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第20.5話 みんな愉快な?ヴァスティナ帝国
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「と言うわけで、この洋館の調査に行こうと思ってるんだけど、二人は強制参加だから」
「えっ?」
「はあ!?」
参謀長執務室。
帝国参謀長リックは、槍士レイナと剣士クリスをこの部屋に呼び出し、ヴァスティナ七不思議を語って聞かせた。聞かせたのは洋館の話であり、彼はこの洋館に調査に行くと言う。
「いやだって、ほんとに幽霊が出たら恐いだろ?二人が付いて来てくれるなら安心かなって思ってさ」
「参謀長が行くと言うのであれば、護衛の為に私も同行致します。ですが、どうしてそんな調査が必要なのでしょうか?」
「リリカの奴が行くって聞かないんだよ。暇潰しがしたいんだと」
「・・・・・そうでしたか」
リックの溜め息交じりの言葉で、レイナは全てを察した。
大方、暇潰しを考えたリリカが彼を巻き込み、この様な事態になったのだろう。リックは当然嫌がっただろうが、リリカの事である。付いて来なければ秘密を暴露するとでも言って、彼女お得意の脅しをかけたのだろう。何でも知っている彼女の事だ、リックの秘密の一つや二つ、必ず握っているに違いない。
リックの口からリリカの名前が出た事で、レイナは早々に諦めた。この場で同行を拒否すれば、後でリリカに何をされるかわからないからである。
「おっ、おいリック・・・・・・ほんとにそんな噂を確かめに行くのかよ」
「まあ、しょうがないだろ。あいつの命令は拒否できないし、俺もこの七不思議には少し興味湧いたからな。霊の類はともかくとして、その洋館は見てみたい。何かに使えそうならそのままでもいいが、要らないなら取り壊して畑にでもした方がいいだろ?」
「じゃあ今すぐ取り壊そうぜ!!何だったら俺がぶっ壊してきてやる、夜になる前にな!!」
どう言うわけか、クリスは非常に切羽詰まった様子で、やたらと洋館を壊したがっている。リックが良いと言えば、今すぐにでも飛び出して行きそうな勢いだ。
何故彼が慌てているのかわからず、首を傾げるリックとレイナ。こんなクリスを二人は今まで見た事がない。一体、何をそんなに慌てているのだろうか・・・・・・。
「取り壊すのは調査の結果次第だ。どうしたんだよクリス、らしくないぞ?」
「べっ、別に俺はいつも通りだぜ・・・・・・」
「我儘を言うな破廉恥剣士。参謀長の命令は絶対だと、貴様も理解しているだろう」
「言われなくてもわかってんだよ!ああ畜生、行けばいいんだろ!!」
クリスの様子は明らかに普段と違っていた。まるで、何かに追い詰められているようだ。
結局は、レイナの言葉で自棄になり、行くと宣言してしまった。これで、彼はもう逃げられない。
(ひょっとして・・・・・・・。いや、まさかな・・・・・・)
リックが彼を観察し、直感で思い付いたクリスが慌てている原因の予想。まさかそんな事はないだろうと、この時リックはこれ以上深く考えなかった。
廃墟と化した洋館の調査。
リリカの暇潰しによって編成された、洋館調査隊。隊員は、リリカとリックとレイナとクリスと決まった。
この日の夕方、四人は自分の仕事を全て片付け終わり、洋館調査の準備を始めた。準備を終えた四人は帝国の外に出て、霊が出ると噂される洋館へと向かって行った。
洋館調査と言ってはいるが、所謂これは、「肝試し」と呼ばれるものである。
「えっ?」
「はあ!?」
参謀長執務室。
帝国参謀長リックは、槍士レイナと剣士クリスをこの部屋に呼び出し、ヴァスティナ七不思議を語って聞かせた。聞かせたのは洋館の話であり、彼はこの洋館に調査に行くと言う。
「いやだって、ほんとに幽霊が出たら恐いだろ?二人が付いて来てくれるなら安心かなって思ってさ」
「参謀長が行くと言うのであれば、護衛の為に私も同行致します。ですが、どうしてそんな調査が必要なのでしょうか?」
「リリカの奴が行くって聞かないんだよ。暇潰しがしたいんだと」
「・・・・・そうでしたか」
リックの溜め息交じりの言葉で、レイナは全てを察した。
大方、暇潰しを考えたリリカが彼を巻き込み、この様な事態になったのだろう。リックは当然嫌がっただろうが、リリカの事である。付いて来なければ秘密を暴露するとでも言って、彼女お得意の脅しをかけたのだろう。何でも知っている彼女の事だ、リックの秘密の一つや二つ、必ず握っているに違いない。
リックの口からリリカの名前が出た事で、レイナは早々に諦めた。この場で同行を拒否すれば、後でリリカに何をされるかわからないからである。
「おっ、おいリック・・・・・・ほんとにそんな噂を確かめに行くのかよ」
「まあ、しょうがないだろ。あいつの命令は拒否できないし、俺もこの七不思議には少し興味湧いたからな。霊の類はともかくとして、その洋館は見てみたい。何かに使えそうならそのままでもいいが、要らないなら取り壊して畑にでもした方がいいだろ?」
「じゃあ今すぐ取り壊そうぜ!!何だったら俺がぶっ壊してきてやる、夜になる前にな!!」
どう言うわけか、クリスは非常に切羽詰まった様子で、やたらと洋館を壊したがっている。リックが良いと言えば、今すぐにでも飛び出して行きそうな勢いだ。
何故彼が慌てているのかわからず、首を傾げるリックとレイナ。こんなクリスを二人は今まで見た事がない。一体、何をそんなに慌てているのだろうか・・・・・・。
「取り壊すのは調査の結果次第だ。どうしたんだよクリス、らしくないぞ?」
「べっ、別に俺はいつも通りだぜ・・・・・・」
「我儘を言うな破廉恥剣士。参謀長の命令は絶対だと、貴様も理解しているだろう」
「言われなくてもわかってんだよ!ああ畜生、行けばいいんだろ!!」
クリスの様子は明らかに普段と違っていた。まるで、何かに追い詰められているようだ。
結局は、レイナの言葉で自棄になり、行くと宣言してしまった。これで、彼はもう逃げられない。
(ひょっとして・・・・・・・。いや、まさかな・・・・・・)
リックが彼を観察し、直感で思い付いたクリスが慌てている原因の予想。まさかそんな事はないだろうと、この時リックはこれ以上深く考えなかった。
廃墟と化した洋館の調査。
リリカの暇潰しによって編成された、洋館調査隊。隊員は、リリカとリックとレイナとクリスと決まった。
この日の夕方、四人は自分の仕事を全て片付け終わり、洋館調査の準備を始めた。準備を終えた四人は帝国の外に出て、霊が出ると噂される洋館へと向かって行った。
洋館調査と言ってはいるが、所謂これは、「肝試し」と呼ばれるものである。
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