根源に至る魔法。
それならば……、
「魔法とは――自然の法則や物質の構成を、再構築することです」
「……そのとおぉぉぉぉりぃぃぃぃ!!!」
うわっ!びっくりした!
急に大きな声出すんだもんな…。
「神が! 天地を創造された!
それが魔法であるならば!
原理的には、誰でもそれが、可能なはずなのである!
…ただ、惜しむらくはその理論、工程を具に理解し、計算できる能力が無くてはならず、それは人間には到底計算できるものではない。
また、原始元素に干渉する方法を会得しなければならないが、これは原始元素に対する加護がなくては使うことができない。
現在の私の専らの研究内容は、後天的に元素についての加護を会得することが可能なのかどうか、それを過去の歴史の中から探すことである」
「………」
……どうしよう。僕、後天的に光・闇・虚数の加護を得ているのですが。ここでそれを発表するとまた話がややこしくなりそうだし、それに誰にでも真似できる方法ではないので、黙っておくことにした。
――いや、待てよ。
加護を得ているとその属性に対する<魔力酔い>がほとんど出なくなる。そもそもなぜ魔力の強いものに触れると魔力酔いが起きるのかというと、自分の持っている属性の魔力や生命力と反発するからだ。
ではなぜ反発するのか。順応する属性と反発する属性の違いは何か。
後天的に使える属性の増えた僕だからこそ分かる。使える属性が増えるということは感覚のチャンネルが増えることだ。たとえば、僕ら人間族は、右手・左手・右足・左足をそれぞれ動かすことができる。
――それはなぜか。
あらかじめ動かし方が本能に記憶されているからだ。けれど魔力の感知、脈覚については本能に記憶されていない。親から受け継がない。右手も左手も右足も左足も、どの部位の動かし方も自分で見つけるしかない。それは、幼い間に慣れ親しんだ環境や食べてきたものによって、馴染みやすい属性が固定していき、自分の加護が決まる。
だから周囲に魔法がない環境で育った人間族には脈覚を使う機会がなく、成長とともに魔法に対する適性を失う。体には経絡という器官が残っているが、その役割は休眠してしまっている。
体の部位の例で言うなら、人によっては右手も左手も動かせるようになるし、どれも動かせないままの人もいる。手首や指の動きまで細かく制御できる人もいれば、肘や肩などの大雑把な動きしかできないものもいる。
あるいは、手足の動かし方は分からないが、首の動かし方や目の開き方を自分で見つけることもある。
僕の場合で言えば、両手両足が動かせる状態だったところに、首と目と口の動かし方を教えてもらったようなものだ。
一度動かし方が分かってしまえば、恰も最初からそれを知っていたかのように振る舞えるし、違和感など無い。けれども動かし方が分かるまでは、なかなか動かせるものではない。
たとえば耳。エルフ族や猫人族は耳を動かすことができる。人間族でも原理的には耳は動かせるはずだが、ほとんどの人間は動かし方が分からない。動かす必要もないし、進化の過程でその情報が本能から抜け落ちてしまったからだ。
自分にない加護の属性の魔力を受け入れるというのはそれほどまでに難しい。難しいが一度できてしまえば簡単なのだ。
――だが、原始元素の加護を得るというのは、それ以上に難しい。
例えるなら、翼やしっぽだ。鳥人族や狼人族には翼やしっぽがあるが、もはや人間族には存在しないその部位を、どのように動かすかを悟らなくてはならない。耳のように部位があっても動かし方の情報だけが進化の過程で抜け落ちたどころか、部位自体が無くなってしまっている、あるいはもとより身に備わっていないものについての、動かし方を理解しなければならないという難解さに等しい。
けれども……、そう、けれども、だ。
頭の中や体の構造は各種族ごとに違う部分は色々あって、それぞれ自分の種族の体に合うように本能は最適化されてしまっているはずだが、それでも動かせないことは無いはずなのだ。
すなわち…光や闇、虚数の魔法について普段触れる機会が少ないからこそ、それらの属性に対する加護を持つ者が希少なだけであって、それを感じる脈覚を目覚めさせる機会さえあれば、きちんと加護を得るはずなのだ。
――僕らが、自分の国の言葉を自然と覚えたように。
そう、だから、後天的に加護を増やすことは、恐らくできる。
――つまり、原始元素さえ扱えるはずだ。
ℵ
「そう…魔法とは、自然の力を借りたり、自分の意志を反映したりするものではなく、コーダ君の言ったように――もともと存在する自然の法則を利用し、あるいは改変し、物質を操作することである。
そして、この『物質』というものには光も闇も、虚数も含まれる、ということだ」
