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第一章 高等学院編 第二編 学院の黒い影(一年次・冬)
EP.XXIII 生徒会長の真意は…
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聞え精の君が
末 尋ね 降りられて
今からは
降り変わり 遊ぶ
鳴響む 国鳴響み
真末 願い 降りられて
今からは
首里杜 います
英祖王末按司大主
今からは
真玉杜 います
太陽が末 浮雲
今からは
年七年
神の嶽 置き止め
今からは
良き日 八年
首里杜 間遠さ
今からは
太陽神の 仰せ
憑き女 降り変わり
今からは
降り変わり 遊ぶ
無限回廊書架 DDC. 203
――『思い草紙』巻3「聞得大君愛し おもろ御さうし」- A.D. 1623
原因の分からない昏倒事件が立て続けに起きて、生徒たちの胸中は不安の色に染まっていた。そんな中で、生徒会が蜜酒醸山羊を討伐したという噂は瞬く間に広がった。しかも入学して早々に生徒会に抜擢された新入生がいるという話と結びついて、その新入生が難事件を快刀乱麻に解決したという噂に変貌してしまった。
そして、その新入生の正体も、既に明るみに知れている。
独り歩きした噂によってコーダの知名度は、僅か一夜にして全校レベルにまで昇り詰めることとなった。もちろん、噂を懐疑的に見る生徒もいて、特に上級生に多い。
「戦士科のクラスでもお前の話で持ちきりだったよ」
イェスペルが飄々とそんなことを言う。蜜酒醸山羊を倒した翌日の昼休み、僕らはいつもの四人で食堂で昼食を取っていた。
「こっちも同じ感じ」
リズベツまで同意し始める。確かに食堂に居ても様々なところから視線を感じるようになった。好意的な目線が八割、挑発的な目線が二割といったところだろうか。
「いや、そうは言ってもなぁ…。僕は大した活躍もしてないんだけどな…」
酒の霧を無効化でき、生徒会のみんなを窮地から救うことはできたものの、その後は「名状しがたい缶詰」を蜜酒醸山羊に投げつけただけで、あとは何もしていない。
「それでも生徒会に入ったのは本当なんでしょう? 抜擢されるだけでもすごいことだと思いますけど」
マリーがそんな風に言ってくれるが、まだまだ改善点や反省点は多い。自分の特異能力をどうやったら最大限活かせるか、もっと考えなければならない。そんなふうに考えていたところ、不意に見知らぬ生徒に声をかけられた。
「おい、そこの一年生。お前がコーダ・リンドグレンか?」
そもそも僕に向かって話しかけている時点で、誰何する必要もないはずなのだが。話しかけてきたのは茶髪のショートヘアーをオールバックに固めた、プライドの高そうな男子生徒だった。おそらく上級生だろう。
「何ですかあなたは?」
なぜかそれにマリーが応酬する。マリーの隣りに座っていたリズベツも便乗して応戦する。
「ちっ…。女に守られて、いい御身分なことだな」
そうしてその男子生徒は、結局用件も言わずに捨て台詞を残して去っていった。
「今日は本当にこういう手合が多いんだよなぁ…」
「まぁ有名税みたいなもんだろう。それは仕方ないさ」
しれっと愚痴を零すがイェスペルに諭される。イェスペルは戦士でありながら、戦士系によくいる血の気が多い連中と違って、意外にも冷静なところがある。
「ああいうのを黙らせるには、学内選抜戦でコテンパンに伸してやるしか無ぇんじゃねぇの」
「そうだな…。どのみちマルガレータの件もあるしな…」
イェスペルにそう言われて納得する。マルガレータからも協力関係を続ける以上、八位以内を収めるように要求されている。実のところそれを達成する義務も義理もないが、期待されているからには応えたい。しかも生徒会に入ってしまった訳だから、無残な成績を残すわけにもいかない。それに、僕だってああいう手合に猜疑の目を向けられて、全くの平気でいられるという訳でもない。出来るなら鼻を明かしてやりたいと思う。
