贖罪の救世主

水野アヤト

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第59.5話 ヴァスティナからの物体X

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「よお、ババア。今日は飲ませてもらうぜ」

 食堂に酒瓶入りの木箱を運んで来るや否や、食堂の料理長たるおばちゃんを婆あ呼ばわりし、食堂を酒場代わりに酒盛りを始めようとする鉄血部隊の面々。
 飲んだくれ代表のヘルベルトが現れたと分ると、調理場の奥から食堂のおばちゃんが現れ、呆れ果てながらも怒号を飛ばす。

「あんたらの飲みは毎日じゃないのさ! ここは酒場じゃないんだよ!」
「まあ怒んなって。今日はハーロンのいい酒が手に入ったんだ」
「ふん、どうせあんたらの馬鹿舌じゃ酒の味なんてわからないさね。あんまり勝手すると、マストール宰相に言いつけるよ?」
「おいおい勘弁してくれよ。酒を持ち込み過ぎだって、ついさっき怒鳴られたばっかなんだぜ?」
「ほんと、救いようのない馬鹿だね。飲むのはいいけど、後片付けは自分達でやんな」
「流石ババア、話がわかるぜ」

 戦いに勝った時や、美味い酒が手に入った時などは、いつもこうである。酒が飲める理由さえあれば、最早何でもいいのだ。
 怒るだけ無駄だと呆れられながらも、ヘルベルト達はいくつもの木箱を食堂へと運び込み、テーブルに酒瓶を並べて宴会の用意を始める。夕食時であり、既に食堂は多くの兵で賑わっていた。
 早速酒盛りを始めようとした鉄血部隊だが、ヘルベルトがふと気配を察し、テーブルの下を覗き込む。そこには膝を抱えたリックが座り込んでいて、ヘルベルトと彼の目があった。

「なにしてんですかい隊長?」
「見ればわかるだろ。隠れてんだよ」
「また仕事さぼってエミリオから逃げてるんですかい?」
「だっ、だって、次から次へと仕事積んでくるからさ⋯⋯。おかげでメシア団長との予定は駄目にされるし、やる気も起きないったら―――」

 隠れているつもりのリックの肩を、次の瞬間、ある少女の手が力強く掴まえた。驚愕したリックが見たものは、自身の専属メイドたるメイファの姿である。
 眉間に皺を寄せたメイファが、華奢な手にも関わらず驚異の握力を発揮して、リックを逃がすまいとがっちり掴まえている。恐怖で青ざめたリックが逃げようとするも、メイファによって机の下から引っ張り出され、食堂の出口へと引き摺られていく。
 
「エミリオ様が首を長くしてお待ちです。執務室へお戻りください」
「いっ、嫌だあああああっ!! もう紙と文字は見たくないんだああああああっ!!」
「大人しくしてください。あまり皆さんに迷惑をかけるようなら殺します」
「どうして俺にだけは殺意増しましなんだよおおおおおおっ!! せめて飯ぐらい食わせ――――」

 リックを捜索していたメイファに捕獲され、必死の抵抗も虚しく拳で殴られ連れて行かれる。この程度は日常茶飯事な光景であるため、誰も彼を助けようともせず、心配すらしていない。
 そんな二人のいつも通りな光景を目撃しつつ、「懲りないな」と呆れながらレイナやクリス達が食堂に集まってくる。早速レイナやクリス、それにゴリオンなどは夕食を受け取りに行こうとするが、シャランドラだけは鉄血部隊が用意した酒を見つけ、酒瓶を一本奪い取る。

「うちに黙って酒を飲もうたってそうはいかんで。今夜は吐くまで宴会や!」
「おいこの野郎! 俺の酒奪うんじゃねぇ!」

 いつも通り、吐くまで飲む宣言を決めたシャランドラの参戦は鉄血部隊に喜ばれるが、酒を奪われ怒号を飛ばすヘルベルトに、同情する者など誰もいなかった。これもまた、変わらぬいつも通りの流れであり、最早自然の摂理とも言える。
 最終的にはレイナ達も宴に巻き込まれ、今夜も一同は浴びる程酒を飲んだ。









 夜まで執務室で政務に勤しんでいたユリーシアは、自身の体調を心配するウルスラの言葉もあって、残りの仕事は明日へとまわし、寝室に連れられて行く途中にあった。
 ウルスラに手を引かれているため、目が見えずともユリーシアに不安はない。仮に自分がここで賊に襲われたとしても、帝国最強の護衛メイドが傍にいるのだから、不安など生まれるはずもなかった。
 ユリーシアの小さな歩幅に合わせ、真っ白で華奢な彼女の手を取り、ウルスラは女王の寝室へと歩を進める。食堂の近くまで来たところで、通路の奥から二人の姿を見つけたナノとハナが、燥ぎながら二人のもとへと駆け寄って来た。

