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第三十六話 衝撃、ウエディング大作戦
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「はわわわわわわっ!いっ、イヴ様、ミートパイが焼き上がりました⋯⋯⋯!」
「うん、わかった!僕が切り分けるからそっちに置いておいて!」
「後は私がやります⋯⋯⋯!だからイヴ様は、宴の間に行ってください⋯⋯⋯!」
「アマリリスちゃん一人じゃ無理だよ!僕もやらなきゃ間に合わない!」
「イヴ様、でも⋯⋯⋯」
「気にしないで。せっかくのゴリオン君の結婚式なんだもん。主役じゃない僕は、二人のために頑張らないとね♪」
宴の間で一発芸大会が始まっている中、城内の調理場は戦場と化していた。
調理場担当のイヴは、他の調理担当の者達と共に、昨日から出す料理の仕込み作業などを行なった。そして今日の昼前頃、宴の間に料理を出すため行動を始めた瞬間、事件は起こった。主戦力である調理場のおばちゃん達が、昨日の無理が災いしてか熱を出し、倒れてしまったのである。
調理場担当者達は昨日、いつも通り兵士達の夕食を用意しながら、急遽結婚式のために料理を用意した。相当の疲労が溜まっていたのは言うまでもない。倒れてしまうのも無理はなかった。お陰で調理場は今、婚姻の儀を見届けて戻って来たイヴと、調理担当の生き残りでどうにかまわしている状態だった。
イヴを手助けしているのは、メイドのアマリリスである。ウエディングケーキを作り終えた彼女は、大変な彼のために、宴の間に向かう事なくここに残り、調理を手伝い続けていた。
アマリリスの援護があっても、状況はかなり不味い。昨日からの準備で腹を空かせた者達が多く、皆が想定以上に食欲旺盛なため、追加の料理の用意が追い付かないのである。このままではいけないと、忙しく手を動かして全力を尽くすイヴだが、一向に状況は好転しない。主戦力を失った彼らに、成す術はなかった。
「ベルトーチカ、手を貸そう」
「!!」
しかしここに、颯爽と救世主が登場した。現れたのは、黒軍服を身に纏う、右眼を眼帯で隠した少女。驚くべき事に、イヴを助けるべく現れたのは、あのヴィヴィアンヌであった。
「⋯⋯⋯どういうつもり?」
「私の任務はまだ終わっていない。ただ、それだけだ」
「はわっ、はわわわわ⋯⋯⋯⋯!」
軍服の袖を捲り上げ、調理を手伝おうとするヴィヴィアンヌ。現れた彼女をイヴが睨み付け、調理場に緊張が奔る。一触即発の状況の中、彼の傍にいたアマリリスは、どうして良いかわからず、ただオロオロとしているだけだった。
「⋯⋯⋯料理できるの?」
「私を誰だと思っている?」
「⋯⋯⋯毒なんか盛らないでよ?」
「貴様こそ、私の足を引っ張るなよ?」
張り詰めた緊張を先に破ったのは、イヴの方であった。溜め息交じりで大きく息を吐き、諦めた様な表情を浮かべたかと思えば、黙って調理を再開した。その態度を承諾と受け取ったヴィヴィアンヌは、彼の横に並んで器具を手に取り、早速調理を始める。
「十分以内に追加で十五品。僕達に付いてこれなきゃ、すぐに皿洗いにまわすから」
「調子に乗るな。貴様こそ、あとは私に任せたらどうだ?」
「そんなことできるもんか。お前にだけは、絶対に負けない」
一応味方同士なのだが、これから殴り合いの喧嘩を始めそうなほど、火花を散らし合う二人。様子を見守っていたアマリリス達は、様々な意味で、本当に大丈夫なのかと心配している。だがこれで、昨日からずっと無理を続けているイヴの負担が、少しでも減ってくれるならと、そう願わずにはいられない。
「⋯⋯⋯借りは返すから」
「気にするな。期待はしていない」
「ふん⋯⋯⋯」
作戦終了まであと少し。これが最後の戦いである。