「ティセリウス先生、質問よろしいでしょうか」
手を挙げたのはマルガレータだ。いまだに僕をちらちら睨んでくる。なんだか執拗に値踏みされている感じだ。
「マルガレータ君、質問どうぞ」
「はい。元素魔法には、それぞれの元素ごとに Lv 1 から Lv 3 の魔法がありますが、光や闇、虚数についても同じなのでしょうか?」
…なるほど。確かに、それは僕も気になるところだ。まだ習得していないとは言え、僕にも使えるようになるかも知れないし、それは知っておきたい。
エンペドクレスやエリヒトオのように四大元素についての書物は色々あるが、その他の三属性については伝説や神話のような話ばかりなのだ。
「いい質問ですね。これも魔法の歴史を語る上で重要な事柄だ。
実は、魔法には本来 Lv というものは存在していない。この分類は開拓者として、スキルの修練のために開発されたものなのだ。
そう…例えば野菜の切り方にはどんなものがあるかね?」
野菜の切り方? そんなことに何の関係が…。
「え? 野菜ですか…す、すみません、存じておりません…」
「ふむ、それでは誰か分かる者はいるか?」
突然の話に面食らったのかマルガレータも答えられない。というか、お嬢様っぽいので、自分で料理をしたこともなさそうだ。まぁ僕もないけれど…。
「はぁい」
今度は手を挙げたのは、同じ白組のアンナリーナ・ヴィンクヴィストだ。明るい若緑色の髪を頭の上で大きな赤いリボンで結わえてある、不思議な感じのする少女だ。
彼女は確か、魔法士の中でも薬士を目指していると言っていたから、野菜ではないが、ハーブや果物などの扱いには長けているのだろう。
「ええっとぉ~、薄切り、輪切り、みじん切り、くし形切りにぃ~、拍子木切り、さいの目切り、半月切りでしょ~。それからぁ――」
「そのあたりまでで結構ですよ。ありがとう」
間延びした声からは一見勉強が得意そうには見えないが、それだけ色々言えるとはすごいものだ。やはりハーブの扱いについては一家言を持っているのだろう。僕にはほとんど分からなかった…。
「――さて、マルガレータ君、野菜の切り方はいくつか決まったものがあるが、切り方なんてなぜ決まっていると考える? 決められた通りにしか、決められた場所でしか野菜を切れないことはないのだから、どういう理由があって『切り方』なんてものが決まっているのだろうか」
「それは…その方が分かりやすいから――なるほど、魔法もそういうことなのですね」
「その通り。覚えやすく、教えやすい魔法を体系的に学べるように開発された――言わばカリキュラムのようなものだ。
何でもできると言っても、効率の良い方法、悪い方法などがある。先人の培った経験から、良い方法のみを集めて作ったのが、現在の魔法体系である」
……そう言えば、エリヒトオの魔道書も同じようにレベル分けされていた。古くから伝わる練習法なのだろうか。
「マルガレータ君の疑問についてであるが、四大元素以外の三属性については、加護を持っているものがほとんどいないため体系化されていない。それどころか、虚数については加護を持っているものが今までいたことがないため、そもそもどんな性質の魔法が使えるのかも知られていないのです。
存在することは知られているが、見えもしないし、触れもしない。観測もできない。さて、それは果たして存在するといえるだろうか。ゆえに、虚数の存在を懐疑的に考えている学者も少なくない」
それならば、虚数魔法についての詠唱なんかは、そもそもどうやって練習すればいいのだろうか。
「――ありがとうございました」
マルガレータが礼を言ってその話題は終わる。
「さて、今日の魔法史の授業はこれまでとしましょう。次の授業は、創世記から現在に至るまでの歴史の転換点で、どのような人物がいて、どのような魔法が使われてきたかを学びましょう」
え、なにそれ、面白そう。
ℵ
授業は終わった。はやく寮に戻って自分の魔法の練習をしたい。まだ試せていないことがあるし、今日の授業で教えてもらった原始元素についても、色々と考察の尽きない代物だ。それに元素魔法も早く Lv 2 を習得したいところだ。最初に使えるようになった水魔法なら、と思って Lv 2 を試みたことが今までに何度かあるが、これが中々うまくいかない。どうやら、Lv 1 のように単純な水流操作や空気操作とは勝手が違うようだ。水魔法 Lv 2「オクシブローヒ」は雨を降らす魔法なのだが、普通の雨ではない。戦士職に対して特に有効な魔法で、甲冑などの金属を腐蝕させる効果のある雨を降らせる。だから、単純な水流操作では、ただ単に真水の雨が降らせることしかできない。そもそも金属の腐蝕なんてものがどういった原理で起きているのか、そこから考えたいところだが――などと、授業の終わった教室で考え事をしていたら、いつの間にか数人の生徒に囲まれていた。