「メイド長、みーつけた♪」
「陛下も一緒だ! ラフ姉、こっちこっち♪」

 メイド部隊最年少の双子姉妹。ポニーテールとツインテールを揺らしながら、無邪気な笑みと共に走って来る少女達だが、こう見えて戦闘時は残虐性を持って敵を殺しまわる。
 元は特殊訓練を受けた少女兵で、帰る場所もなく彷徨っていたところを、ラフレシアに拾われて現在に至る。本人達曰く、少女兵として戦ったという事以外、昔のことは何も憶えていないという。
 二人に懐かれているラフレシア曰く、本人達が過去を忘れてしまっているのは、自分達の心を守るためであるとの事だった。忘れてしまわなければ自分達が壊れてしまう。精神の極限状態が、彼女達から過去を奪ったのというのが、傭兵時代に同じ例を何人も見てきたラフレシアの考えだった。

 他のメイド達と同じように、彼女達もまた笑顔の裏に闇を隠しているが、ユリーシアの前では決してその闇を見せる事はない。彼女達がその闇を露わにするのは、ユリーシアに刃を向ける者達だけだ。
 ラフレシアにだけでなく、ナノとハナはユリーシアにもよく懐いている。少なくともユリーシアの前だけは愛らしい彼女達を、ユリーシアは自分の妹の様に可愛がっていた。
 そのためか、彼女達に対してはとても甘い。一日に数回は問題を起こす悪戯大好き姉妹で、毎日誰かに怒られていて、ユリーシアもその被害者の一人になる事もしばしばだが、声を張って怒るなど一度もなかった。
 人懐っこい笑顔を浮かべ、双子はユリーシアとウルスラの前に現れた。何用かとウルスラが聞くより先に、双子の後ろから猛烈な勢いで駆けて現れたのが、両手を合わせて何かを持つラフレシアだ。
 
「メイド長発見!! ちょっとこれ見てもらえませんかああああああああっ!!」
「なんですか騒々しい」

 豹のような速さでウルスラの前に現れ、何事かと不審に思っている彼女の顔の前で、大事そうにラフレシアが持ってきた物体が、その姿を露わにする。
 ラフレシアが手の中に収めていたそれは、黒光りして二本の触角を動かした、六本足の昆虫である。正確に言えば茶色がかった黒と言えるが、そのような細かい説明は誰も聞きたくはないだろう。
 虫が全く恐くないラフレシア達が、苦労してようやく掴まえた一匹がウルスラの前に差し出される。ユリーシアにはそこに何がいるかは見えないが、見えていたら卒倒する可能性が高い。
 ラフレシアの手の中で動くそれを見た瞬間、ウルスラは目を見開いて声にならない悲鳴を上げた。初めて人前で女らしい悲鳴を上げた彼女に、一同が驚いていた刹那、その昆虫は目にも留まらぬ速さの手刀で払われ、壁に叩き付けられ息絶えた。
 
「へっ⋯⋯⋯?」

 間抜け声を上げたラフレシアの頭上に、神速の動きでウルスラの拳が振り下ろされる。普段の三倍は痛い拳骨がラフレシアの脳天を直撃し、続けてナノとハナにも同じように拳が振られた。
 三人が激痛に苦しむ中、今までになく顔を真っ赤にしたウルスラが、指を鳴らして激怒している。ユリーシアの手を放し、完全に怒れる鬼と化したウルスラを前に、激痛に苦しむ三人は、「話が違う!」と内心ベニバナを恨むのだった。


 
 
 




 事の発端は今日の朝、ナノとハナの失敗が発覚したところまで遡る。
 二人は昨日、多忙なマストールからダイヤを預かった。女王ユリーシアへの献上品として送られてきた物であり、一旦マストールが確認して保管していたものだった。
 このダイヤをマストールが、城内の宝物庫に持って行くよう命じて渡したのが、ナノとハナである。多忙だった故に判断能力が鈍っていたのだが、今にして思えば、このような仕事を二人に任せるのは危険だと気付くべきだった。

 二人が初めて見る程の大粒のダイヤ。当然の流れで、ナノとハナは大はしゃぎでダイヤを玩具にした。はしゃぎ過ぎてキャッチボールを始めたのが運の尽きで、明後日の方向にハナがダイヤを投げてしまい、窓の外に放ってしまったのである。
 慌てて探しに行くも、朝の調理場の匂いに誘われて迷い込んだ空腹の野良犬が、誤ってダイヤを飲み込んでしまった後だった。幸い犬は捕まえたものの、便秘なのか出すものを出さないため、依然ダイヤは腹の中である。
 それが今日ばれて、ナノとハナは当然の如くウルスラから大目玉を喰らった。監督不行き届きでラフレシアも説教を受け、マストールの雷も落ちる始末であった。
 ウルスラからの命令で、三人は普段の仕事と並行し、犬の世話をする事となった。兎に角出すものを出させて、ダイヤを回収しなくてはならないからだ。
 因みに、犬を殺して腹からダイヤを回収しようとしないのは、ハナが反対したからだった。犬を殺そうとするナノに向かい、ハナは「動物を殺すのは可哀想だよ!」と言って聞かなかったのである。