何よりも一番の目的は、僕がこの世界で主人公として成り上がり、残りの賢者を見つけなければならないからだ。
「これは本腰を入れて対策しないとな…」
学内選抜戦まであと二ヶ月に迫っていた。
ℵ
生徒会室の――空気が重い。
蜜酒醸山羊を倒した日はみんなの疲労もあってすぐに解散することになったが、次の日の放課後に僕は生徒会室に来ていた。
一応、連続昏倒事件については解決を迎えたわけで、結果から言えば非常に良い成果を上げることが出来たと言える。特に学内には不穏な噂が顕著に広まってきていた所だったので、まだ被害者が数人のうちに事件を解決できたことは僥倖だった。しかし、被害に遭った生徒たちからは感謝されたものの、今回の戦闘はコーダが居なければ生徒会は全滅の危険性も有ったほど、実に酷く危ない状況だった。
生徒会の人たちに限って、自信を失くしたということはないだろうが、それでも今回の戦闘内容については反省点が多くあり、各々が自分の反省点を考えていた。コーダにしても、生徒会の人たちの窮地を救った反面、自ら仲間を窮地に陥れてしまった点については深く反省しなければならない。
「さて、全員が揃ったところで今回の事件についての報告と反省会を行う」
僕が生徒会室に到着して、みんなと一通りの挨拶を終えた後、ニコライが言葉を切り出した。
「まず、蜜酒醸山羊を討伐したことで、恐らく連続昏倒事件については解決したものと思われるが、不測の事態やまだ明らかになっていない原因があるかもしれん。念のため引き続き警戒を怠らないようにしてくれ」
外傷もない昏倒だったから、蜜酒醸山羊の『蜜酒結界』に因るものだという推測をしたものの、確固たる証拠があるわけではない。そうは言っても昏倒事件の頻発する現場に行って蜜酒醸山羊が現れた時点で、状況証拠としては充分だった。十中八九、これで問題が解決したとする見方でいいだろう。
だが……
「しかし、あの森ってあんなに強力なモンスターがわんさか居ましたっけ?」
カイサが、僕の思いついたのと同じ疑問を口にする。
「僕、少し前にもあの森で水害大灰猪に襲われました」
水害大灰猪に蜜酒醸山羊。
いずれも最上位種のモンスターで数も少なく、おいそれと出くわすような個体ではない。それがここ最近で立て続けに遭遇する事態になっている。
「確かに前から居ない訳じゃなかったけど、最近は特に遭遇しやすくなってる気がするにゃ」
フランチシュカの意見に、皆も同じ変化を感じているようだった。
「もしかすると…ですが、<深化>が起きやすくなっているのかもしれません」
「何か心当たりがあるのか?」
エミリリアの意見にニコライが問う。
「いえ、確固たる証拠はありません。これは――単なる神療士の勘みたいなものですが――最近マナが騒めいているように感じるのです」
「ふむ。確かにそれは分からなくはないな。正確なデータがあるわけではないが魔物自体が増えているという気もする」
エミリリアの覚えた違和感は何に因るものなのだろうかはまだ分からないが、ニコライも魔物の逓増を体感している以上、僕らの知らないところで何か取り返しのつかない事態がゆっくりと進行しているような気がしてくる。
そういえばマルガレータも、最近になってこの世界の生命力が急激に減り始めたと言っていたが…。
――いや、ちょっと待て。
減っているというこの世界の生命力は、一体どこに流れ出しているのだろうか。別の世界に流れ出している可能性ももちろんあるが、あるいは部分的にでもこの世界にマナとして溢れ出してきているという可能性はないだろうか。
「あの…、すみません。僕の友人に生命力の量を見ることのできる特異能力を持っている人がいるのですが――」
「おいおいマジですかい…」
「会長もそうだけど、コーダくんの周りにはすごい人が居るもんだね…」
カイサとフランチシュカが目を見開いて分かりやすく驚いている。ベルもいつもの定位置から微動だにしないもののこちらを注視している。