ヴィヴィアンヌ最後の決戦場は、自分へ憎悪を向け続ける存在と共に戦う、ヴァスティナ城内調理場であった。
「うん、わかった!僕が切り分けるからそっちに置いておいて!」
「後は私がやります⋯⋯⋯!だからイヴ様は、宴の間に行ってください⋯⋯⋯!」
「アマリリスちゃん一人じゃ無理だよ!僕もやらなきゃ間に合わない!」
「イヴ様、でも⋯⋯⋯」
「気にしないで。せっかくのゴリオン君の結婚式なんだもん。主役じゃない僕は、二人のために頑張らないとね♪」
宴の間で一発芸大会が始まっている中、城内の調理場は戦場と化していた。
調理場担当のイヴは、他の調理担当の者達と共に、昨日から出す料理の仕込み作業などを行なった。そして今日の昼前頃、宴の間に料理を出すため行動を始めた瞬間、事件は起こった。主戦力である調理場のおばちゃん達が、昨日の無理が災いしてか熱を出し、倒れてしまったのである。
調理場担当者達は昨日、いつも通り兵士達の夕食を用意しながら、急遽結婚式のために料理を用意した。相当の疲労が溜まっていたのは言うまでもない。倒れてしまうのも無理はなかった。お陰で調理場は今、婚姻の儀を見届けて戻って来たイヴと、調理担当の生き残りでどうにかまわしている状態だった。
イヴを手助けしているのは、メイドのアマリリスである。ウエディングケーキを作り終えた彼女は、大変な彼のために、宴の間に向かう事なくここに残り、調理を手伝い続けていた。
アマリリスの援護があっても、状況はかなり不味い。昨日からの準備で腹を空かせた者達が多く、皆が想定以上に食欲旺盛なため、追加の料理の用意が追い付かないのである。このままではいけないと、忙しく手を動かして全力を尽くすイヴだが、一向に状況は好転しない。主戦力を失った彼らに、成す術はなかった。
「ベルトーチカ、手を貸そう」
「!!」
しかしここに、颯爽と救世主が登場した。現れたのは、黒軍服を身に纏う、右眼を眼帯で隠した少女。驚くべき事に、イヴを助けるべく現れたのは、あのヴィヴィアンヌであった。
「⋯⋯⋯どういうつもり?」
「私の任務はまだ終わっていない。ただ、それだけだ」
「はわっ、はわわわわ⋯⋯⋯⋯!」
軍服の袖を捲り上げ、調理を手伝おうとするヴィヴィアンヌ。現れた彼女をイヴが睨み付け、調理場に緊張が奔る。一触即発の状況の中、彼の傍にいたアマリリスは、どうして良いかわからず、ただオロオロとしているだけだった。
「⋯⋯⋯料理できるの?」
「私を誰だと思っている?」
「⋯⋯⋯毒なんか盛らないでよ?」
「貴様こそ、私の足を引っ張るなよ?」
張り詰めた緊張を先に破ったのは、イヴの方であった。溜め息交じりで大きく息を吐き、諦めた様な表情を浮かべたかと思えば、黙って調理を再開した。その態度を承諾と受け取ったヴィヴィアンヌは、彼の横に並んで器具を手に取り、早速調理を始める。
「十分以内に追加で十五品。僕達に付いてこれなきゃ、すぐに皿洗いにまわすから」
「調子に乗るな。貴様こそ、あとは私に任せたらどうだ?」
「そんなことできるもんか。お前にだけは、絶対に負けない」
一応味方同士なのだが、これから殴り合いの喧嘩を始めそうなほど、火花を散らし合う二人。様子を見守っていたアマリリス達は、様々な意味で、本当に大丈夫なのかと心配している。だがこれで、昨日からずっと無理を続けているイヴの負担が、少しでも減ってくれるならと、そう願わずにはいられない。
「⋯⋯⋯借りは返すから」
「気にするな。期待はしていない」
「ふん⋯⋯⋯」
作戦終了まであと少し。これが最後の戦いである。
ヴィヴィアンヌ最後の決戦場は、自分へ憎悪を向け続ける存在と共に戦う、ヴァスティナ城内調理場であった。
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