 こうのような理由で、どう考えてもナノとハナの自業自得であり、責任者としてラフレシアも巻き込まれた訳なのだが、彼女達はウルスラへの仕返しを画策していた。彼女達の言い分は、「別に無くなったわけじゃないんだからそんなに怒らなくてもいいじゃない」である。
 城内にある書庫の掃除中、三人はウルスラにどんな悪戯をするか相談し合っていた。そんな時三人は、一緒に掃除をしていたベニバナに尋ねたのである。

「メイド長の弱点? あら~、あなた達って反省しないのね~」

 直ぐにウルスラへの仕返しが計画されている事を悟り、懲りない子達だなとベニバナは呆れてしまう。
 ベニバナはメイド部隊でウルスラの次に年長者で、若いメイド達の良き相談相手でもある。ふくよかというより、どちらかと言えばむっちりとした肉付きで、大人の色香を放つ母性的な女性であるためか、彼女に色々と相談するメイドは多い。
 
「おばさんに聞くのはいいけれど、自分達の行ないを反省して学んだりしないのかしら?」
「反省はするけど仕返しはしたい」
「「同じく♪」」
「あらら~⋯⋯、困った子達ね~⋯⋯⋯」

 報復は絶対という性格のせいか、三人の決意は無駄に固かった。その熱意を仕事に向けて欲しいと考えていると、ベニバナの脳裏に昔の記憶が蘇る。

「そう言えばウルスラって、昔からアレが駄目なのよ」
「アレ? アレってなんのこと?」
「ほら、部屋の隅でカサカサするあの虫のことよ。ウルスラが毎日城内を隅々まで掃除させるのは、アレを見たくないっていうのも理由の一つなの。昔は気絶するくらい苦手だったわね~」

 ベニバナにウルスラの弱点を問う理由は、彼女達が古い付き合いだと知っているからだ。つまり帝国において、ラフレシア達も知らない昔のウルスラを知るただ一人の人物が、このベニバナなのだ。
 ベニバナが語った虫が何であるか、ラフレシア達は直ぐに察しが付いた。あれなら食堂で偶に出るため、用意するのはそう難しくないと考えている。何より、虫を見て気絶するウルスラなど、彼女達からすれば見たいに決まっていた。

「流石ベニバナ。メイド長と付き合い長いだけあるわね」
「付き合いで言ったらみんなと変わらないわよ~。勇者時代にちょっとあっただけなんだから」
「ねえねえ、ベニ姉はなんで勇者辞めちゃったの?」
「私も聞きたーい」
「うふふふっ、大した話じゃないわよ~」

 ベニバナはかつて勇者連合の所属であり、ローミリア大陸の平和を守る勇者であったという。元勇者であるという話は皆知っており、初めて聞いた時は驚いたものである。
 しかし一体何故、彼女が勇者を辞め、ヴァスティナ帝国でメイドをしているのか、少なくともラフレシア達は理由を聞いた事がない。興味津々な彼女達を前に、妖艶な笑みを浮かべたベニバナは、昔を懐かしみながら語り出す。

「若い頃は勇者パーティーを組んで、他の勇者と一緒に魔物や賊を討伐していたものよ。でも魔が差して、ついついパーティーの男の子達を食べちゃったの♡」

 それだけ聞いて、ラフレシアのみならず、ナノとハナは全てを察した。
 ベニバナがノイチゴの副官である理由は、性に狂っているノイチゴも引く程の、色欲大魔神であるからだ。

「パーティーの中には付き合ってる男女の勇者もいてね~。寝取っちゃったのがバレて、パーティーの仲は取り返しが付かないくらいドロドロになっちゃったの~。みんな揉めに揉めて、結局パーティーを追放されてしまったというわけなのよ~」
「そんな阿保な理由で勇者じゃなくなったの!?」
「勇者の資格自体はまだあるはずよ~。更新手続きとかしてないけれど」
「勇者って更新いるの!?」
「パーティーを追放された後も色々あったわね~。でもウルスラが誘ってくれて、今はここが気に入ってるわ~」
「追放された後の色々ってなに!?」

 次々と明かされる驚愕の事実に、ラフレシアのツッコミが止まらない。一番気になる追放後の話は、ベニバナの妖艶な笑みにはぐらかされるばかりで、この日明かされる事はなかった。
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