「コーダさんってもう魔法が使えるんですね! すごいです!」
「いや、それでもまだ Lv 1 しか使えないし…」
「二つの詠唱を同時に行うのってどうやっているのかしら?」
「左手と右手で別々の魔法陣を使うんだよ」
「ねーねー、コーダってどっから来たのにゃ?」
「え、ええと、ここから馬車で一週間ぐらい北西の方角だよ」
「あは、コーダ君、別のクラスの子からも人気者だねぇ」
「あはは…。入科試験で目立ちすぎたのが失敗だったかなぁ…」
「よかったら今度、僕にも魔法を教えてくれないか。僕は土属性専門だが」
「いや、ちょっと僕のやり方は特殊みたいで、参考にならないかも…」
……なかなか、解放されない。寮に帰りたい。帰れない。同じ授業に出席していたマリーの席の方を見ると、もう帰る準備を整えたようで、つくねんと所在なげに僕を待ってくれている。が、見ようによっては女の子に囲まれていることで、マリーが拗ねているようにも見える。というか、魔法科のクラスに女子生徒が多いのだから仕方ない。それに男子生徒も話しかけてくれているのだから、それで拗ねられても僕は悪くない。
拗ねていると言えば、今日執拗に睨みを利かせていたマルガレータはどうしているだろうかと教室を見渡すと――げっ! 入り口のところで仁王立ちで腕を組んで待っている。そしてなぜだか非常にお冠のようだ。いつまで人を待たせる気なのよ、と言わんばかりの表情だ。
「ちょっとあなた! いつまで人を待たせる気なのよ!」
言っちゃった! 表情だけじゃなかった。
僕の周りにいた生徒もマリーも驚いている。ちなみに言えば、僕も驚いている。なぜなら彼女に待っておいてくれと頼んだことはない。そもそもで言えば、彼女と話したことすら無い。そして彼女の後ろには、魔法科の授業にも出席していた黒組の男子生徒が二人、護衛のように立っている。彼らも僕に対して憤怒のような視線を向けてきている。
ただならぬ空気を察した生徒たちは挨拶をして自然に切り上げる形で三々五々帰っていく。人の垣根が消えて、教室に残っているのは僕とマリーと、マルガレータ(とその取り巻き)だけになった。
「私と勝負なさい!」
……突然何を言い出すんだ、この子は。
「いけませんっ! それでお怪我なぞされようものなら、私はお館様に顔向けできません!」
「ふんっ! お父様なんて構うもんですか! ダニエル、エーリク、あなた達は決して手出し無用です。これは命令よ」
「………はっ。かしこまりました」
「了解、お嬢様」
ひとまず、取り巻きとの話はついたようだが…。
「ええと、勝負するってのは……どこからそういう話に?」
「私は空気魔法の Lv 1 を使えますのよ。だから私と勝負なさい!」
いや、それは理由になっていないんじゃないだろうか…。
「てめぇ、お嬢様の申し出を断ろうってんじゃないだろうな。お前みたいな田舎モンがお嬢様に声を掛けてもらえることなんて一生に一度もない幸福の極みだと知れ!」
「お嬢様の命令は絶対。拒否は許されない」
「ええと…そうは言われましても…。ダニエル君とエーリク君だっけ? 僕は別にマルガレータさんの家臣ではないので従う必要は無いんじゃ…」
「てめぇ、お嬢様の前でよくもそんな無礼な口を…。このお方を誰だと思っていやがる! このお方はなぁ――」
「お止めなさい! 手出し無用と言いましたが口出しも無用です。余計なことを喋らなくてよろしい」
「ですが――」
「諄いっ!」
「はっ! し、失礼いたしました」
僕にはあれだけ凄んでいたダニエルが、マルガレータの言葉の前には借りてきた猫のように恐縮している。ダニエルに言われたとおり、貴族社会とは無縁の片田舎から出てきたので、王都では有名なのかもしれないが、マルガレータの素性なども一切知らない。確か、マルガレータの家名はパーシュブラントというみたいだが……考えてみてもやっぱり分からなかった。
「それでは勝負の内容は一週間後に伝えますわ。それまでせいぜい首を洗って待ってなさい。それではごきげんよう」
それだけ伝え終わると、彼女は護衛を連れて、ぞろぞろと帰っていった。
……いやいや、僕何にも返事してないよ。ほんと、嵐のように現れて嵐のように去っていったな。一体何だったんだろうか…。
教室で拗ねているマリーをどう宥めすかしたものかも考えないといけないのに、頭痛の種が増えてしまった。
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