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第一話 初陣
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「騎士団長、準備ができました」
「わかった」
森の中に身を隠し、前方の様子を窺いながら、メシアは報告に来た兵士の言葉に答えた。
少し離れた前方には、沢山の焚き火や松明、そして、オーデル軍の兵士たちが夜営しているのが見える。皆、明日には戦だというのに、こちらから見てわかるほど、余裕の様子だ。警戒のための歩哨も巡回してはいるが、こちらに気付くこともなく、ふらふらと巡回の真似ごとをしているような印象を受ける。
情報通り、オーデル軍の兵士の質は良くはなさそうだ。規律も何も、緩みきっているのは見ていてわかる。
休んでいる兵士たちの中には、酒を飲んで酔いつぶれている者もおり、敵がここに攻めてくることはありえないという、慢心が伝わってくるようだ。
その慢心をついて我々はここに居る。
指示を出そうと決めたまさにその時、先程まで吹いてはいなかった風が、彼女の流れる銀髪を揺らした。
「風か・・・・・」
不意に吹いた風は、背中からオーデル軍の方へと吹いていき、その風は少しずつ強くなっていく。
「風は我らの味方のようだな」
メシアの後ろで、物陰に隠れて控えるのは、自身が鍛えたヴァスティナの精鋭騎士団だ。大きな戦いを経験してはいないが、彼らには、来るべき時にその力を存分に揮えるよう、今日まで鍛えてきた。
そして宗一の激励は、騎士団の士気を最大まで引き上げ、攻撃の指示を今かと待ちわびている。
作戦通りに、第一段階を決行する時は来た。剣を高らかに掲げ、声を張り上げる。
「全軍!!突撃せよ!!」
ヴァスティナ軍は雄叫びを上げて突撃を開始した。突然の怒号に驚き、何が起こったのか理解できないオーデル軍は、森の中からいきなり現れた軍団にまさに、意表を突かれることとなった。
騎士団の先頭を駆ける騎士団長メシアは、目の前に見えた敵兵の首を、剣の一閃のもとに斬り飛ばした。頭の離れた死体を、盾を持った左手で押しのけ、さらに目の前にいた二人を、流れるような剣さばきで切り捨て、呆然と武器を持って立ち尽くしている歩哨を、頭から叩き斬った。歩哨は左右真っ二つに体が別れてしまい、それが二度と動き出すことはなかった。
とても人間業とは思えないものであったが、メシアだけでなく、味方騎士団の戦いも凄まじいもので、剣や槍を持って慌てふためく敵兵を、容赦なく討ち取っていく。武器がなかろうが、逃げ惑っていようが関係なしに、人とは思えないような叫びを上げて殺しまわる様は、狂気に取りつかれて、虐殺しているようにしか見えない。
ある者は、息絶えるまで剣で敵兵を刺し続け、またある者は、手に持っていた槍を投擲し、逃げる兵士を刺し貫く。騎士団は鍛え抜かれた己の力と、怒りに支配された精神を用いて、突撃し続けた。
その突撃の先陣はやはりメシアであり、目の前に現れた者は、容赦なく一閃の斬撃で斬り伏せていく。彼女だけはその圧倒的な武芸で、もう二十を超える死体の山を築き上げていった。
オーデル軍は未だ混乱から脱せない様子で、逃げ惑うばかりで満足な反撃も返してこない。油断が過ぎたようだ。
それならば突撃を止めるわけにはいかない。このまま第一軍を突破するつもりで突撃をかけ、作戦成功のために戦い続けなければならないのだ。
「突撃を続けろ!このままオーデル軍を蹴散らして進め!」
突撃継続の号令を出した直後に、兵士たちのそれに答えた怒号が聞こえる。彼らはメシアの指示に、どんな状況であろうと、忠実に従うよう訓練されている。例え怒りに呑まれていようとも、統率を失うことは決してない。彼らを鍛えた騎士団長メシアには、それがよくわかっていた。
だがそんな騎士たちも、今日の戦いで一体どれだけ生き残ることができるのか。