「その人が言うには、空にも生命力が見える、と。そして、僕らはそれがこの世界の生命力を示しているんじゃないかと推測しています」
「この世界の…生命力…。そんな馬鹿げた話が…。いや、しかし…」
「もうなんだか話が壮大過ぎて…」
カイサとフランチシュカは話題のあまりの規模に驚いて、多少なりとも荒唐無稽に思っているようだが、エミリリアとニコライは神妙な顔つきで傾聴している。
「それで、どうしたのかしら?」
エミリリアに促されて話を続ける。
「世界の生命力が今、急激な勢いで減っていて、このペースで減り続ければ――」
「コーダっ!!」
「「!!!?」」
突如としてニコライが大声を上げて僕の言葉を遮った。普段全く声を荒らげることもない冷静沈着なニコライがここまでの怒号を露わにしたことに、みんなが一様に驚いていた。
「いや、大声を出して済まない。その件は生徒会にはあまりにも手に余る。俺らが守るべきは世界ではなくてこの学院だ。そこを履き違えるな」
「は、はい…すみませんでした」
怒られるようなことだったのだろうかと考えたがよく分からなかった。ただ、ニコライは怒っているというより焦っていたようにも見えた。
――焦っていた? 何に?
ニコライは僕が話している途中で止めた。止めさせた。強制的に。
――どうして?
僕が何かを言おうとしたからだろうか。
僕に何かを言わせたくなかったからだろうか。
――僕は何を言おうとしていた?
世界が、生命力が、その灯火が尽きようとしていること、その破滅の命運の刻限がわずか五年後に迫っていること。
――ニコライがなぜそれを言わせないようにしたのだろうか?
――ニコライは何を知っているのだろうか?
「とにかく、修練の森に、あるいはコーダの話が本当ならば、最悪の場合、全世界に亘って魔物が増えようとしている可能性がある以上、今後定期的に修練の森の生態系を調査することになるかもしれん。各自、鍛錬を怠らずいつでも出撃に備えよ」
そうしてニコライの言葉で締められて、今回の生徒会の会合は解散となった。僕はニコライに話をするべく、後で部屋に伺う旨を告げて、一度自分の部屋に戻ることにした。
末 尋ね 降りられて
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年七年
神の嶽 置き止め
今からは
良き日 八年
首里杜 間遠さ
今からは
太陽神の 仰せ
憑き女 降り変わり
今からは
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無限回廊書架 DDC. 203
――『思い草紙』巻3「聞得大君愛し おもろ御さうし」- A.D. 1623
原因の分からない昏倒事件が立て続けに起きて、生徒たちの胸中は不安の色に染まっていた。そんな中で、生徒会が蜜酒醸山羊を討伐したという噂は瞬く間に広がった。しかも入学して早々に生徒会に抜擢された新入生がいるという話と結びついて、その新入生が難事件を快刀乱麻に解決したという噂に変貌してしまった。
そして、その新入生の正体も、既に明るみに知れている。
独り歩きした噂によってコーダの知名度は、僅か一夜にして全校レベルにまで昇り詰めることとなった。もちろん、噂を懐疑的に見る生徒もいて、特に上級生に多い。
「戦士科のクラスでもお前の話で持ちきりだったよ」
イェスペルが飄々とそんなことを言う。蜜酒醸山羊を倒した翌日の昼休み、僕らはいつもの四人で食堂で昼食を取っていた。
「こっちも同じ感じ」
リズベツまで同意し始める。確かに食堂に居ても様々なところから視線を感じるようになった。好意的な目線が八割、挑発的な目線が二割といったところだろうか。
「いや、そうは言ってもなぁ…。僕は大した活躍もしてないんだけどな…」
酒の霧を無効化でき、生徒会のみんなを窮地から救うことはできたものの、その後は「名状しがたい缶詰」を蜜酒醸山羊に投げつけただけで、あとは何もしていない。
「それでも生徒会に入ったのは本当なんでしょう? 抜擢されるだけでもすごいことだと思いますけど」
マリーがそんな風に言ってくれるが、まだまだ改善点や反省点は多い。自分の特異能力をどうやったら最大限活かせるか、もっと考えなければならない。そんなふうに考えていたところ、不意に見知らぬ生徒に声をかけられた。
「おい、そこの一年生。お前がコーダ・リンドグレンか?」
そもそも僕に向かって話しかけている時点で、誰何する必要もないはずなのだが。話しかけてきたのは茶髪のショートヘアーをオールバックに固めた、プライドの高そうな男子生徒だった。おそらく上級生だろう。
「何ですかあなたは?」
なぜかそれにマリーが応酬する。マリーの隣りに座っていたリズベツも便乗して応戦する。
「ちっ…。女に守られて、いい御身分なことだな」
そうしてその男子生徒は、結局用件も言わずに捨て台詞を残して去っていった。
「今日は本当にこういう手合が多いんだよなぁ…」
「まぁ有名税みたいなもんだろう。それは仕方ないさ」
しれっと愚痴を零すがイェスペルに諭される。イェスペルは戦士でありながら、戦士系によくいる血の気が多い連中と違って、意外にも冷静なところがある。
「ああいうのを黙らせるには、学内選抜戦でコテンパンに伸してやるしか無ぇんじゃねぇの」
「そうだな…。どのみちマルガレータの件もあるしな…」
イェスペルにそう言われて納得する。マルガレータからも協力関係を続ける以上、八位以内を収めるように要求されている。実のところそれを達成する義務も義理もないが、期待されているからには応えたい。しかも生徒会に入ってしまった訳だから、無残な成績を残すわけにもいかない。それに、僕だってああいう手合に猜疑の目を向けられて、全くの平気でいられるという訳でもない。出来るなら鼻を明かしてやりたいと思う。
何よりも一番の目的は、僕がこの世界で主人公として成り上がり、残りの賢者を見つけなければならないからだ。
「これは本腰を入れて対策しないとな…」
学内選抜戦まであと二ヶ月に迫っていた。
ℵ
生徒会室の――空気が重い。
蜜酒醸山羊を倒した日はみんなの疲労もあってすぐに解散することになったが、次の日の放課後に僕は生徒会室に来ていた。
一応、連続昏倒事件については解決を迎えたわけで、結果から言えば非常に良い成果を上げることが出来たと言える。特に学内には不穏な噂が顕著に広まってきていた所だったので、まだ被害者が数人のうちに事件を解決できたことは僥倖だった。しかし、被害に遭った生徒たちからは感謝されたものの、今回の戦闘はコーダが居なければ生徒会は全滅の危険性も有ったほど、実に酷く危ない状況だった。
生徒会の人たちに限って、自信を失くしたということはないだろうが、それでも今回の戦闘内容については反省点が多くあり、各々が自分の反省点を考えていた。コーダにしても、生徒会の人たちの窮地を救った反面、自ら仲間を窮地に陥れてしまった点については深く反省しなければならない。
「さて、全員が揃ったところで今回の事件についての報告と反省会を行う」
僕が生徒会室に到着して、みんなと一通りの挨拶を終えた後、ニコライが言葉を切り出した。
「まず、蜜酒醸山羊を討伐したことで、恐らく連続昏倒事件については解決したものと思われるが、不測の事態やまだ明らかになっていない原因があるかもしれん。念のため引き続き警戒を怠らないようにしてくれ」
外傷もない昏倒だったから、蜜酒醸山羊の『蜜酒結界』に因るものだという推測をしたものの、確固たる証拠があるわけではない。そうは言っても昏倒事件の頻発する現場に行って蜜酒醸山羊が現れた時点で、状況証拠としては充分だった。十中八九、これで問題が解決したとする見方でいいだろう。
だが……
「しかし、あの森ってあんなに強力なモンスターがわんさか居ましたっけ?」
カイサが、僕の思いついたのと同じ疑問を口にする。
「僕、少し前にもあの森で水害大灰猪に襲われました」
水害大灰猪に蜜酒醸山羊。
いずれも最上位種のモンスターで数も少なく、おいそれと出くわすような個体ではない。それがここ最近で立て続けに遭遇する事態になっている。