それは、彼女にもわからないことであった・・・・・・。
「わかった」
森の中に身を隠し、前方の様子を窺いながら、メシアは報告に来た兵士の言葉に答えた。
少し離れた前方には、沢山の焚き火や松明、そして、オーデル軍の兵士たちが夜営しているのが見える。皆、明日には戦だというのに、こちらから見てわかるほど、余裕の様子だ。警戒のための歩哨も巡回してはいるが、こちらに気付くこともなく、ふらふらと巡回の真似ごとをしているような印象を受ける。
情報通り、オーデル軍の兵士の質は良くはなさそうだ。規律も何も、緩みきっているのは見ていてわかる。
休んでいる兵士たちの中には、酒を飲んで酔いつぶれている者もおり、敵がここに攻めてくることはありえないという、慢心が伝わってくるようだ。
その慢心をついて我々はここに居る。
指示を出そうと決めたまさにその時、先程まで吹いてはいなかった風が、彼女の流れる銀髪を揺らした。
「風か・・・・・」
不意に吹いた風は、背中からオーデル軍の方へと吹いていき、その風は少しずつ強くなっていく。
「風は我らの味方のようだな」
メシアの後ろで、物陰に隠れて控えるのは、自身が鍛えたヴァスティナの精鋭騎士団だ。大きな戦いを経験してはいないが、彼らには、来るべき時にその力を存分に揮えるよう、今日まで鍛えてきた。
そして宗一の激励は、騎士団の士気を最大まで引き上げ、攻撃の指示を今かと待ちわびている。
作戦通りに、第一段階を決行する時は来た。剣を高らかに掲げ、声を張り上げる。
「全軍!!突撃せよ!!」
ヴァスティナ軍は雄叫びを上げて突撃を開始した。突然の怒号に驚き、何が起こったのか理解できないオーデル軍は、森の中からいきなり現れた軍団にまさに、意表を突かれることとなった。
騎士団の先頭を駆ける騎士団長メシアは、目の前に見えた敵兵の首を、剣の一閃のもとに斬り飛ばした。頭の離れた死体を、盾を持った左手で押しのけ、さらに目の前にいた二人を、流れるような剣さばきで切り捨て、呆然と武器を持って立ち尽くしている歩哨を、頭から叩き斬った。歩哨は左右真っ二つに体が別れてしまい、それが二度と動き出すことはなかった。
とても人間業とは思えないものであったが、メシアだけでなく、味方騎士団の戦いも凄まじいもので、剣や槍を持って慌てふためく敵兵を、容赦なく討ち取っていく。武器がなかろうが、逃げ惑っていようが関係なしに、人とは思えないような叫びを上げて殺しまわる様は、狂気に取りつかれて、虐殺しているようにしか見えない。
ある者は、息絶えるまで剣で敵兵を刺し続け、またある者は、手に持っていた槍を投擲し、逃げる兵士を刺し貫く。騎士団は鍛え抜かれた己の力と、怒りに支配された精神を用いて、突撃し続けた。
その突撃の先陣はやはりメシアであり、目の前に現れた者は、容赦なく一閃の斬撃で斬り伏せていく。彼女だけはその圧倒的な武芸で、もう二十を超える死体の山を築き上げていった。
オーデル軍は未だ混乱から脱せない様子で、逃げ惑うばかりで満足な反撃も返してこない。油断が過ぎたようだ。
それならば突撃を止めるわけにはいかない。このまま第一軍を突破するつもりで突撃をかけ、作戦成功のために戦い続けなければならないのだ。
「突撃を続けろ!このままオーデル軍を蹴散らして進め!」
突撃継続の号令を出した直後に、兵士たちのそれに答えた怒号が聞こえる。彼らはメシアの指示に、どんな状況であろうと、忠実に従うよう訓練されている。例え怒りに呑まれていようとも、統率を失うことは決してない。彼らを鍛えた騎士団長メシアには、それがよくわかっていた。
だがそんな騎士たちも、今日の戦いで一体どれだけ生き残ることができるのか。
それは、彼女にもわからないことであった・・・・・・。
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