「確かに前から居ない訳じゃなかったけど、最近は特に遭遇しやすくなってる気がするにゃ」
フランチシュカの意見に、皆も同じ変化を感じているようだった。
「もしかすると…ですが、<深化>が起きやすくなっているのかもしれません」
「何か心当たりがあるのか?」
エミリリアの意見にニコライが問う。
「いえ、確固たる証拠はありません。これは――単なる神療士の勘みたいなものですが――最近マナが騒めいているように感じるのです」
「ふむ。確かにそれは分からなくはないな。正確なデータがあるわけではないが魔物自体が増えているという気もする」
エミリリアの覚えた違和感は何に因るものなのだろうかはまだ分からないが、ニコライも魔物の逓増を体感している以上、僕らの知らないところで何か取り返しのつかない事態がゆっくりと進行しているような気がしてくる。
そういえばマルガレータも、最近になってこの世界の生命力が急激に減り始めたと言っていたが…。
――いや、ちょっと待て。
減っているというこの世界の生命力は、一体どこに流れ出しているのだろうか。別の世界に流れ出している可能性ももちろんあるが、あるいは部分的にでもこの世界にマナとして溢れ出してきているという可能性はないだろうか。
「あの…、すみません。僕の友人に生命力の量を見ることのできる特異能力を持っている人がいるのですが――」
「おいおいマジですかい…」
「会長もそうだけど、コーダくんの周りにはすごい人が居るもんだね…」
カイサとフランチシュカが目を見開いて分かりやすく驚いている。ベルもいつもの定位置から微動だにしないもののこちらを注視している。
「その人が言うには、空にも生命力が見える、と。そして、僕らはそれがこの世界の生命力を示しているんじゃないかと推測しています」
「この世界の…生命力…。そんな馬鹿げた話が…。いや、しかし…」
「もうなんだか話が壮大過ぎて…」
カイサとフランチシュカは話題のあまりの規模に驚いて、多少なりとも荒唐無稽に思っているようだが、エミリリアとニコライは神妙な顔つきで傾聴している。
「それで、どうしたのかしら?」
エミリリアに促されて話を続ける。
「世界の生命力が今、急激な勢いで減っていて、このペースで減り続ければ――」
「コーダっ!!」
「「!!!?」」
突如としてニコライが大声を上げて僕の言葉を遮った。普段全く声を荒らげることもない冷静沈着なニコライがここまでの怒号を露わにしたことに、みんなが一様に驚いていた。
「いや、大声を出して済まない。その件は生徒会にはあまりにも手に余る。俺らが守るべきは世界ではなくてこの学院だ。そこを履き違えるな」
「は、はい…すみませんでした」
怒られるようなことだったのだろうかと考えたがよく分からなかった。ただ、ニコライは怒っているというより焦っていたようにも見えた。
――焦っていた? 何に?
ニコライは僕が話している途中で止めた。止めさせた。強制的に。
――どうして?
僕が何かを言おうとしたからだろうか。
僕に何かを言わせたくなかったからだろうか。
――僕は何を言おうとしていた?
世界が、生命力が、その灯火が尽きようとしていること、その破滅の命運の刻限がわずか五年後に迫っていること。
――ニコライがなぜそれを言わせないようにしたのだろうか?
――ニコライは何を知っているのだろうか?
「とにかく、修練の森に、あるいはコーダの話が本当ならば、最悪の場合、全世界に亘って魔物が増えようとしている可能性がある以上、今後定期的に修練の森の生態系を調査することになるかもしれん。各自、鍛錬を怠らずいつでも出撃に備えよ」
そうしてニコライの言葉で締められて、今回の生徒会の会合は解散となった。僕はニコライに話をするべく、後で部屋に伺う旨を告げて、一度自分の部屋に戻ることにした。
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